琥珀色の戯言

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【読書感想】吉田豪と15人の女たち ☆☆☆☆

吉田豪と15人の女たち

吉田豪と15人の女たち

内容紹介
カルチャーマガジン『BRODY』の人気連載「吉田豪インタビュー」を中心にまとめた、女優・タレント・アイドル・声優へのインタビュー集がリリース。総勢15名の“女"のルーツや哲学、そしてディープすぎる人生にプロインタビュアー・吉田豪が迫る!

「改めて読み返すと、あまりにも、最近起きていることの〝伏線"になっているインタビューが多くて自分でもビビりますよ」 吉田豪

【出演】
片瀬那奈
「やると決めたらナメられたくない」

福原 遥
「『まいんちゃん』忘れられたら悲しいです」

篠田麻里子
「ようやく“人間"らしくなれた気がします」

上坂すみれ
「女子が好むものはだいたいオカルトだから」

蒼波 純
「他人の恋愛は楽しい。だって自分じゃないから」

松井珠理奈(SKE48)
「心を鬼にして、グループのために言いたい」

尾崎由香
「初挑戦が多すぎて、不安がすごく大きくて……」

前島亜美
「アイドルに時間を費やし、培えなかった「ふつうの感覚」

朝日奈央
「『できない』『やれない』は絶対NG」

酒井 瞳
「『折れる心』がなくなった女の子は、かわいげがないんです」

横山由依(AKB48)
「もう一回奇跡を起こしたいなって」

中井りか(NGT48)
「もう地に落ちてるから。いまさら失うものはない」

後藤真希
「『ファンのため』そこだけはブレない」

市井紗耶香
「あの頃に気づけなかったこと、今だったら」

最上もが(本書オリジナル)
「あなたたちと会い続けるために、この世界にまだ残ってる」

※掲載順


 プロインタビュアー・吉田豪さんの、女優・タレント・アイドル・声優など、15人の「芸能界の女性たち」へのインタビューをまとめたものです。
 顔ぶれがものすごく微妙というか、みんなストライクゾーンには入っているのだけれど、ど真ん中、は松井珠理奈さんくらいかな……という感じなんですよね。それもまた、吉田豪さんらしいな、と。


 この本を読んでいて感じるのは、少なくともここで吉田さんのインタビューを受けている人たちは、「アイドルとか、芸能人とは、どういう存在なのか」について、かなり試行錯誤している、ということなんですよね。
 とくに、最近の女性芸能人に関しては、他者との違いがわかるようにしなければならないけれど、やりかたがズレてしまうと奈落の底、ということも多いのです。


 元SUPER☆GIRLSの前島亜美さんと吉田さんが、こんな話をされています。

吉田豪卒業するとき、記者の人に恋愛の話を振られて、「私はいままでちゃんと守り通してきて」みたいに言っていたのも印象的でした。


前島亜美そうですね。恋愛禁止って話題が出るたんびに議論になりますけど、私は破りたいと思ったこともなくて。活動に全力を注いでたので、遊びたいっていう感情もあんまりなくて。応援してくださってる方を裏切るっていうのもちょっとイメージが湧かなくて。それよりも叶えたい夢があったし、やりたいことがたくさんあったし。……っていう気持ちがありつつ、でも恋愛のほうが大事な子は周りにもたくさんいて。それに傷つくたびに自分はそうなっちゃいけないなって思ってたのもあって守り通したんですけど。よかったのか悪かったのかはわからないですが(笑)。

 
吉田:人間としてはそっちのほうが幸せだったのかもしれないけど、アイドルとしての責任をまっとうしたかったってことですかね。


前島:はい。渡辺麻友さんがおっしゃってた、「しっかりとアイドルとしてはルールを守ったけど、人間としては何か大切なものを失ったかもしれない」って言葉にハッ!と。


吉田:ダハハハハ! 「わかる!」っていう。


前島:たとえば学校帰りに友達と遊ぶ時間とか。デートなのか、青春のかたちっていろいろあると思うんですけど、自分にとっては応援してくださる方々と過ごしてきた日々が青春だなと思ってるので、ピッタリ10代を費やしてきて、いいかなって思ってます。


吉田:まゆゆも本当に信用できる人じゃないですか。きちんとルールを守り通して。でも、人間的な深みは指原さんのほうがありそうな気がするのが、難しい問題だと思います。


前島:うーん……皮肉ですよね、ホントに。だからいま、私もそこに悩んだりします。


 アイドルとしての「ルール」をきちんと守っていると、観客から手放しで支持されるのかというと、必ずしもそうではない。むしろ、「人間的な深みがない」とか言われてしまうのです。
 NGT48の事件について報道されている話を読むと、アイドルの中にも、「正統派路線」の人もいれば、「とにかく知ってもらって、売れるためなら、なりふりかまわない」という人もいるようです。
 どんなに品行方正にしていても、売れなきゃどうしようもないだろ、というのは、一面の真実でもあります。
 芸能人は、品行方正でいるためになるものではなくて、売れて、みんなに名前や存在を知ってもらい、成功を収めるためになるものだから。


 AKB48の総監督・横山由依さんは、こう仰っています。

吉田豪無難でいたらいけない集団というか。


横山由依そうですね。面白いことや新しいことに常に挑戦して、まさに総選挙だってAKB48が大きくなったきっかけだと思うんですけど、それも先輩たちが文句も言わず(笑)。まあ、文句は言ったかもしれないですけど。


吉田:やりたくはないと思っただろうけど。


横山:はい、思ったでしょうけどやった結果、今回で10回目っていうのもあると思います。


吉田:わかります。ある程度、残酷だったりひどい目に遭わされているほうが、世間には届くはずなんですよ。AKB48って最近そのへんがすごい守られすぎているイメージがあって。選挙も強制参加ではなくなったり。


横山:いまは立候補制になっていますね。


吉田:恋愛がバレたら大変なことになるとか、そういうことが世間に届くきっかけになった部分は絶対あると思うんですよ。それが社会的に正しいグループになってきて、メンバーによけいな圧を加えない、選挙も出たい人が出ればいい、恋愛も前ほど厳しくしない、みたいにした結果、世間に届きづらくなっている。そんななかで『ラストアイドル』は忘れかけていた残酷なことをやった気がします。


横山:確かにそれはあるかもしれませんね。


吉田:……まさかこんなにあっさりと肯定してもらえるとは思いませんでした(笑)。


 最近のAKB48でいちばん話題になったのは、あのNGT48の事件なわけで、あれは酷いにも程があるのだけれど、世間から注目されるのは、そういう暗黒面になりがちなのです。
 だからといって、あんな事件をわざと起こすようなことがあってはならないけれど、スキャンダルや運営側の理不尽な仕打ちに耐える姿をみんな心の底では楽しみにしているのかもしれません。
 モーニング娘。も、デビュー当初から、けっこうキツい目にあわされたり、鈴木あみさんと勝負させられたり、グループ内のいざこざが番組で流されたりしていましたよね。
 それでも、オーディションで優勝した平家みちよさんよりも、「負け組」だったモーニング娘。のほうが、結果的には売れてしまったのです。
 

 モーニング娘。といえば、後藤真希さんはこんな思い出を語っています。

吉田豪あと中澤裕子さんがバナナが嫌いでみんな気を使ってた話とか、くだらなすぎて最高ですよ(笑)。


後藤真希そう、ゆうちゃんがバナナ嫌いだから楽屋にバナナが入ってることはまずないんですけど、たまに知らないところの人だとバナナが楽屋にあって、そこからゆうちゃんの機嫌が一気に悪くなってみんなあたふたしちゃうから、とりあえずバナナの確認はみんな素早くしてました。匂いでわかっちゃうから。


吉田:女性アイドルグループが活動するのはいろいろたいへんだとは聞きますけど、そういう方向のたいへんさは初耳でしたね(笑)。


後藤:なかなかないですよね。だって嫌いなものが楽屋にあっても食べなきゃいいだけなのに、見るのも嫌だって。不思議だった。


 この話、正直、「なんでそんなにバナナが嫌いなんだろう?」というのと、いくら嫌いでも、そこまで露骨に態度で示すって大人としてどうよ、って思わずにはいられないのです。
 ここまでだと、「バナナに何かされたのか?」とか考え込んでしまうのですが、凍ったバナナで頭を殴られるか、バナナの皮で滑って頭を強く打って生死の境をさまよう、くらいの想像しかできないんですよね。
 理不尽だけど、年長でリーダーだった中澤さんには、みんな気を遣わざるをえなかった、という……
 それなりの事情か、よっぽど生理的に耐えかねるものがあった、ということなのでしょうけど、グループで活動する、というのはけっこう大変だなあ、とあらためて感じます。
 自分が好きだったり、平気だったりすることを蛇蝎の如く嫌うメンバーがいることもあれば、自分には耐え難いことを平然とやるメンバーだっている。
 そこに自分への悪意がないとしても、それはそれで、ストレスは大きそうです。

 アイドルとして生きている人たちの、それぞれの「アイドル論」。
 みんなに注目され、好きって言われるのもラクじゃない。
 さりとて、誰にも見向きもされなかったら、どうしようもない。


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