琥珀色の戯言

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【読書感想】アイデア大全 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

アイデア大全

アイデア大全

内容紹介
■アイデアの百科事典
企画営業・マーケター・クリエーター・商品開発・起業家……
一生使える必携の書。
煮詰まった/ネタ切れ/思いつかない/パクりたい/
変えられない/才能に自信がない/どうしたらいいかわからない……


◎数々のアイデア法をツールとして読者自身が試せるように、
 具体的な手順を思考のレシピとして解説、具体例(サンプル)も明示し、実用性を追求。
◎一方で、その底にある心理プロセスや、方法が生まれてきた
 歴史あるいは思想的背景にまで踏み込み、知の営みの縱橫のつながりを理解する。


単なるマニュアルには留まらない、眠ってしまった創造力と知的探求心を挑発し、
呼び起こす、アイデアの百科事典。


 世の中には、さまざまな人が、自分なりの「アイデアの出し方」を紹介した本がたくさんあります。
 僕も「発想力不足」を自覚しているので、そういう本を読んでは感心しているのですが、ダイエット本と同じで、長年、同じテーマのものが出版され続けているというのは、「万人が納得する、100%の答え」が出ていない、ということでもありますよね。


 この『アイデア大全』という本を手にとり、ページをめくってみて、僕は驚きました。
 この本は、著者自身の「アイデアの出し方」を紹介した本ではなくて、古今東西の、人や書籍によって紹介された「アイデアを出すためのテクニック」が42個集められ、それぞれの特徴や用例について解説されているのです。
 「アイデアの出し方のメタ解析」というか、「発想法事典」なんですね。
 ありそうでなかった、というか、発想法なんて、ひとつモノにするだけで、大変な手間がかかるものですから、それをこんなふうに集めて系統立て、正しい「用例」までつくるためには、ものすごい時間がかかるはず。
 よくこんな本をつくれたなあ、と読みながら悶絶してしまいました。


 しかしながら、「じゃあ、この本が実際にどんな役に立つのか?」と問われると、ちょっと考え込んでしまうところもあるんですよね。
 漠然と眺めていても、何かが浮かんでくる、というものでもなくて。
 42の方法をざっと眺めてみて、そのなかから、自分に合ったものを選んで、掘り下げてみる、というのが、いちばんわかりやすい使用法だと思われますが、この42の方法のなかには、他のものとやりかたが重なっている部分があったり、あまり実用的ではなさそうなものもあるんですよね。


 ただ、これをひと通り読んでみて思うのは、人間は「アイデア不足」に、ずっと悩まされてきた、ということと、「アイデアを出すためには、努力や技術が必要なのだ」ということなのです。

 レオナルド・ダ・ヴィンチに憧れていたトーマス・エジソンは、ダ・ヴィンチにならってノートをつけていた。
 アイデアをメモし、それを読み返し、またメモを書いた。その数、3500冊。
 生涯に約1300もの発明を世に送り出した「発明王エジソンにとって、アイデアこそが資本だった。
 ピンチに陥ると、エジソンはノートと相談した。たとえば1900年、エジソンが出資していた鉄鉱石採掘企業が倒産寸前の事態に陥ったとき、エジソンはノートをひっくり返しあちこちを詳しく読み返して、その企業の組織とノウハウをもっとうまく活用できるノウハウをもっとうまく活用できる道を探したという。すると、セメント製造に事業を転換できることがわかり、企業は息を吹き返したのだ。
 新たに得られた知識やノウハウを使って、以前に捨てたアイデアや行き詰まった発明(これらはたくさんあった)を掘り起こし、今ならうまくできないか、少しは前に進めないかと試していった。たとえば、頓挫したままになっていた電報用海底ケーブルのアイデアは、新たに発明した電話に応用することができた。


 アイデアって、「天才が雷に打たれたようにひらめくもの」っていうイメージを持たれがちだけれど、実際は、「天才」と呼ばれた人たちも、さまざまな積み重ねや、たくさんの試行錯誤のなかから、「答え」を選び出していることがほとんどです。
 いきなり「正解」をひらめくなんてことは、まずありえないのです。
「自分は才能がないから、アイデアなんて出せないよ」と言う前に、この本を一度手にとってみることをおすすめします。


 「一瞬のひらめき」だけでアイデアを出せる人なんて、存在しない。
 先人は「ひらめく」ために、こんなにもがいて、いろんな試みをしてきたのか、ということが実感できますよ。


 また、ノーベル賞受賞者たちのこんな話も紹介されています。

 セレンティビティとは、何かを探しているうちに、もともと探していなかった別の価値があるものを偶然見つけること。また、より広い意味では、偶然によって価値あるものを見つけることをいう。
 ヴィルヘルム・レントゲンは陰極線の研究中に、机の上の蛍光紙の上に暗い線が表れたのに気づき、この現象をさまざまに条件を変えて調べることで、「元の研究テーマとは違う」X線と発見した。
 レーダー用のマグネトロンの量産に取り組んでいたパーシー・スペンサーは、ポケットに入れておいたチョコレートバーが溶けていることに気づき、これをきっかけに電子レンジを発明した。
 単なる偶然ではなく、研究中の(本来なら避けるべき)失敗から、発見や発明につながることもセレンティビティと呼ばれる。


 このような「多くの研究者が、単なる失敗とみなして、舌打ちをしながらやり直しをするような現象」から歴史を変える発見が生まれたことは少なくないのです。
 こういう「失敗にみえる結果」「予想と異なる現象」をありのままに受け入れ、「どうしてこうなったのだろう?」と素朴に突き詰める姿勢が、研究者にとって大事なのです。
 そんなのあたりまえだろう、って思うかもしれないけれど、人って、「自分の見たいものを見てしまう」のですよね。僕もそうです。


 すぐに役立つ、というよりは、とりあえず本棚に置いて、(ちょっと品がないけれど)トイレに入るときに、ひとつ読んでみる、そんな付き合い方ができる本だと思います。


fujipon.hatenadiary.com