琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

文学的な喫煙

http://gendai.net/?m=view&g=book&c=R00&no=2379

 佐藤賢一さんは「王妃の離婚」や「双頭の鷲」など、中世ヨーロッパを描いた小説を主に書かれている作家です。
 僕は医者で非喫煙者なので、禁煙の風潮が広まっていくことには賛成なのですけど、【禁煙の風潮は世界的なものではなく、単にアメリカから輸入されただけなのだ】というのは、かなり興味深く感じられました。ただ、「ヨーロッパ」とひとまとめにできない面もあり、ヨーロッパの文化のひとつとしてのF1も「タバコ・マネー」と「タバコ広告禁止」のあいだでけっこう揺れ動いているようなのですが。「ヨーロッパでタバコ広告禁止の国が多くなったから、アジアでのレースが増えてきている」なんていうのは、ある意味「アヘン輸出」みたいなものではないか?という気もします。
 でもね、その一方で、僕は自分が吸わない分だけ、「タバコってカッコいいなあ」というイメージを持っているのも事実なんですよね。あんな煙が美味しいとは思えないし、実際に隣で吸われているとかなり迷惑なんですけど。
 島本理生さんの「ナラタージュ」で、小野君という男の子がタバコを吸うシーンがあるのだけれど、なんだか妙にカッコいいなあ、とか思いながら読んでいました。そういえば、村上春樹さんの小説で、登場人物がベランダでタバコを吸っているシーンで、カッコいいなあ、と感じた記憶がありましたし。
 世の女性というのは、「タバコは嫌い」でも「タバコを吸う男は、必ずしもキライじゃない」のではないかという気もするのです。
 文学的には、酒よりタバコのほうが、圧倒的にカッコいい。
 「酒」なんて、現実のアルコール依存の人に接して、周囲の人の話を聞いていると、そりゃあもう悲惨なものです。それでも、日本には「禁酒文化」ってあんまりないんですよね。アメリカに留学していた先輩によると、「アメリカでは、家の外で酔っ払って醜態をさらしているようなヤツは、その時点でまともな人間とは見てもらえない」らしいです。
 もちろん、医者的には「絶対禁煙!」なのですが、ときどき、「長生きは人間にとって最大の価値なのか?」と思い悩んでしまうこともあるんですよね。患者さんにはそんなこと、言えるはずもありませんが。

割りばし死亡事故、「延命の可能性低い」として医師に無罪判決

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060328it11.htm

正直、同業者としてはホッとしました。あの状況で「有罪」になって刑務所に入らなければならないとしたらあんまりです。
参考:http://www5f.biglobe.ne.jp/~iyatsue/suginami.htm

ただ、この記事をよく読んでみると、【裁判長は診断上のミスがあったことを認めたが、「治療したとしても延命の可能性が極めて低かった」と述べ、無罪(求刑・禁固1年)を言い渡した】とありますので、この判決は、必ずしも日本中の当直医を安堵させるものではないのも事実です。裁判長は、「状況を考えると仕方なかった」のではなく、「もしその場で検査をしていても助からなかった」ということで「無罪」にしているのですから、同じような事例で、「CTを撮っていたら助かった可能性がある」と判断されれば、実刑判決を出す可能性がある、と司法は述べているのです。あの特殊な事例が「診断ミス」だと判断されるというのは、医療者としては、「恐怖」以外の何物でもありません。
そこまで医療というのは買いかぶられているのか…という暗澹たる気持ちばかりが深まっていくのです。

アクセスカウンター