琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

わしズム Vol.22

わしズム 2007年 5/18号 [雑誌]

わしズム 2007年 5/18号 [雑誌]

「結婚」は必要か!
という特集記事に魅かれて購入。まあ、一通り記事を読んでの感想は、現状の「結婚制度」の問題点はみんなわかっているのだけれども、「じゃあ、今の日本において、どうするのがいちばん最大公約数的な『正解』なのか?」という点については、みんな態度を保留せざるをえない状況なのだな、というものでした。「結婚式なんて形式には意味がない!」という信念と「結婚式は大勢人を呼んで豪華にやらなくちゃイヤ!」というこだわりは、対極ではなく、けっこう近いところにあるのではないかな、とも感じましたし。「こだわっている」「とらわれている」という点では、どちらも同じなんですよね。「昔の家族関係の復活を!」なんて言われても、そんなことできないのはみんなわかっているはず。「昔の結婚には妥協があった」って言われてもねえ……
 星新一さんが書かれた『最後の地球人』というショートショートのように、なんとなく、少しずつ子どもが減っていって、ゆるやかに人類は滅んでいくのかな、とか考えてみたりもするのです。

この号のなかで、印象深かったものをいくつか挙げておきます。

ゴーマニズム宣言・第27章』の枠外の小林よしのりさんのコメント

 結婚は同じような育ちの者、同じような階級の者同士でなければ合わない。紀香もあのお笑い芸人と同じ階級だ。だから安心できるのだろう。宮台真司が結局、事実婚ではうまくいかず、援助交際やるような家庭の娘でもなく、学者の娘と結婚したことは、階級結婚の実例としてしばしば業界の噂になっている。

「漂流する『日本人の結婚』という制度」という討論会での文芸評論家・富岡幸一郎さんの発言より。

 ヨーロッパの場合は婚約期間を大事にしていて、2人が一緒になることを周囲に承認してもらうために、婚約を発表してから結婚式まで少し時間を置く。そして結婚式では、牧師が形式的にですが「この結婚に異議のある人はこの場で申し出てください」と言うんです。「神が結び合わせてくださったものを人は離してはならない」(マタイ伝19章)という聖句を読んで、後になってから「あの結婚には反対だった」などと言ってはいけないんですね。だから、周囲の家族や親戚のなかにも、2人を祝福して支えていこうというファミリーとしての共同意識がある。もっとも、今はヨーロッパでもそういうものが崩れてきてはいますけど。

 僕もつい最近チャペルでキリスト教式の結婚式を挙げたのですが、この「神が結び合わせてくださったものを人は離してはならない」というフレーズを聴いていて、なんだかすごくジーンとしてしまったのをよく覚えています。僕はとくに信仰している宗教があるわけではないのですけど。
 ところで、その前の「この結婚に異議のある人は……」の件なのですが、どうもこの言葉を耳にすると「異議あり!」ってルパン三世が登場しそうな気がしてついついニヤニヤしてしまうので困ります。『カリオストロの城』の影響力ってすごい。

「結婚」と「経済力」

わしズム Vol.22』(小学館)の特集「『結婚』は必要か!」のなかで取り上げられていた印象的な統計。

巻頭の小林よしのりさんの『天籟(てんらい)』というコラムより。

 結婚観は時代の経済状況に左右される部分が大きい。日本の労働人口約5000万人のうち、いまや不正規雇用は1200万人に達し、年収300万円以下の労働者が2400万人、年収200万円未満が1400万人という統計が出ている。全労働人口の4人に1人は生活保護水準で暮らしているのだ。

森永卓郎さんの「『モテ格差社会』が進行している」という記事より。

 労働政策研究・研修機構が2002年の就業構造基本調査を年収別に再集計して。年収別の結婚率という統計を出した。このデータを20代後半の男性で見てみると、驚くべきことに、年収1000万円以上は70%超、4人に3人が結婚しているのに対し、年収が下がると、結婚率は一直線に落ちる一方であることがわかった。年収200万円台(200万〜249万円)は23%で、4人に1人の結婚率になってしまう。年収100万円台(100万〜149万円)にいたっては、15.3%、もはや6人に1人も結婚できない。そして、いまや国民の4割近い非正社員の収入が100万〜120万円なのだ。これは意識の問題ではなく実際のデータであり現実である。
 この数字は、男性に金がなければ女性は結婚しないということを隠しようもなく示している。さて、このデータをフェミニスト陣営の方々はどうご覧になるだろうか。
 これまでのフェミニストたちの主張は、日本人の晩婚化、少子化の原因は、日本の企業が働きながら子育てをする女性に無理解であり、政府が女性の就労支援や子育て支援をしないから、働く女性が結婚できないというものだったはず。しかし、現実にはそうではなかった。働く女性が貧乏な男たちを相手にしないのが原因なのだ。

 周囲に「高収入にもかかわらず未婚の医療関係の女性がかなり多い僕としては、「女性の収入と結婚率には相関があるのだろうか?」ということも気になるのですが、少なくとも男性側からみると、「年収」と「結婚率」はきれいに相関しているそうです。
 ただ、「経済的な問題」だけが全てなのか?という疑問は残るところではあるんですよね。それなら、日本全体がもっと貧しかった終戦後の時期には結婚率や出生率が低下したのか?というと、必ずしもそうではないみたいですし。おそらく、当時の日本人には、「今は貧しくても、将来はもっと豊かになっていくに違いない」という楽観的な未来予想図があったのだと思います。それに比べて、今の「適齢期」の日本人の多くは、「一生懸命働いても低収入」であるだけではなく、「将来的にもこういう状況が劇的に改善される見込みは乏しい」という諦念も抱えている、ということなのでしょう。自分の人生に希望が持てなければ、子供が欲しいとは思えないよなあ……

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