LINE なぜ若者たちは無料通話&メールに飛びついたのか? (マイナビ新書)
- 作者: コグレマサト,まつもとあつし
- 出版社/メーカー: マイナビ
- 発売日: 2012/11/27
- メディア: 新書
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内容紹介
若者たちを中心に人気急上昇中の無料通話・無料メール(メッセージング)スマートフォンアプリ「LINE」。
昨年の6月に始まったばかりのサービスが、国内外でのユーザー数が7,000万人を超える大人気となっています(2012年10月末現在)。
しかし、その実態はユーザー以外には、まだまだ謎に包まれています。
なぜ、LINEがここまで注目を集めるのでしょうか?
それは、LINEに代表される新しいサービスによって、これまでと違うインターネットの利用方法が生まれつつあるからです。
本書ではLINEブームを分析し、そこから見えてくる新しいインターネットの姿やその活用術、そしてそこにひそむ課題も解説します。
●特別インタビュー3本掲載
・内閣広報室 IT広報アドバイザー いしたにまさき氏
・NHN Japan 執行役員 舛田淳氏
・慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野剛氏
『LINE』かあ……
僕自身は、mixiやtwitterやfacebookなどで、「繋がるサービスは、もうお腹いっぱい」というのが正直な気持ちです。
『LINE』も流行っていることは知っていましたが、使ったことはありませんでした。
やっぱり、「アドレス帳のデータを参照して、使っていることが他の人にもアナウンスされる」というのは、めんどくさい気もしましたし。
しょっちゅうなんらかのリアクションを要求されるような繋がり方っていうのは、もう勘弁してほしいな、と。
この新書を読んでいると、「『LINE』という、ものすごくシンプルに見えるサービスが、なぜ生まれたのか、そして、誰が使っていて、どこへ向かっているのか」が、1時間くらいでわかります。
僕のように「現象としての『LINE』に興味はあるけれど、自分で使ってみるのはちょっと怖い」、という人にとっての「スマートフォン時代のコミュニケーション」を知るための格好の入門書、なんですよね。
ちなみに、「使い始めた人のための、利用マニュアル」では全くありませんので御注意を。
2012年10月末の時点で、日本国内では約3200万人、全世界では約7000万人が利用しているという『LINE』。
でも、いま40歳近辺である僕の周囲には、「facebookやってる?」と聞いてくる人はいても、「LINEやってる?」と訊ねてきた人は、これまでひとりもいません。
LINEを企画・開発する「NHN Japan」が公表した調査結果によると、男女比は男性51%:女性49%で、ほぼ半々となります。職業は会社員が38.5%で最も多いですが、それに次ぐ存在として学生が30.3%を占めています。
年齢別で見ると、12〜19歳が16.5%、20〜24歳が22.6%、25〜29歳が21.9%と、30歳未満の年代で過半数を占めています。最もボリュームのあるゾーンは20〜24歳です。
僕の周囲の人たちから声がかからないのも当たり前、という感じで、いまのところ、LINEは「若者メイン、友達同士の気軽なコミュニケーションのための媒体」なんですね。
LINEの仕掛け人、NHN Japanの執行役員、舛田淳氏は「”アドレス帳”が日常的にコミュニケーションを取る一種の”距離感”」だと強調します。従来のSNSがインターネット的とも言うべき「リアル」な世界とは異なる人間関係をユーザーに構築・拡張させようとしてきたのに対して、極めて現実的な「電話や携帯メールをやり取りする相手」とのコミュニケーションにLINEの利用をあえて限定したわけです。
つまり、「友だちの友だち」はLINEにおいては「友だち」ではありません。この点が従来のSNSの考え方と大きく異なるLINEの特徴になっています。
しかし、まさにこのことによって、LINEは誰にでも分かりやすく、気軽にコミュニケーションが取りやすい場となり、これまでFacebookやTwitterは難しいと感じていた層に圧倒的に支持が広がったと言えるでしょう。
「ごく近い人たちどうしの、いっそうの繋がりやすさ」に特化したのが、LINEなのです。
その一方で、LINEの問題点として、「アドレス帳のデータを利用するため、繋がりたくない人にも、自分がLINEを使っていることがアナウンスされてしまう」ことが挙げられています。
「上司にfacebookの友だち申請されて困っています」というようなことが、LINEでも起こりうるのです。
学生や若者に人気があるLINEですが、僕のような中年層に浸透してきていないように感じるのは、年をとると、アドレス帳に「積極的にコミュニケーションを取りたくないけど、消すわけにもいかないアドレス」が増えてしまうから、なのかもしれませんね。
規模が大きくなるにつれ、LINEも「プラットフォーム化」を目指すようになってきています。
事業を拡大し、快適な環境を提供していくためには、ユーザー数の増加と「お金を稼げるようになること」が必要条件なのですが、LINEの場合は、「知り合いとの間に限定された、密接なコミュニケーションツール」であることが最大の武器であり、「拡大戦略」というのは、自らの首を絞める結果になるのではないか、と僕は考えずにはいられません。
その一方で、日本発の世界的なサービスとなる可能性がある、というのも事実で、頑張ってほしいな、とも思うのですけど。
ちなみに、NHNは韓国の会社なので、ネットではそれを理由にバッシングする人もいるようなのですが、『LINE』は、NHN Japanオリジナルの、日本で開発されたサービスなのだそうですよ。
『LINE』は、シンプルなひとつのアプリのように見えるけれど、実は、「モバイル通信の新しい時代」をもたらす、大きな可能性を持っているのです。
iモードの仕掛人、夏野剛さんが、この新書のなかのインタビューで、こう仰っていたのが、すごく印象的でした。
インタビュアー:キャリアはますます土管競争になっていきますね?
夏野:LINEが加速させていますよね。つまり、キャリアひも付けサービスがいらなくなっています。だから、LINEがあれば家族割がいらないんです。だからMNPも活性化しますよね。Androidを入れた時点で、携帯電話のメールアドレスを捨てたので。
これまで携帯電話キャリアが維持しようとしてきた、コンテンツに対する「課金代行機能」が、iPhoneの普及などもあって、揺らいできています。
NTTdocomoがiPhoneを導入できないのは、iPhoneでは、これまで持っていた「課金システム」をAppleに奪われてしまう、という事情もあるのです。
もし「みんながLINEで無料通話をする」時代になれば、「キャリアの優劣は、データ通信の質と価格の競争だけ」になってしまう可能性があります。
もちろん、それをキャリアは望んでいないのでしょうけど、iPhoneの無いdocomoの苦戦をみると、スマートフォン時代にユーザーを集めるためには、避けられない変化、なのかもしれません。
『LINE』は、世界では受け入れられなかったiモードの「リベンジ」なのだ、と著者たちは述べています。
世界でスマートフォンが普及し、ネットを通じて大きなデータをやりとりできるインフラが整いはじめた今だからこそ、日本で進化しすぎたために「世界標準」になりえなかったiモードの経験と技術が、世界でも通用する土壌ができたのです。
個人的には、「もうこれ以上、コミュニケ―ションツールが増えても、疲れるだけだよ」というのが正直な気持ちで、「飲みに行く時間もないのに、飲み会の約束ばっかり増やしてもねえ……」って感じなんですけどね。