
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/11/28
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。

- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/12/18
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内容紹介
著者は19年間で15億円!
作家は、どれだけ儲かるか?
誰も書かなかった小説家の収入の秘密と謎を、余すところなく開陳した前代未聞の1冊。
・あなたは小説家の文章がいくらで売れる知っているか?
・僕は1時間で6000文字(原稿用紙約20枚分)を出力する。
・傑作も駄作もエッセィも原稿料はあまり変わらない。
・人気作家の人気とは「質」ではなく、あくまで読者の「量」のこと。
・印税はふつう10%だが、交渉次第で数%上がる。
・1冊も売れなくても印税は刷った分だけ支払われる。
・これといったヒットもないのに、いつの間にか「Amazon 殿堂入り作家20人」に!
あの森博嗣先生は、いったいどのくらい稼いでいるのか?
下世話ではありますし、それが僕の何かに結びつく、というわけではありませんが、そういうのって、やっぱり興味はあるのです。
森先生には「自慢」とか「下世話な興味」とかいうような意識はなくて、「自分がいま持っていて、おそらく他の作家は世の中に公表しないであろうデータを社会に提供しておこう」という考えなのではないか、と読んでいて思ったんですけどね。
江戸時代に、宿場間の歩数や、団子の値段を細かく記録していた「記録マニア」のような人がいて、それが歴史研究者にとっては大切な史料となっているのと同じように。
最相葉月さんの『星新一 一〇〇一話をつくった人』のなかに、 筒井康隆さんが「諸家寸話」で書いた、こんなやりとりが紹介されています。
貫禄
おれ(筒井)「(星新一が原稿料の話ばかりするので)大作家ともあろうものが、あまり金の話をしてはいけません」
星新一「大作家だからこそ、平気で金の話ができるんです」
人気作家が、自分の収入をこうしてキッチリと公開するというのは、きわめて珍しいことです。
「今の世の中、専業で食べていける作家は100人もいない」なんて話をよく聞くのですが、森先生クラスだと、どのくらい稼げるのか?
森先生も、大学の仕事をされている「兼業作家」の時期がかなり長かったのですけど。
この新書のなかで、森先生がAmazonの「人気作家ベスト20」に入ったときの話が出てきますが、いま僕が思いつくかぎりで、間違いなく森博嗣よりも稼いでいそうな作家って、村上春樹、東野圭吾の両氏くらいしか思いつかないんですよね。
森先生はかなり多作だし、固定ファンも多い。
御本人は「ミリオンセラーがない」と仰っていますが、「全然売れなかった作品もない」と思われます。
デビューして今年(2015年)の4月で19年になる。その間で国内で印刷出版した本は、278冊、総部数は1400万部、これらの本が稼いだ総額は約15億円になる。1冊当り約5万部が売れ、約540万円を稼いだ計算になる。
あのときはピークだったというほど売れていた期間もないし、どの本がもの凄く当ったということもない。第1章の印税収入の推移で示したとおり、ほとんどコンスタントに利益を挙げていた。引退して仕事を減らしたところ、収入も半減した。つまり、仕事量に比例しているということである。
意外だったのは、大作家、人気作家はものすごく原稿料が高かったり、印税が上がったりするのかと思いきや、原稿料に関しては、人気による差はそんなに大きなものではない、ということでした。
小説雑誌などでは、原稿用紙1枚に対して、4000円〜6000円の原稿料がもらえる。たとえば、50枚の短編なり連載小説を書けば、20万円〜30万円が支払われるわけで、毎月これがコンスタントに書ければ、生活には充分な額になるだろう。なにしろ、作品を書くために必要な資材がいらないので、売り上げがすなわち所得になる(もちろん、パソコンなどを経費で落とせば、その差額になるが)。
(中略)
原稿料でも、新聞などはもっと高い。そのかわり、文字数がかなり厳しく規定されていて、何文字書いても良いというわけにはいかない。雑誌などでも、原稿料が高いところがあって、文字数が規定され、1作で2万円とか5万円という具合に指定される。たいていの場合、小説ではなく短いエッセィの依頼だ。原稿用紙で計算すると、1枚で1万円以上になるところもある。
新聞の連載小説などは(地方紙、全国紙でさまざまだが)、1回分が5万円ほどで、これが毎日だから(休みの日があるのが一般的だが)、1年間連載をすれば、この連載だけで1800万円の年収になる。僕は経験がないので、これは伝聞ではあるが、やりませんかという話が来たことがあるので、確かな数字である(そのときは断ったので、実際にいただいたことはない)。
森先生は「漫画の原稿料は、普通1ページあたり6000円〜15000円で、編集者の話では1枚5万円以上の漫画家もいるらしい」と仰っています。
そして、「原稿用紙1枚に文字を書くのと、漫画1ページ分の絵を描く労力を比較すると、(かかる時間やアシスタントの必要性なども含めると)作家は非常に効率が良いことがご理解いただけると思う」と。
「一人でできること」や「マンガに比べたら、一見ではプロとアマチュアの差がわかりにくいこと」が、小説家のハードルが低いように見られてしまう原因なのかもしれませんね。
それにしても、新聞の連載小説って、そんなにもらえるのか……あれを毎回キチンと読んでいる人って、僕はあまりイメージがわかないのだけれど。
もちろん、新聞に連載される小説は、単行本もそれなりに売れる、という目算もあるのでしょうが、ちょっと驚く額でした。
日本コカ・コーラ株式会社からの依頼で書いたという『カクレカラクリ』(2006年・メディアファクトリー)という作品は、「1000万円で引き受けた仕事」だそうです。ちなみに印税は別。
TV関係で、コマーシャルのオファが来たこともある。これは、とある企業のイメージ宣伝のようだった。つい数年まえのことだ。森博嗣は写真も公開していないので、顔出しはできません、と断ったが、僕が書いた文章と、直筆の文字が欲しいとのことだった。提示された金額は500万円である。
作家が「顔出しでCMに出演」すると、数千万円くらいのお金になるらしいです。
そもそも、「顔を出さずにテレビCMに出る」というほうが異例でしょうけど、文章と直筆の文字だけで500万円か……
これを読んでいて感じたのは、「たしかに、うまくやれる人にとっては、作家というのは短時間で効率的に稼げる仕事なんだな」ということでした。
森先生の場合、業界内での付き合いなどもほとんどなく、自分で営業をして仕事をもらってくる、というタイプでもなく、講演会もほとんどやらない。
それでも、仕事が途切れることはなく、これだけ稼げているっていうのは、すごいなあ、と。
この間読んだ『「ない仕事」の作り方』という本のなかで、みうらじゅんさんは、「自分のほうから編集者を接待している」と書いておられました。
出版業界もだいぶ変わってきてはいるのでしょうけど、「人脈」みたいなものに頼ったほうが、安心できそうな気はするんですよね。
実際には、森先生のように、キチンと自己管理をして、コンスタントに書いていける人は、あまりいないと思われます。
一度引き受けた仕事は絶対に締切を守るし、期待されるクオリティを下回らないことを強く意識している。
あとは、
とにかく「勤勉」を自分に課すこと。
作家って、けっこう丼勘定というか、破滅型の人生をおくる人が多いと思っていたのですが、森先生や村上春樹さんのように、長い間コンスタントに作品を出し続ける作家というのは、本当に「勤勉」なんですよね。
結局は、ラクして稼げる、稼ぎ続けられる仕事じゃないんだな、と思い知らされました。

- 作者: 森博嗣
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