琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

小児救急の現在

「夜間診療所」(by 幻想の断片)http://d.hatena.ne.jp/hibigen/20050428
「小児救急医療」(by 片付かない主婦のための片付かない日常) http://d.hatena.ne.jp/cowardape/20050430
「感想」(by putikko三昧)http://d.hatena.ne.jp/putikko/20050430

 久々に臨床の場に戻ってきて、研修医たちと接していると(そういえば、実習に来ている学生もそうだけど)、みんな「小児科って、きつそうだし、すぐ訴えられそうだし、子供は嫌いじゃないけど…」という声を多く耳にします。僕は内科なので、内科に来てもらいたいなあ、と思いつつ、小児科を考えているという人には、内心「小児科に行ってくれ!」とか考えていたりもするんですよね。「小児科医がいない」という状況は、当直先や地方の病院では子供を診る機会が多い内科医にとっては、対岸の火事ではないわけで。
 少なくとも現在の流れからすれば、小児科志望者は減りこそすれ増えることは、まずありえないような気がします。さらに仕事はキツくなって、なおさら誰もやりたがらなくなる、という悪循環。正直、小児科の医者というのは、子供への愛情のために、他の医者が手を出したがらないハイリスク・ローリターンな仕事を引き受けている人たちなのですから、社会も利用者も、もう少し大事にしてあげてもらいたいと思うのです。待たされたからといって声を荒げたり(医療関係者に対してやたらと食ってかかることが、患者さんへの愛情表現だと勘違いしている人がときどきいるのですが、怒鳴ったからといって何ひとつ変わらないし、ただ雰囲気が悪くなるだけです。プレッシャーをかけたら良い医療を受けられるなんてことはありません。医療という仕事は、緩急をつけられるほどの余裕はなくて、常に全力でストレートを投げるしかないのです。
 夜来るな、救急受診するな、とは言いません。「このくらいなら大丈夫」かどうかなんて、医者だって検査してみないとわからないことだって多いのだから。ただ、病院が普通に動いている日中のほうが、医者の数も多いし、検査もしやすいし、患者さんにとっては、より良い医療が受けられることは間違いありません。そして、夜間救急にかかるというのは、それだけで日中診療よりハイリスクです。われわれとしても、より良い医療を提供したいから、可能であれば日中に受診してもらいたい。医者は高給取りで、「働かなければ食えない」患者の気持ちなんてわからないんだ、と思っておられる方も多いのかもしれませんが、実際の話、医者の子供だって病気になることはありますし、僕も同僚の先生が、「子供が熱を出したから」と言って、疲れ果てながらその日の当直の代わりを探している姿を何度も見ています。「好きでやっている仕事」であっても、けっして楽しいことばかりじゃない。
 長い目でみれば、社会全体の問題だし、ホームドクターというのもひとつの手なのでしょうけど、おそらく将来的には、日本の小児医療はセンター化していく可能性が高いと思われます。「田舎を切り捨てるのか!」と言われそうですが、「合理化」というのは、今の世の中では至上命題らしいので。「田舎に住むということは、そういうリスクを受け入れるということ」でもあるのです。今だって、「病人が出たらヘリコプターで搬送」している離島はたくさんあるのだし、そういう場所にまで最上級の医療体制を整えるほどの余裕があるはずもないのだから。現場ですぐにできることといえば、「自分の権利」も大事だけれど、少しだけ目の前の疲れきっている医者に気遣いをしていただければと思うのです。あなたは「待たされている」のかもしれないけれど、スタッフはそのあいだ休みなく働いているのだし、受診時の状況で、「待たせても大丈夫かどうか?」という判断を医療側は、ある程度はやっているのです。
 それにしても、医者と患者は敵対しあう存在ではないし、「どちらが悪い」というものではないはずなのに、どうしていつもすれ違ってしまうのでしょうか?「お客さんが多すぎて辛い」なんているのは、サービス業としてはありがたい状況なんだろうけどねえ…

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