琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

クーリエ・ジャポン

http://moura.jp/scoop-e/courrier/consept.html

創刊号を買ったのですが、正直読みたかったのは、村上春樹さんのNYタイムズでのインタビュー記事だけでした。その村上さんの話も、ほとんどはどこかで読んだものだったのですが。しかし、この本を読んでいると、まさに「雑誌のネット化」とでもいうべき現象がすでに雪崩式に起こっているのだな、ということを感じます。月2回刊で、ネットのリアルタイム性に敵うのかどうかというのは、選ばれた記事の内容とか精製度にかかってくると思うのですが。
そうそう、この雑誌の記事のなかで、『第9部隊』というロシア映画をめぐる賛否両論もけっこう面白かったです。この映画は、アフガニスタン侵攻の際に、敵中で見捨てられた『第9部隊』の悲劇を描いた「ロシア映画史上に残る超大作」だそうなのですが、批評の中に「加害者としての視点を欠いている」というのがあったのです。こういうのって戦争映画に対する万国共通の観点なのかもしれないけれど、映画で使える時間というのは、そういう「双方向性」を実現するにはあまりにも短すぎるし、例えば原爆で犠牲になった人々を描く映画に「加害者としての日本軍」を描くことにどれだけの意味があるのか、とかいうことを僕は考えてしまいます。
原爆資料館に行ったときに僕が感じたのは、落としたアメリカが悪いとか、戦争を続けた日本が悪いとかじゃなくって、どうして人間はこんなことをしてしまったのだろう?という恐怖と行き場のない虚無感でした。だって、影だけになってしまった人だって、その3秒前まで、そんな目にあうなんて、これっぽっちも思っていなかったのだからさ。
中途半端でどっちつかずの客観よりも、圧倒的な主観のほうが、はるかに「客観的」な説得力を持つことも、あるのではないのかなあ。
もちろん、それは悪用もできるのだけど。

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