琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

いまおすすめしたい「将棋本」5選

参考リンク:「枯れた趣味」としての将棋 - phaの日記

上記エントリを読んで、「将棋本好き」としては黙っていられず、僕の「将棋関連オススメ本」を厳選して御紹介する次第です。
将棋関連本には、「ある程度将棋の知識があったほうが楽しめるもの」もありますので、それに関しては「将棋知識必要度」を独断で判定しました。
「将棋のことはわからないし、興味ないから、将棋関連本には手を出しづらい」という方も、「人間ドラマの宝庫」として、ぜひ将棋ものにも目を向けていただければと思います。
 では、早速。


(1)月下の棋士(将棋知識必要度:ほぼ不要)

月下の棋士 (1) (ビッグコミックス)

月下の棋士 (1) (ビッグコミックス)

出版社からのコメント
天衣無縫の天才棋士・氷室将介。奨励会会員からプロ棋士への道を…。盤上に繰り広げられる、静かで熱い男たちの勝負の世界だ、話題集中!!

ちなみに、紙の本は文庫版もあります。
Kindle版も出ていたのか……
とにかくやたらと過剰な世界観で、「なんだこの『将棋聖闘士星矢』は……」と苦笑したくなる場面も多々あるのですが、ここに登場してくる「過剰な棋士」たちの多くに、実際にモデルとなる棋士がいるんですよね。さすがに谷川さんはあんなに悪い人じゃない(と思います)けど。
いやほんと、「なんだこれは!」って思いつつも、「棋士の世界」の雰囲気を最も反映しているマンガなんじゃないかな、という気がします。
(あんまり真面目に読まれると、それはそれで困りますけど)



(2)聖の青春(将棋知識必要度:低)

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

出版社/著者からの内容紹介
村山聖、A級8段。享年29。病と闘い、将棋に命を賭けた「怪童」の純真な一生を、師弟愛、家族愛を通して描くノンフィクション。新潮学芸賞受賞作。
重い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖(さとし)。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。第13回新潮学芸賞受賞作

棋士を描いたノンフィクションの金字塔。
将棋っていうものが世の中にあって、名人という唯一無二の座を目指して、このボードゲームに命を削っているプロたちがいる、その程度の予備知識があれば十分です。
村山聖は天才だったけれど、ある意味「どうしようもなく、人間だった」。


同じ著者の『将棋の子』もオススメです。

将棋の子 (講談社文庫)

将棋の子 (講談社文庫)

こちらは「天才になりきれなかった人たち」の話。



(3)決断力(将棋知識必要度:中)

決断力 (角川oneテーマ21)

決断力 (角川oneテーマ21)


Kindle版もあります。

決断力 角川oneテーマ21

決断力 角川oneテーマ21

内容紹介
勝負の分かれ目にある集中力と決断力。勝負師はいかにして直観力を磨いているのか?数多くの勝負のドラマを体験してきた著者が初めて書き下ろす勝負の極意を公開する。

将棋の知識があまりなくても、短時間で覗きみることができる「天才」の思考法。
もちろん、そう簡単に真似できるようなものではないのですが。
羽生さんはこういう思考法の新書をたくさん書かれているのですが、初めての書き下ろしのこの本が、いちばん密度が高いのではないかと思います。
こういう新書は「一冊目」が良いというか、二冊目以降は、どうしても「前と違うことを書く」ところからはじまってしまうので……
将棋の知識がなくても、気軽に読める新書としてオススメ。



(4)われ敗れたり(将棋知識必要度:中〜高)

われ敗れたり―コンピュータ棋戦のすべてを語る

われ敗れたり―コンピュータ棋戦のすべてを語る

永世棋聖米長邦雄と最強将棋ソフト「ボンクラーズ」の死闘の全記録。対局実現までの経緯、鬼手「6二玉」に込められた想い、今後の人間VS.コンピュータ棋戦の展望を語り尽くした一冊。


この本を読んでいると、米長さんの「6二玉」に賭けた執念が伝わってきます。
「私が弱いから負けた」
でも、それは「6二玉が悪手だったからではない」。
名人位までのぼりつめた、まもなく70歳になる男が、機械に勝つために選んだ「将棋の定石を度外視した一手」。
この「6二玉」は、今後、コンピュータ将棋が人間を圧倒するような時代が来れば(それはおそらく、そんなに遠くない未来の話でしょう)、そのターニングポイントとして語られる手になるのではないでしょうか。

その一方で、「名人位にまで就いた人が、『コンピュータに勝つため』だけに、そんな奇策を使うのは情けない。もっと堂々と『人間らしい将棋』で受けて立ってほしかった」という声もあったようで、その気持ちもわかるんですよね。
この本を読んでいると、「コンピュータ将棋」が「人間の将棋」に唯一勝てないものは、「棋士たちのドラマ」を見せることなのだろうな、と思えてなりません。


将棋を知らない人も、名人にまでなった棋士の「執念のドラマ」に圧倒されるはずですが、この「6二玉」の「異様さ」を理解するためには、やはり、ある程度の将棋の予備知識を要するのも事実なので、「将棋好きのほうが、楽しめる」のも事実かと。



(5)羽生善治と現代 - だれにも見えない未来をつくる(将棋知識必要度:高)

これもKindle版あり。

内容(「BOOK」データベースより)
将棋界の歴代記録を塗り替え続ける最強棋士。なぜ彼だけが常に熾烈な競争を勝ち抜けるのか。タイトル戦観戦記にトップ棋士たちとの対話、そして羽生本人に肉迫した真剣対談が浮き彫りにする、強さと知性の秘密。ルールがわからない人をも魅了する、天才棋士の思考法とは。既刊単行本二冊を再編集し、羽生善治との最新対談を収録した完全版。

一から書かれた「新刊」ではなく、既刊の「シリコンバレーから将棋を観る」と「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?」を合わせて1冊の文庫にしたものですので御注意ください。


この本のなかで、著者の梅田望夫さんは、羽生さんが勝った第57期王座戦第2局・山崎隆之さんとの対局で、まだ勝負が見えていない(と羽生さんは読んでいた)状況で、あっさり投了してしまった山崎さんに対する羽生さんの態度を、こんなふうに書いておられます。

 山崎の投了の意思表示に対して、羽生は身体をびくんと震わせ、


「おっ」


 と声を上げた。突然の投了に心から驚いている様子だ。そしてすぐ山崎に向かって、この将棋は難解なまままだ続くはずであったろう、そして自分のほうの形勢が少し悪かったという意味のことを、かなり強い口調で指摘した。山崎もすぐさま言葉を返したが、羽生の口調と表情は厳しいままだった。


 数分後に関係者が大挙して入室してきたときには、穏やかないつもの羽生に戻っていたが、盤側で一部始終を観ていた私は、終局直後の羽生のあまりの険しさに圧倒される思いだった。羽生には勝利を喜ぶ、あるいは勝利に安堵するといった雰囲気は微塵もなく、がっかりしたように、いやもっと言えば、怒っているようにも見えたからだ。

羽生さんは「勝者」なのに。しかもタイトル戦、自分からみれば、「少し悪い形勢」で転がり込んできた「棚ぼたの勝利」。
もちろん、山崎さんは「ワザと負けた」わけではなくて、読み違いと残り時間の少なさ、そして、羽生さんからのプレッシャーによって、「自分の負け」を宣言したのですが、それでも、羽生さんは「ラッキー!」なんていう素振りはまったく見せませんでした。
自分が勝つことを喜ぶよりも、「もっと良い勝負になるはずだったのを、ぶち壊しにされた」ことに憤りを感じる棋士羽生善治
羽生さんは自らの言葉でも、さまざまな「心得」みたいなものを語っておられますが、この本は、梅田さんという第三者が書いているからこそ、見えてくるものがあるんですよね。


僕は羽生さんの強さに対して、畏敬と同時に、悲劇の予感みたいなものを持ち続けているのです。
なぜ、天は、最強の棋士を、コンピューターが人間の棋力を上回ろうとするこの時期に生んだのだろうか?
(もっとも、羽生さんの強さも、コンピューターを利用した研究の恩恵を受けているのは間違いないのですが)
あと10年、もしくはそれより前に、最強のコンピューターは、人間の名人を打ち負かすことになるでしょう。
羽生さんは、「人間としての、最後の名人」として、その挑戦を受けるのだろうか?
それとも、「それは自分の役割ではない」と判断し、「最強の棋士」のまま、去って行くのだろうか?


以上、5冊挙げてみました。
どれもオススメですので、ぜひ手にとってみてください。



<番外編(チェス本)>

僕は「チェス本」も好きなので、せめてタイトルだけでも。

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)


こちらはKindle版(出ていたのか!)


この本の僕の感想はこちら。




完全なるチェス―天才ボビー・フィッシャーの生涯

完全なるチェス―天才ボビー・フィッシャーの生涯


この本の僕の感想はこちら。



『盤上の夜』とかにも触れたかったのですが、とりあえず今回はここまで。
フィクション、ノンフィクションともに「将棋本」って面白いんですよ本当に。
将棋って、ゲームなんだけど、ゲームだからこそ味わえる「人生」みたいなものがあるんじゃないかな。

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