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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

【読書感想】ダーリンは70歳 ☆☆☆☆☆


内容紹介
素敵に齢をとって生きたいカップルへ!


美容整形界の第一人者で高須クリニック院長である、高須克弥氏・70歳。そしてコミック界の最終兵器、西原理恵子氏・50歳。二人合わせて120歳の熟年バカップル漫画。いくつになっても愛と人生を語り続けます!


 面白かった。
「熟年バカップルの愛情に感動しました!」というような「お涙頂戴系」のマンガかと思いきや高須先生という「奇人」を遠慮なく弄り倒すサイバラさん。
 「自分の子ども」よりも「自分のオトコ」のほうがネタにしやすいのかもしれないな、と感じる突き抜けっぷりです。
 『毎日かあさん』以降の西原理恵子さんのマンガで、涙が出たことは何度かあったけれど、こんなに声を出して笑ったのは久しぶりのような気がします。
 それにしても、昭和医大の教授回診で、いきなりベッドに高須先生と西原さんが一緒に寝ていたら、お供していた医者や医学生は、ものすごくびっくりしただろうなあ!
 あと、ニューオータニの若い女性コンシェルジュのプロフェッショナルな態度と、その場面をマンガにしてしまった西原さんの思いきりの良さは感動的でした。
 なんのかんの言っても、西原さんは「人生に退屈しないこと」を求めていて、高須先生というのは、いろんな意味で、「過剰なところ」もあるのだけれど、自分の枠にはまれないところもネタとして昇華してくれる西原さんに居心地の良さを感じているのだろうな、と感じました。

 破れ鍋に綴じ蓋って、こんなふたりのことなのかな、と。
 社会的にみれば、美容整形の世界的権威と、日本を代表する人気マンガ家のカップルで、僕などは、「こんな生活力がある人どうしがくっつかなくても、それぞれが家族をやしなえるくらいの経済力があるのに、もったいないなあ」なんて考えてしまうのです。
 でも、ふたりは「支え合っているけれど、依存はしていない」のだよなあ。
 それぞれ、ひとりでも生きられるような強さを持っているのだけれど、その一方で、誰かに甘えることを諦めていたところがあったのかもしれません。
 こういう「組み合わせ」もあるのか、と。


 もともと食事に興味がなくて、「食事は1分。何でもお茶かけて丸飲み(名物寿司茶づけ!)」だという高須先生が、この年齢になって、西原さんに「でも君と一緒に食べるようになって、初めて、『おいしい』がわかるようになったよ。和食っていいね」と述懐するシーンなど、けっこうじんわりと沁みてくるものがありました。
 あれだけお金を持っていて、食にだっていくらでも贅沢できるはずだったのに、「食べものの味に興味がない人生」だったのか……
(まあ、この話にも、ちゃんと「オチ」があるんですけどね)


 ダライ・ラマさんや元横綱朝青龍関があまり有難味もなく出てきたりもして、「住む世界が違うな」とか、思うところもやっぱりあります。
 あまりにスケールが大きすぎて、日常をマンガにしたというより、マンガを日常にしてしまったような人生だよなあ、と。
 それでも、日頃の悩みというのは、けっこうそこらへんに転がっているようなことで。
 70歳と50歳のふたりはずっとベタベタしていられるだけの体力もないし、残された時間のことも考えてしまう。
 ただ、そこで落ち着いてしんみりするのではなくて、やっぱり、全力で走り続けている。
 そういうふうにしか、生きられない。
 読んでいると、「家族を大切に」「家庭を大切に」って言うけれど、結局のところそれって、「自分を大切にする」ことからはじまるのではないか、という気がするんですよ。


 「ボクを理解してよ」
 そうなんだよね、いくつになっても、どんなに偉くなっても、人は誰かに「理解」してほしいんだ。


 個人的にいちばん身にしみたのは、西原さんのこの言葉でした。

 気づかなかった
 子供といられる時間は
 びっくりするほど短い


 何であんなに仕事ばっかりしちゃったんだろう


 もっと一緒に遊べば良かった

 西原さんは、子供さんたちと一緒に生活を楽しんでいたように僕にはみえていたのです。
 それでも、「後悔」してしまうこともある。
 人生って、短いよね、本当に。


 僕は西原さんが売れない新人マンガ家で、ルールもよくわからないまま麻雀雑誌に連載をして、原稿料を周囲の猛者たちに麻雀で回収されていた時代から、西原さんが書いたものを読んできました。
 あれから、西原さんは『恨ミシュラン』で有名になり、体当たりエッセイで人気を博し、『毎日かあさん』で「育児マンガ」の巨匠的な存在になり、鴨志田さんとの別れを経て、いまなお、50歳でこうしてリングに立ち続けている。
 
 
 これはもう、「サイバラ・サーガ」だよなあ。
 なんかもうわけがわかんなくなるくらい壮大で、荒唐無稽で、やたらと面白くて、少しだけせつない。
 「お母さんたちのカリスマ」みたいになってしまった西原理恵子が、ちょっと苦手になった人にこそ、読んでみていただきたい。
 感動するっていうより、ほんと、バカップルですよ。
 そして、バカップル最強!


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