琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

【読書感想】僕らが毎日やっている最強の読み方 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
2人の読み方「最新の全スキル」が1冊に。「普通の人ができる方法」をやさしく具体的に解説。重要ポイントがすぐわかり、読みやすく、記憶に残る。具体的な新聞・雑誌リスト、おすすめサイト・書籍を紹介。2人の仕事グッズも完全公開。見るだけで参考になる!


 池上彰さんと佐藤優さん、最初に2人の共著を読んだときには、「なんてゴールデンコンビ!」と思ったのですが、最近はけっこう一緒に本を出しておられます。
 おふたりの「まえがき」「あとがき」を読んでいると、けっこう気が合うというか、お互いに刺激しあっているところもあるみたいですし。


 この本、そんな「現代の日本のメディアでの知性」を代表するお二人が、「情報収集方法」について語り合ったものです。
 漠然としたものではなくて、実際に「こんな新聞や雑誌や書籍を読んでいる」「こんなサイトをみている」というのが実名をあげて紹介されているので、かなり即効性はあると思います。
 この本に関しては、紙よりもKindle版のほうが、紹介されているサイトにすぐ飛べる、という電子書籍のメリットが大きいのです。
 そして、読んでみてわかるのは、二人とも、「秘密の勉強法」とか「特別な情報収集法」を持っているわけではなく、あたりまえのことを、マメに持続している、ということです。
 情報はみんなが読んでいる紙の新聞にほとんど書いてあるし、サイトも「公式筋のウェブサイト」を重視している、と二人は仰っています。

池上彰ネットの普及で、簡単に資料の原文に当たれるようになったのは大きなメリットですね。発表文や行政の内部資料などは、ほぼすべてネット上に全文公開されています。佐藤さんは霞ヶ関のホームページもよくご覧になっているとか。


佐藤優はい。外務省や首相官邸のサイト、財務省や外務省の会見記録、国会の議事録は極めて重要な情報源です。ほかに執筆の際によく参照するのは、各国の新聞社、国営放送、政府や官庁、専門機関の公式サイトです。いずれも扱っている情報は一時情報のみ。それが重要なポイントです。池上さんもご覧になるでしょう?


池上:そうですね。外務省のサイトを見ると、その国の外交の歴史、日本との関係がコンパクトにまとめられていて便利です。あと私がよく見るのは日銀のサイトです。金融政策決定会合の際に日銀から公式コメントが出ますが、新聞記事を読んでもよくわからないことがあるんです。記者がよく理解しないまま書いているのでしょう。そういうときは公式サイトで原文に当たると、すぐ本意がつかめます。


佐藤:最近は読みやすく編集された「まとめ記事」が人気ですが、ネットの利用価値はむしろ「原文」にあります。「まとめ記事」といっても、誰がどんな目的でまとめているかわかりませんから。


池上:もちろん日ごろは、新聞やテレビといった「メディアのフィルターがかかった情報」でいいんです。一般の人にも読みやすく、わかりやすくするためのフィルターですから。そのうえで、メディアの情報の中で何か気になるものがあれば、ネットで原文に当たってみるといいですね。


 このあと、佐藤さんは「役所のホームページを読むのには慣れや基礎知識が必要なところもあるんですが」とも仰っています。
 これは本当に大事なことだと僕も思うのです。
 ネットでは、気軽に「まとめ」が読めるようになったのがメリットだと思われがちなのですが、実は、ネットの大きなメリットというのは、「編集されていない原文」に、そのまま一般人が触れられるようになったことなのですよね。
 「まとめ」や「編集」が、ある種の意図をもってなされることが少なからずあるのは、ネットに慣れた人にとっては「常識」のはず。
 すべて原文にあたるというのは非現実的ではあるのですが、気になったときには、まず「原文」を確認してみることが薦められています。


 また、対談のなかでは、池上彰さんが熱心なカープファンだったり、読書歴が明かされていたりもしています。
 お固い「勉強法」だけでなく、お二人がそういう勉強法を選ぶに至るまでの経験(失敗例も含めて)も語られているのです。

佐藤:前からお尋ねしたかったんですが、池上さんは情報の真偽を判断するうえで、何か基礎をお持ちですか? 国内外の情勢を分析して解説するという仕事では、正しい情報を正しく見極める力がなければ、生き残っていけませんよね。もちろん、NHK時代からの経験や蓄積、基礎知識の土台があってこそだとは思いますが、何か特別な訓練法があるのでしょうか。


池上:「だまされないための訓練」という意味なら、良質なミステリー小説を読むのがおすすめです。読んでいる間中、完全にだまされてしまうようなものがいいですね。


佐藤:「こいつが犯人だろう」と思わせておいて、最後の最後でどんでん返しをくらうような作品ですね?


池上:はい。質のいいミステリーにはきちんと伏線がありますから、あとから振り返ると「ここでだまされたのか」とちゃんとわかります。そうして何度もだまされ、「なぜ気がつかなかったんだ」という悔しい経験をしていると、実際に情報を見聞きするときにも、うさんくさい話に違和感をもてるようになり、違和感があるものからは距離をとるようになります。


 村上春樹さんも「良質な物語をたくさん読んで下さい。良質な物語は、間違った物語を見分ける能力を育てます」と、オウム真理教を「信じてしまった人々」に関する話のなかで仰っていました。
 何が「良質」なのか?というのは、また難しい話なのですが、最低限、ある程度の数をこなすことは必要なのでしょう。
 フィクションを読むことによって、「本当と嘘」を見分ける能力がついていく。
 良質な物語って、ある意味「すごく上手な嘘」ですしね。
 池上彰さんは中高生時代にSF小説の大ファンだったそうです。


 そして、二人は「今の世の中でも、新聞が世の中の動きを知るための基本」だと仰っているのです。
 ただし、「新聞は少なくとも2紙以上読まなければ危険だ」というのが共通意見だそうです。

佐藤:私がはっきり意識したのは2013年12月26日以降、つまり安倍首相の靖国神社参拝からです。ここから、保守系とリベラル系の違いが鮮明になってきたと思います。その後、『産経新聞』『読売新聞』『日本経済新聞』が安倍政権に好意的、『朝日新聞』『毎日新聞』『東京新聞』が安倍政権に対立的な立場をとるという傾向が鮮明になりました。


池上:にもかかわらず、新聞はいまでも依然として「客観報道」の体裁を装っていますね。だから1紙だけ読んでいると、読者は自分が読んでいる新聞のバイアスになかなか気づかない。重大な出来事があった場合は、複数紙を併読しなければ総合的な情報は得られなくなっています。それに小さなニュースに関しては、1紙だけ読んでいたら、価値判断を誤るどころかニュースそのものを見落としかねません。


佐藤:「情報収集の基本は新聞だが、全国紙1紙だけではニュースの一部しか拾えないことも多く、非常に危険」ということを読者にも強く意識してほしいですね。


池上:「全国紙なら、どの新聞も同じようなニュースを扱っている」と思ったら、大間違いですからね。


 こういうことって、「みんなわかっているはず」だと知っている人は思い込んでいるし、知らない人は「新聞は客観的なもの」だと認識しているのです。
 池上さんは、毎日11紙も新聞を読んでおられるそうで、それはちょっと真似できそうもありませんが(池上さんも佐藤さんも「一般的なビジネスパーソンは、そのまま真似する必要はない」と仰っています)、「完璧にやろうとすると、かえって挫折するから、できる範囲で少しずつやっていけばいいですよ」ということです。
 お二人は「これが仕事そのもの」ではありますし。


 読んでいると、僕自身が「情報収集」のつもりで、効率の悪いネットサーフィンなどに時間を費やしてきたことを反省せずにはいられませんでした。
 もちろん、若い世代には、若い世代に向いた情報収集のやり方はあるとは思うのです。
 でも、こうして「みんなが新聞や雑誌を読まなくなった時代」だからこそ、読むことで差別化できるところもあるのかな、と。
 そして、味気なくて敷居が高そうな「公式サイト」にこそ、無料で閲覧できる重要な情報が詰まっているのです。

 100%真似できる人は、ほとんどいないとは思いますが、それでも、読む人が置かれている状況に応じて役立てることができる「実用書」だと思います。