琥珀色の戯言

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【読書感想】これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング ☆☆☆


Kindle版もあります

内容(「BOOK」データベースより)
なぜ「あれ」は売れるのに「これ」は売れないのか。マーケティングは、勉強したいと思いつつ、つい後回しになりがちです。そこで本書は、身近な事例でマーケティングが学べる、8つの物語を収録しました。モノを売る仕事をする人にとって、マーケティングの知識は必須です。この1冊から、マーケティングに親しめば、きっと明日からあなたの売り方が変わるはずです。


『100円のコーラを1000円で売る方法』の著者、永井孝尚さんによる、具体的な商品名や会社名を挙げて解説した、マーケティングの基礎知識。
マーケティングの専門家にとっては、「そんなこと常識!」って内容なのだと思われますが、僕にとっては、なんとなく疑問に思っていた、「なんで『セブンイレブン』は、こんなに近い場所にたくさん密集して出店しているんだろう?競合して売り上げが下がるんじゃない?」というようなことに答えてくれる本でした。

 10店舗を狭い地域に集中させれば、配送はとても楽になる。地域にある10店舗をトラックで巡回するだけだ.時間も距離も短くてすむ。1日に何回も配送するので、時間や手間を大きく削減できる。食品の鮮度も保てる。


「人生で迷ったら、あえて苦難の道を選べ」と言われる。
 人生に限れば、私もそう思う。
 しかしビジネスの世界は違う。同じ結果になるのなら、楽できる方が絶対にいい。少ないコストで速く売上をあげられるからだ。余分な努力をするなら、別のことをすべきだろう。
 セブンも同じように考えたのか、「だったら、狭い地域に店をまとめてしまえ」と店を密集させた。
 これをドミナント方式という。


 ドミナント方式は、他にもメリットがある。
 地域に深く浸透できるのだ。
 地域の状況に合わせて、たとえば地域限定で「おにぎり100円セール」とか「おでん特売日」のようなキャンペーンを行なえば、その地域にあるすべてのセブンにお客が集まる。地域の人たちにとっては至る所にセブンがあるので、親近感を持ちやすく、広告効果も高い。もしも広域に出店していたら、ある地域で広告をうったとしても、その影響が及ぶのは数店舗になってしまう。しかし集中的に出店すると、広告の影響が及ぶ範囲が広く、高い効果を見込めるため、広告コストが下がる。


 これは、セブンイレブン全体というか、「本部側のメリット」が大きくて、個々の店にとっては、本当にプラスになるのかどうか、わからないところではあるんですけどね。
 あくまでも、「売る側の立場」から書かれた本、ということで。


 これを読んでいると、マーケティングというのは面白いなあ、と思うのと同時に、現場としては、「そんな簡単に言うけどねえ」って言いたくなるところも多いのだろうな、と感じるのです。
 「150円の格安プリンをたくさん売っているけれど、利益が出ない店」に対して、贅沢な材料を使って、500円の唯一無二のプリンを作って売る、という戦略もあるよ、と書かれていて、それは理屈としてはそのとおり、なんだけど、実際にそういう商品をつくって、お客さんに受け入れられる、というのは、たやすいことではないはずです。
 そこをすっ飛ばして「利益を出すための計算」をされても、ちょっと実感がわきません。
 いや、その商品開発はマーケティングの仕事じゃない、と言われればそれまでなんでしょうけど、こういうところが、開発・営業と広告の軋轢になるのだろうなあ。


 また、メルセデス・ベンツの顧客サービスについては、こんな話を紹介しています。

 ベンツオーナーになるとその直後から、オーナーだけが見ることができる会員専用サイトが使えるようになる。ここでは自分の車の保守履歴やドライブ履歴が管理できる。それに加えて、オーナーだけが集まるコミュニティに入ることができる。たとえばここでは、オーナー限定のサーキット体験や新型モデル発表パーティへの参加ができ、他のオーナーとの交流を図ることも可能になる。こうしたコミュニティの輪に入ることで「やっぱり買ってよかった」と満足するのだ。
 それだけではない。ベンツは走行距離が10万キロ以上、あるいは保有期間が10年を超えたお客さんを表彰する「オーナー表彰制度」もある。贈呈された特別エンブレムは、車のフロントグリルに装着できる。これは中古車ユーザーも対象で、これもオーナーの長期にわたる「買ってよかった」を高めるのに一役買っている。
 その他、安全面では、万が一車が走行不能になったときにしっかりと助けるために、24時間365日のサポートサービスが購入後3年間、無料で提供される。加入すると、ドアミラー・エアコンなどの修理もタダになるという大盤振る舞いだ。さまざまな方法でここでも「やっぱり買ってよかった」と実感させるしくみを用意しているのだ。
 私が国産車に乗っていたときに、買ってから5年間何の音沙汰もなかったにもかかわらず、5年経ったらしきりに新車買い替えの営業をしてきた会社と比べると大違いだ。
 ベンツは高い買い物だ。買った直後にアフターケアをキッチリ行ない、その後も手厚くサポートすることにより、お客さんに「期待以上だ」「やっぱりベンツを買って正解だった」と思ってもらうことで、メルセデスは継続的なファンになる顧客をつくることに成功している。


 僕自身が体験している範囲では、最近、日本のメーカーのディーラーも、定期点検などでマメに連絡してきてくれるのですけどね。
 僕には縁がありませんが、レクサスなどの高級車を買うと、アフターサービスもこのベンツと同程度、あるいはそれ以上にしっかりしているようです。
 僕もその話を聞いて欲しくなったのですが、欲しいからといって、そうそう買える価格ではないのが難点です。


 とりあえず、マーケティング初心者で、広告をちょっと違った感覚で眺めてみたいな、という人には手頃な新書ではないかと思います。

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