琥珀色の戯言

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【読書感想】i (アイ) ☆☆☆

i(アイ)

i(アイ)

内容(「BOOK」データベースより)
「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまでは―。「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさ―直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!


 ああ、また『本屋大賞』にノミネートされているのか、西加奈子さん……
 何度か書いたことがあるのですが、僕はこの西加奈子さんという作家がものすごく苦手なのです。
 いかにも「不思議ちゃん」という感じの自意識過剰の主人公、善良で薄っぺらい登場人物、ストーリーをドラマチックにするために人や動物があっさり死に、「ワタシ」に目覚める主人公……
 それでも、前作『サラバ』に関しては、「これはそんなに悪くないな」って思ったんですよね。


 そして、今回の『i(アイ)』。
 オビには、又吉直樹さんと中村文則さんの推薦文。
 この人たち、とくに又吉さんが推薦すれば売り上げアップにつながるのでしょうけど、同世代の作家たちが仲良くしているのをみると「互助会かよ!」とか、言いたくなってしまうんですよね。
 主人公の「アイ」は、シリアからアメリカ人の父親、日本人の母親の養子となりました。
 世界各国で理不尽に人が死んでいく、さまざまな事件。
 アイが生まれたシリアも正常が不安定で、たくさんの人たちが命を落とすニュースが日本にも流れてきます。
 そんななかで、「なぜ、私だけこんなに恵まれた環境にいられるのか?」「死んでいったのが自分じゃなかった、ということへのなんともいえない後ろめたさ」みたいなものを、アイはずっと抱えて生きていくことになるのです。
 僕自身も、こういうところがあった子どもだったので、この小説を読んでいて「うえ〜」って思うのは、同族嫌悪的なところもあるのかもしれませんね。


 でもさ、LGBTとか、不妊治療とか、シリアで亡くなった3歳の男の子とか、NYのテロとか、東日本大震災とか、「社会問題と、生きづらそうなエピソード全部盛り」+「女の友情」なんていうのは、僕はもう「お腹いっぱい」です。いい人しか出てこない+僕が大嫌いな「行きずりでいきなり寝てしまう男女」登場ですよ。それが許されるのは、チュートリアルの『ちりんちりん』のネタの中だけです(あくまでも僕基準なので、ここは本気で怒らないでね)。
 こんなわかりやすい、記号的な「生きづらさ」を並べられ、そしてそれに「感動しました!」なんて感想が並んでいると、「ファッション生きづらさ」っていうのが、世の中にはあるんじゃないか、と思えてなりません。

 ミナとアイは繁華街とは逆方向にあるファーストフードのチェーン店に入り、ミナはコーラを、アイはアップルジュースを飲んだ。ファーストフードは両親が最も嫌っているものだったが、アイは、自分がこういった店にこっそり友達と来ていることを両親が喜ぶのは知っていた。高校生になってミナと知り合い、アイが急激にティーンエイジャーの女の子らしくなってゆくことに、両親はワクワクしているようだった。


 「良い親」の劇場性というか、わざとらしさ、みたいなものも、作者には見えているんですよね。たしかに、ところどころに、うぐっ、と思うような表現もあるのです。
 でもなあ、これはもう、たぶん、決定的に相性が悪いのだと思う。
 西加奈子さんが好きな人は僕のことが嫌いだろうし、逆もまた然り、なのではなかろうか。
 しかし、書店員さんたちが、いくら西加奈子さんのことを好きでも、西さんが書いたものならなんでも『本屋大賞』にノミネートする、で良いのかね?

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