※これは僕が個人的に行っている企画で、「本屋大賞」を運営されている方々とは、何の関係もありません。念のため。
参考リンク:「本屋大賞」公式サイト
「2015年本屋大賞」は、本日、4月7日の夜に発表されます。
というわけで、今年も人の迷惑かえりみず、やってきました電線軍団!
もとい、「ひとり本屋大賞」!(恒例のオヤジ前フリ)
僕が候補作全10作を読んで、「自分基準」でランキングするという企画です。
あくまでも「それぞれの作品に対する、僕の評価順」であって、「本屋大賞」での予想順位ではありません。
(「本屋大賞」の授賞予想は、このエントリの最後に書きました)
例年「苦労してやっているわりには、全く反響がない企画なのですが、もう意地です。
では、まず10位から4位までを。
第10位 億男
- 作者: 川村元気
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: 川村元気
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2014/10/15
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うーむ、「自己啓発小説」。
ただ、『世界から猫が消えたなら』よりは面白かったし、続きが気になって最後まで読めました。
「お金の話」って、なんのかんの言っても、「興味がある」のだよなあ。
第9位 アイネクライネナハトムジーク
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2014/09/26
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2014/10/10
- メディア: Kindle版
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これから伊坂幸太郎を読んでみようと思う人、あるいは「人が死ぬような小説は好みじゃないという人」向けの作品だと思います。
長年の読者にとっては、良くも悪くも、「ああ、いつもの伊坂さんだな」という感じなんですけどね。
第8位 怒り
- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/01/24
- メディア: 単行本
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- 作者: 吉田修一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/01/24
- メディア: 単行本
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↑の感想はこちら。
この小説、率直に言うと、読んでいてすごく気が滅入ります。
中盤くらいまで、同性愛者、母子家庭、発達障害など、今の世の中で「生きづらい者」たちの生活の様子が、けっこう淡々と描かれていくんですよね。
で、劇的な展開で、彼らが救われるかというと、そうでもない。
こんなに鬱々としてまで読む意味がある小説なのか?と問われたら、僕は「否」だなあ。
「意味」を追求しないのだとしても、娯楽にはなりにくいだろうし。
第7位 土漠の花
- 作者: 月村了衛
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2014/09/18
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
[asin:B00O9KZBY2:detail]
↑の感想はこちら。
この作品、「発砲できない自衛隊のジレンマ」みたいなものを描いた、政治的な小説だと思って読み始めると、「えっ?」と面食らってしまうかもしれません。
ランボーかエクスペンダブルズみたいな不死身の自衛官たちが、強大な敵に立ち向かっていく姿は、『七人の侍』あるいは『さらば宇宙戦艦ヤマト』。
ただし、だからつまらない、ということではなくて、滅法面白いんですよこの小説、本当に。
「自衛隊に、こんなハリウッド映画みたいな戦争アクションをやらせても良いのか?」という、背徳的な気分が、高揚感にもつながるんですよね。
ただ、読み終えてしばらくしてから10作の順番をつけると「なんかこのくらいかな……」になってしまう。
エンターテインメントに徹した小説って、こういう賞ものでは、やっぱりちょっと不利なのかな。
第6位 ハケンアニメ!
- 作者: 辻村深月,CLAMP
- 出版社/メーカー: マガジンハウス
- 発売日: 2014/08/22
- メディア: 単行本
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↑の感想はこちら。
あ、有川浩さんっぽい……
それが、この小説を詠み終えての、僕の率直な印象でした。辻村深月さん、なんか毒気抜けちゃったんじゃなかろうか。これでは、単なる「サブカル風味のお仕事小説」じゃないか。
『anan』連載で、イラストはCLAMP、そりゃ売れるよ……
この『ハケンアニメ』は、面白いし、すごく読後感の良い小説なのです。
ただ、その一方で、「これ、マンガにしたほうが、良かったのでは……」とも思う。
悪い人は出てこないし、アニメをつくる人も、観る人も、「リア充」たちにも、全方位的に気配りがなされていて、本当によくできた「お仕事小説」なので
そういえば、辻村深月さんって、去年もこの「ひとり本屋大賞」で6位(『島はぼくらと』)だったんですよね。
第5位 キャプテンサンダーボルト
- 作者: 阿部和重,伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/11/28
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: 阿部和重,伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/11/28
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実際に読んだ印象は、「これ、伊坂幸太郎さん単独での新作と言われたら、僕にはまったく違和感がなかっただろうな」でした。
逆に、阿部和重さんの新作として読んだら、「なんだか伊坂幸太郎っぽい作品だな」と思ったであろう、と。
「拍子抜けするくらい、『合作っぽい感じ』がしない、良質のエンターテインメント小説であることは保証します。
まあでもなんというか、最近伊坂さんがひとりで書いたものより、この合作のほうが「伊坂幸太郎らしい作品」になっているように思えるのは、僕だけでしょうか……
第4位 満願
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/03/20
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/09/12
- メディア: Kindle版
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人は、必ずしも悪意に基づいて、罪を犯すわけではない。
というか、大部分のミステリで重視されている「動機」なんていうのは、実際にその事件を起こした当事者にとっては、そんなにクリアカットに言葉にできるようなものではないのかもしれません。
でも、「太陽が黄色かったから、人を殺した」では、文学作品にはなっても、ミステリにはならない……はずでした。
『満願』は、その「ミステリを成り立たせるためのお約束」を、あえて踏み越えようとしています。
それは、うまくいっている場合もあれば、「それはちょっとムリがあるのでは……」と思うものもあるのです。
それでも、この短編集を読むと、これまで「論理で解決してみせるミステリ」を書きつづけてきた米澤さんが、「そもそも、人間って、そんなに『割り切れる』ものなのか?」という、自分のなかから湧き上がってくる疑問に対して、書き手として誠実に答えようとしているのが、すごく伝わってくるんですよね。
さあ、いよいよベスト3。
第3位 本屋さんのダイアナ
- 作者: 柚木麻子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/04/22
- メディア: 単行本
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↑の感想はこちら。
最後のほう、涙を流している自分に、なんだか驚いてしまいました。
でも、それは「感動した」とか「悲しかった」というよりは、「いまの世の中でも、『女として生きる』っていうのは、こんなにキツいことなのか」と圧倒された、というのが率直なところです。
第2位 サラバ!
- 作者: 西加奈子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/10/29
- メディア: 単行本
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- 作者: 西加奈子
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2014/10/29
- メディア: 単行本
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この作品、とくに上巻のディテールは、ものすごく魅力的なんですよね。
よくこんなに「残酷でややこしい子供時代の感情」みたいなのを文章にできたよなあ、って。
僕にとっては、「好きじゃないけど、なんだかとても気になる作品」でした。
うーむ、西加奈子さんって、たぶん、ものすごく正直なんだろうな。
そして、大人の話を書くのは、あんまり好きじゃないのかもしれないな。
第1位 鹿の王
- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/09/24
- メディア: 単行本
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- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2014/09/24
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
鹿の王 上 ‐‐生き残った者‐‐<鹿の王> (角川書店単行本)
- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/09/25
- メディア: Kindle版
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鹿の王 下 ‐‐還って行く者‐‐<鹿の王> (角川書店単行本)
- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/09/25
- メディア: Kindle版
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- 作者: 上橋菜穂子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2014/09/25
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↑の感想はこちら。
正直なところ、「東乎瑠」とか「独角」というような「このファンタジー世界に馴染むための用語」に最初はなかなか慣れることができず、ちょっとキツいな、と思いながら読んでいました。
でも、上巻の半分くらいにはこの世界に慣れてきて、以後はもう、一気読み。
この作品の凄さというのは、「ファンタジー世界を題材にし、その世界をきちんと構築していながらも、読んでいると、いま、僕が生きている世界の現実についても考ずにはいられなくなる」ところなんですよね。
「テロは悪いこと」だと僕は思う。自分が犠牲になりたくもない。
でも、圧倒的な力の前には、そういう形でしか抵抗できない人々がいて、彼らにとっては、「当然の復讐」なのかもしれません。
以上、2015年「ひとり本屋大賞」の発表でした。
実際の「本屋大賞」の順位とのギャップを、どうぞお楽しみに!
今年の「ひとり本屋大賞」、10位だけはすぐに決まったのですが、あとはもう、明日決めたら順位が変わっているのではないか、というくらいの接戦です。
ただし、今回は☆5つがひとつもなくて、「そこそこのレベルでの争い」という感じです。
毎年、3位くらいまでは「なんのかんの言っても、これはオススメできるな」と思えるのですが、今年は「もし興味がわいたら」くらいかな。
『鹿の王』は良いと思うのですが、ファンタジー世界とかに関しては、やっぱり「ダメな人はダメ」だというのもわかるしね。
今年読んでいて印象に残ったのは「女性の生きかた」について書かれている本が多いことでした。
『本屋さんのダイアナ』『ハケンアニメ』『怒り』。
「女性の時代」という短絡的な結論よりも、「それでも、女性が女性として生きていくことは、けっしてラクではないし、男でいるよりも、日常での緊張感が高いのだな」と思い知らされた気がします。
毎年、電子書籍(Kindle)についてここで触れており、昨年は「全作品、紙で読んだ」のですが、今年は、『億男』『アイネクライネナハトムジーク』『土漠の花』『キャプテンサンダーボルト』『鹿の王』と、ちょうど半分の5作品をKindleで読みました。
Kindleについて、去年の「ひとり本屋大賞」で、こんなことを書きました。
結局、今回のノミネート作は、すべて紙の本で読んだのですが、来年もしこの企画を継続するならば、半分くらいは電子書籍で読むことになると思います。便利なんですよ、というか、部屋にこれ以上、本が増えるとつらくなってきた。「物語の力」は、紙でもKindleでも、変わりないですし。
いみじくも、この予想だけは的中していたようです。
そうそう、最後に僕の「順位予想」を書いておきます。
第3位:キャプテンサンダーボルト
第2位:本屋さんのダイアナ
第1位:鹿の王
今年は、本当に難しい。
順位予想は、まったく自身が無いです。