琥珀色の戯言

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【読書感想】灯台はそそる ☆☆☆☆

灯台はそそる (光文社新書)

灯台はそそる (光文社新書)


Kindle版もあります。

灯台はそそる (光文社新書)

灯台はそそる (光文社新書)

内容(「BOOK」データベースより)
海の安全を守る灯台。役割が重要なのはもちろんだが、ポツンと立つ姿は、人工物ながら風景を邪魔せず、むしろ趣を与える。実はファンは多く、好みのあり様も豊富。ところが今、灯台はまさに“崖っぷち”だ。GPSの台頭と省エネの流れの中、減少の一途…。その灯火を絶やさぬよう一人でもサポーターを増やすため、“灯台女子”が魅力と愛し方を余すところなく綴る。


 灯台、か……
 世の中には、いろんなものに愛着を抱く人がいますよね。
 鉄道マニアや文房具マニアというのは、マニアのなかでもまだメジャーなほうだと思いますが、ネットが多くの人に利用されるようになり、工場やダムなどの巨大人工物にも愛好家が少なからずいるということに、僕は驚かされました。
 この新書の著者は、灯台に魅せられ、世界中の灯台を巡ったり、灯台に関するフリーペーパー『灯台どうだい?』の編集・発行をされている方なのです。
 なぜ灯台だったのだろう、と問われても、何かを好きになるっていうのは、そんなにきっちり言葉で説明できるようなものではないですよね、たぶん。
 

 それにしても、著者の「灯台ファースト」は、筋金入りです。

 私は海外に行っても、いわゆる観光地を訪れることもなく、ブランドショップにも寄らず、ひたすら灯台を追い求めて岬から岬へ、夫の運転する車で移動しています。移動時間が長いのでレストランに入る時間がなく、車中でスーパーのお惣菜やパンを食べることも多いです。慣れない場所での長距離運転なので、ドライバーには一層の負担がかかります。

 リヴォルノという地名は聞き慣れないかもしれませんが、多くの地中海クルーズにはイタリアのこの港がコースに含まれています。なぜなら、近くの駅から電車に乗れば30分ほどでピサの斜塔を見に行くことができるからです。
 ただし私はピサの斜塔へは行かず、リヴォルノ港の灯台を楽しみました。初代のリヴォルノ灯台はピサ近くの洞穴から採取された石材による石造りだったそうです。残念ながら戦争で爆撃を受け破損しました。


 えっ、灯台好きはわかるけど、ピサの斜塔にも行ってみたくないのかな……
 旅行慣れしていて、いつでも行ける、という感覚なのかもしれませんが、灯台か著者のことがよっぽど好きじゃないと、このツアーに付き合うのはつらそうです。
 僕も灯台には、なんというか、すごく魅力的なたたずまいを感じますし、この本の写真をみていたら、自宅からけっこう近い角島灯台山口県下関市)くらいは、見に行ってみようかな、と思えてきたんですけどね。
 著者は、日本における灯台の歴史や、灯台を守ってきた人たちの話も詳しく紹介しているのです。
 灯台守って、灯台に住んで、ただスイッチのオンオフくらいをやっていれば良いのではないか、と思い込んでいたのですが、彼らは測量や気象観測のトレーニングを積んだ知識人で、地元の人からはインテリとして尊敬されていたのです。
 灯台というのは、海の近くの辺鄙な場所にあることが多いので、いちばん大変なのは、Amazonもコンビニもない時代に、そこでずっと生活をすることだった、とも書かれています。
 戦争中は、敵にとっての攻撃目標ともなりやすい灯台で、命を落とした人も大勢いるのだとか。
「綺麗ですね」「趣がありますね」だけでは済まない、そこに生きた人々の物語が、そこにはあるのです。
 とはいえ、海には、灯台がよく似合う。

灯台って今でも使われているの?」という質問を受けることがあります。「ハイ!」。私は首を大きく縦に振って答えます。その数は少しずつ減っていますが、現在日本では3000基を超える灯台が運用されています。
 想像より多い印象かもしれません。この数は岬などに建っている大きめの灯台(沿岸灯台)と、港の防波堤に建っている比較的小型の灯台(防波堤灯台。突堤灯台、水堤灯台、導流堤灯台とも呼ばれる)を合わせた数で、四方を海に囲まれた日本にとって、こうした灯台はなくてはならない存在です。


 ちなみに、人が住み込んでいる灯台は、いまの日本にはもう存在しないそうです。
 3000基って、すごい数ですよね。
 そして、個性的な灯台も多く、そこから発せられる光も、使用されるレンズによって異なるのです。

 灯台マニアの中で「フェチ」という言葉は、一般の使い方と同じく、灯台の特定の部分に魅力を感じることを指します。その中で一番人口が多いのは、「レンズフェチ」だと思います。かくいう私もここに分類されるのですが、夜、レンズが美しく輝いている様子を一度目にすれば、心を掴まれない人はいないのではないでしょうか! レンズは、内側に配置される光源(石油やガス等の炎による光や、白熱電球、メタルハライド電球、ハロゲン電球といった電気の光など、時代によって移り変わってきました)をより遠くまで届ける役割を担います。
 レンズが光を発する姿の美しさもさることながら、光学的な面白さを追求したり、さらには日本や欧米で製作されたさまざまな種類や、メーカーによる違いを見比べたりすることには興味が尽きません。

 灯台の光は、レンズを使うことで光源である電球の明かりを集めて束状にし、遠くまで届けられるようになっています。このレンズは発明者の名前をとって「フレネルレンズ」と呼ばれ、機能的でありながら、とても美しい存在です。まさに灯台の瞳と言えます。
 灯台に出会ったら、まず灯室(レンズが配置されている空間)にレンズが入っているか確認してください。背が高い灯台だと、下から見えなかったり、遮蔽板(町に光を飛ばさないために覆う板)やブラインドで隠れていたりする場合もあるのですが、灯台の中に入れなくても外からでも鑑賞することができます。
 しかし管理費の削減、省エネルギーなどを理由に、レンズに代わって光源と一体化した「LU型回転灯器」、「LED灯器」が導入されている灯台も多く、レンズは数を減らしています。レンズが入っていたらとてもラッキーな出会いだと思っていいと思います。


 ここで紹介されている、レンズとそこから発せられる光の写真を見ると、僕もここに行ってみたいなあ、と思うのです。
 灯台は、GPSの発達・普及により、減っていく傾向にあり、著者も心を痛めています。
 どうしても現在のGPSではカバーできない部分もあるけれど、コストを考えると、運用していくのは厳しい、という灯台も多いようです。
 僕は灯台マニアではないけれど、遺せるものなら後世に遺してほしいし、自分でも見てみたい。
 たしかに「そそられる」のだよなあ、灯台って。
 

 ちなみに、現在、日本全国で「登れる灯台(参観灯台)」は、15基あるそうです(入場料大人200円)。
 僕も子供と一緒に行ってみようかな。
 

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