琥珀色の戯言

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【読書感想】「コミュ障」だった僕が学んだ話し方 ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
外出すれば道端の人が自分の悪口を言っているのではないかと怯え、人前に出ればアガってしまい一言も発することができないまま、場を後にする―。青春時代、そんな「コミュニケーション障害」、俗にいう「コミュ障」に苦しんでいた吉田照美が、悩みぬいた末にたどりついた「コミュ障ならではの会話術」を初めて明かす。「滑らかな語り」をもてはやす現代の風潮に抗う、「うまく喋ることを目指さない」話し方、そして吉田の考えるコミュニケーションの本質とは。


 うーむ、吉田照美さん、「コミュ障」ではないような……
 思春期、一時的に周囲とうまく話せない、というのは、そんなに珍しくないと思うんですよ。
 「他人とのコミュニケーションが苦手な人のための『ノウハウ本』」としては、正直、あんまり参考にはならないと思います。
 吉田照美さんの「伝記」を読みたい人には、悪くない新書なのだけれど。
 アナウンサーが書いた、コミュニケーションに自信がない人のための「技術書」としては、ニッポン放送吉田尚記さんの『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』のほうをお薦めしておきます。

 読者の方の中には、これから企業の入社試験を受けるという人もいるかもしれません。
 そんな方たちに言いたいのは、「いい自分を見せようとせず、素直に受け答えしてほしい」ということです。
 面接の場所で、いつも以上の自分を見せようとしてもそれは無理というものです。そんな即席に自分を変えることは誰にもできません。面接以外にも、社会に出れば会議や取引先とのやり取りなど、しっかりと自分の考えを伝えなければならない場面はたくさん出てきます。
 そういった重要な局面で、いつも以上の自分を見せようと背伸びばかりしていたら、無理するあまり失敗も増え、信用も失うことになってしまいます。等身大の自分、いつもの素直な自分であることが、人の心に響く言葉を発するために何よりも大切なことです。
 素直な自分を出して、「この仕事がしたいんです」という誠意を表すことができればそれで十分なのだと思います。
 だから構えたり、恥ずかしがったりせずに、自分を素直に出すようにがんばってみてください。


 こういうのを読むたびに、「だから、自分を素直に出すことができないから、苦労してるんだよ……」と暗澹たる気持ちになるんですよね。
 これは正しいのだけれど、簡単なことじゃない。


 著者は、会話への苦手意識を克服するための、こんな方法を紹介しています。

 話すことが苦手な人はまず第一に、「自分の会話の”型”」を持つようにすればいいと思います。
 そうは言っても、最初から自分の「型」を持っている人などどこにもいません。では、いったい何から始めればいいのか? それはずばり、誰かの「真似」から始めればいいのです。
 アナウンサーでも歌手でも、俳優さんでも、誰でも構いません。まずは「あの人のしゃべり方は好きだな」という人の語り口調を真似するのです。
 学生時代、私が最初に憧れたアナウンサーが小島一慶さんでした。だから当時私は、まず一慶さんの真似をするところから自分の「型」を作っていきました。文化放送のアナウンサーで私の1年先輩だった梶原しげるさんは、普段から我々の大先輩であるみのもんたさんの放送をずっと聴いていました。
 梶原さんはみのさんの真似をすることで自分の「型」を作ろうとしていました。梶原さんと一緒に泊まり勤務となった晩のこと。梶原さんはラジカセのテープを文字起こしをしながら聴いています。聴いていたテープは、みのさんの番組を録音したものでした。
 テープを聴き終わった梶原さんは、今度は文字起こしした原稿を読み始めました。梶原さんはそうやって、大先輩の会話術を学び、吸収していったのです。


 上手い会話術って、脳の働きが大事だと思われがちで、考え方や知識を重視する人が多いのです。
 でも、実際のところは「上手な人が話しているのを、どのくらい聴いてきたか」というのが、けっこう大きいのではないでしょうか。
 僕が、なんとか自分の会話恐怖症と付き合っていけているのは、学生時代に聴いていた深夜ラジオや最近面白く感じるようになった落語の力じゃないかと思うのです。
 積極的に「会話術を学ぼう」としなくても「上手い会話」にたくさん触れるだけでも、「反応する力」が、だいぶ違うのではないかなあ。
 いまの時代は、どうしても映像コンテンツが主役になりがちなのですが、たまにはラジオ番組、それも、パーソナリティがリスナーからの日常を切り取ったメールを読むような、昼下がりのAM放送とかを聴いてみるのも、けっこう楽しいものですよ。他のことをやりながらとか、運転しながらで十分なので。


 吉田さんは、「微妙に避けたい話し方」という項のなかで、こう仰っています。

 前項の悪口を言う人とちょっと似ていますが、「ここだけの話なんだけど……」と「秘密の話をあなただけに教えます」というスタンスで言い寄ってくる人がいます。
 このような人たちは「ここだけの話……」と言いながら、ここだけでなくあちこちで同じ話をしていると思っていいでしょう。
 芸能界でも「ここだけの話だけどね……」と吹聴してまわっている人は結構いますが、そんな人はやがてみんなから「放送局」と呼ばれ、誰からも信用されなくなってしまいます。
 もしあなたが誰かから「ここだけの話なんだけど……」と言い寄られたら、まずは「眉唾」のスタンスでその話を聞く必要があります。
 一番気をつけなければならないのは、その話を鵜呑みにして自分が逆に広めてしまわないようにすることです。「ここだけの話……」と言い寄ってくる人の中には、その話を拡散してほしくて言ってくる人もいるのです。


 この話、内容はその通りなのですが、誰からも信用されなくなった人が「放送局」と呼ばれていると、アナウンサーの吉田さんが書いているのは、すごい自虐ネタですよね。
 ここは、笑うところ、なのだろうか……


 吉田照美さんのファンには楽しめる新書だと思います。
 「コミュ障」の特効薬には、なりそうもないけれど。


fujipon.hatenadiary.com

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