琥珀色の戯言

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【読書感想】人間コク宝サブカル伝 ☆☆☆


人間コク宝サブカル伝

人間コク宝サブカル伝

内容紹介
『人間コク宝サブカル伝』 吉田豪の人気インタビューシリーズの第5弾! 今回は、アクの強い文化人のこじらせインタビュー集となっております。


諫山創/乙武洋匡/枡野浩一/穂積隆信/山本寛/宇川直宏/宮崎吐夢/久田将義/小西克哉/安東弘樹/神足裕司/上杉隆/YOU THE ROCK★/須永辰緒/安岡力也/清水健太郎/岸部四郎


特別インタビュー:品川ヒロシ
豪華あとがき:町山智浩with水道橋博士


僕は吉田豪さんのインタビュー本、ずっと愛読しているのですが、今回の『人間コク宝サブカル伝』は、ちょっときついなあ、と思いながら、最後まで読みました。
僕は「インドアいじめられっ子系サブカル人間」なのですが、収録されている人には「悪羅悪羅(オラオラ)系サブカル」の人が多くて、彼らの若いころのヤンチャ(ケンカしたり、女遊びをしたり)自慢を読むのに疲れてしまって。
「暴露話」や「裏話」も、あまりに凄惨な内容だと、苦手です。
そもそも、収録されている人のなかに、知っていて、興味を持てる人が少なめだったんですよね。


進撃の巨人』の諫山創さんが、こんなに「こじらせた人」だったというのは知りませんでした。
というか、超人気漫画を生みだしながらも、ネットでの反応とかを、こんなに気にしてしまうものなのか、と。
そういうのは、どうも諫山さんだけじゃないみたいで、今の世の中の「創作者」っていうのは、大変だよなあ、と痛感させられます。

諫山創はるかぜちゃんとか見てて思うのは、ネット世代はあらゆる人生の失敗を事前に知ることによって、何か別のものになっちゃうっていう現象がはるかぜちゃんで起きているのかなっていうのはあります。


――(吉田豪):小学生に絡んでいく大人がことごとくバカに見えるっていう、あの状況ですよね。


諫山:すごいですよね、あの精神年齢の差って、なんではるかぜちゃんに絡む人はあそこまで変なのかなって。ああいう人をあぶり出す機械として、ものすごい精度だなっていうのは感じますね。すごいしっかりしている子だとしても、小6相手に傷つけるようなことを言える……まあ、何万人もいたら、ひとりぐらいいるのは当たり前だと思うんですけど、あれ見るとゾッとしますね。


――そういうのが怖いからツイッターは匿名でやるだけ、みたいなのがあるんですか?


諫山:僕は絶対に対応できないですね。傍から見たら面白くなるかもしれないですけど、とてもその勇気はないです。町山(智浩)さんとか、自分をまったく守らない人にすごい憧れるんですけど、僕はロックンローラーじゃねえし、普通の人だしなっていうのがあって。


 いまや、ネットは「誰かに反応するための道具」だけではなく、「誰かに反応している変な人をあぶり出すためのツール」にもなっているのだなあ、と。
 誰もが、一方的に「見ている側」では、いられない。


 TBSアナウンサーの安東弘樹さんが、会社への意見も堂々と言うような、こんな尖った人で、複雑な生い立ちだったというのにも驚かされました。
 テレビ局のアナウンサーなんて、お坊ちゃんお嬢ちゃんで、コネか「ミス○○」みたいな看板が必要だと思っていたので。
 その安東さんが、奥様(タレントの川幡由佳さん)について、こんな話をされていたのも印象的でした。

安東弘樹だからホントに正反対ですべて勉強になります。すべてにおいて性善説なんですよ。付き合っているときにみんなでご飯食べに行こうってときに僕が仕事で遅れたら、「急ごうよ、みんな待ってるよ」って妻が言ったことに僕は衝撃を受けたんですよ。「え、なんでみんなが待ってるって思えるの?」って。みんなが僕のことを待ってるわけではないと思うから、遅れても全然気にしないわけですよ。みんなは楽しくやっているわけだから、僕たちが行かなくてもそこは成立してるし。そしたら妻が衝撃を受けて、「えぇーっ?なんでそういうふうに思うの? 来てほしくなかったら呼ばないじゃん」って。「でもとりあえず呼んどくってこともあるわけだしさ」っていうのが僕。妻は、誘うからには絶対に来てほしいとしか思えないんですね。どんだけ真っ直ぐなんだよと思いました(笑)。愛されて育っているからこそ、自分は求められていると思えるんでしょうね。

 僕もこれを読んで、「ええーっ」って思いましたよ。僕はどちらかといえば、川幡さん寄りで、「そこまでネガティブに考えなくても……」と。
 吉田豪さんも「それ、安東さんの歪みも見えますよ!」って反応されています。
 安東さんも「そういう正反対のところが合っているのだろうし、僕にはこの人しかいないのだろうなと思っている」と仰っているのですけどね。


 乙武さんの「暗黒面」とか、久田将義さんの熟女好きの話とか、神足裕司さんの「『恨ミシュラン』が終わった本当の理由」とか、上杉隆さんの「どこまでこの人は事実を喋っているんだ?」感とか、読みどころはたくさんあります。
 

 そして、巻末の町山智浩さんと水道橋博士をまじえての「総括」も面白かった。
 なかでも、ビートたけしさんやタモリさんについて熱く語っているところは、印象的でした。

町山智浩俺はたけしさんやタモリさんのどの点を尊敬するかっていうと、芸とかじゃないんだよ。俺は芸人じゃないから。たけしさんやタモリさんはカッコよさの先生なんだよ。


水道橋博士よくわかる!


町山:ホントに。それが弟子とかにならなくても全然平等にくるわけ。たけしさんとかタモリさんのすごいところは、誰に対しても接し方が同じなんだよ。これは吉本の芸人に対するアンチテーゼになるけど。絶対に威張らないし、誰に対しても敬語だし。


――腰低いんですよね。


町山:腰低い。あれも自意識なんだけど、すごいカッコいいんだよね。それがなくなった人って、傲慢になって好き勝手やって失敗してるじゃん。みのもんたとかもそうだから。タモリさんとたけしさんのすごいところは、恥じらいを持ち続けるところなんだよね。これやったら恥ずかしい、これ言ったらみっともない、これやったら傲慢だ、これ言ったら天狗だと思われるっていうことを常に意識してて、それは絶対にやらないの。あと無理する。枡野(浩一)とか絶対無理しないから!


――男はどこかで無理しないとダメですね。


町山:そう、男でも女でも無理しないとカッコ悪いんだよね。でも、最近はそういう美学がなくなっちゃってるのかなっていうね。


 この本にたけしさんやタモリさんへのインタビューが掲載されているわけではないのですが(機会があれば、吉田豪さんに『笑っていいとも』終了後のタモリさんにインタビューしていただきたい)、にもかかわらず「カッコよさとは、こういうことだ」という生きた例として、たけしさんとタモリさんの話が出てくるのです。
 読む側としては「そんなにカッコいい人の話」ばっかりだと、憧れもするけれど、ちょっと凹んでしまったりもするのですけどね。
 そういう意味では、この本は、ちょっと「僕が苦手なタイプのカッコよさを追い求めている人たち」が多いのかもしれません。
 

 とりあえず、吉田豪さんのインタビューが好きで、インタビューされている人の半分くらいに興味が持てれば、読んでみて損はしないかと思います。
 こういう本って、電子書籍でひとり分ずつ、バラ売りできればいいのになあ。

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