琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

キリンさんの話

http://d.hatena.ne.jp/tokori/20051206

↑の話を読んで、最近読んだ本の中で、樹木希林さんと久米宏のこんなやりとりを読んだのを思い出しました。

久米:新婚のときから喧嘩していたと聞くと、どうして結婚したのかということになってきますよね。

樹木:はあ、ほんとですよね。覚えてないんですよ。

久米:新婚時代というと、4分の1世紀前ですから、記憶がなくなってしまうというのもわからないでもないんですけれども、ご結婚の申し込みというのは、どちらから?

樹木:向こうは、「おれはしねえ」って言ってますから、私がしました。

久米:で、会えば喧嘩ですよね。

樹木:結婚するまでは大丈夫だったんですけどね。

久米:それを聞いて安心しました。普通の人間なんだと思いました(笑)。

樹木:うーん、変だなあとは思ったんですけど、私の結婚が二度目なんで。最初の旦那さんは、演じるときは狂気が出るんですけども、普段がノーマルな人だったんですね。で、日常が飽きちゃって、それで離婚したんです。それは私が全部悪いんですけど。
 だから、二度目の結婚のときには、日常が危なっかしい人に非常に興味を持ったんですね。だから、今考えてみると、私は息するのも面倒くさいという人間ですから、トラブルで生きていたという感じなんですよね。普通の人はトラブルがあるとくたびれちゃうんですけど、私はトラブルがあると元気でいられるという……。だから、内田は夫としてはふさわしかったんです。

久米:どういうふうにして結婚を申し込んだんですか?トラブルがほしいって?

樹木:うーん、かもしれないなあ。そういう言葉では言いませんけどね。

久米:予想以上のトラブルだった……。

樹木:いや、これからも続きそうなんですよ。もうくたびれてるのに(笑)。

久米:伝説になっていますけれども、包丁振り回して、ミーティングをやったそうで。

樹木:そう。年中包丁を買いに行くから、なんでこんなに欠けるんだって包丁屋は言いましたけど、ほんとにそうだったんです。だから、ずいぶんパトカーにもお世話になりましたしね、すごかった。その体力はないんです、もう。

久米:包丁が欠けちゃうというのは、どういうことですか。

樹木:投げるんですね。投げたり、ぶつけたり。まさか刺すとこまでは、やっぱり私も自分が刑務所に入るというのは、ちょっと考えたですから。

久米:刺したら、入ると。

樹木:うん。入るんだなあと思ったから、それはしないようにしてたんですね。でも、もうぎりぎり危ないと思ったときに、やっぱり別居しました。

(『最後の晩餐〜久米宏対話集』(集英社)より)

これは1997年の対談なので、今からちょうど8年前の話なのですが、これを読んでみると、樹木希林さんは、必ずしも「夫、内田裕也の横暴に耐え忍んできた妻」ではないみたいです。世の中には「トラブル好き」な人だっているのだということは僕もなんとなくわかりますが、この樹木さんの「めんどくさがりやなので、トラブルでもないと生きていくのもかったるい」という言葉には、かなり驚かされたのです。なんかそれって、底なし沼的なめんどくさがりかただなあ、とか。僕もめんどくさがりですけど、せいぜい「トラブルもなく、日々まったりと美味しいものでも食べて生きていたい」という程度だもの。
でも、こうして考えると、「夫婦関係」というのは、傍からみたイメージと実情が、けっこう異なっているという場合もあるようですね。さすがにこの夫妻は「別格」だとは思うけどねえ……

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