- 作者: 北尾トロ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05/30
- メディア: 文庫
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専門職のウラ話などの「業界モノ」が大好きな僕としては、こういう本を見かけたら、読まずにはいられません。
それで、この本には「超能力セミナー潜入体験記」とか、「人気メルマガ・ライターへのインタビュー」といった、「こんな商売、本当に成り立っているの?」と、一応カタギのカテゴリーに属している僕としては、ついつい疑いの目で見てしまうような職業が、たくさん取り上げられています。なかには「警察無線マニア」の人みたいに、「仕事じゃないだろそれは!」というものも含まれているのですが、それでも、僕はこれを読んで感じたのは、「普通じゃない仕事」のように思われていることでも、実際にやっているのは、「ごく普通〜ちょっと変わっているけれども、一般人の範疇に入ってしまう人」がほとんどなのだな、ということでした。
ちなみに、僕がこの本を読んでとくに面白いと感じたのは、ダッチワイフを創っている「人形師」の話と、裁判の傍聴記、そして、新聞拡張団に北尾さんが実際に「入団体験」して書かれたものでした。
この日は結局、契約が取れなかった。夜に現場に戻り、ひとり暮らしの若い連中を狙ってみたのだが、警戒されているのがミエミエ。とくに若い女は、なかにいてもジッと息を殺していないフリをする。電気のメーターを見れば、いるのはわかってんだよ。
男もさっぱりである、「悪いんだけど●△取ってるから」とか「新聞読まないんですよ」とか言ってくれれば腹も立たないのに「うち、●△」とか「○×嫌いなんだよ」などと、うるさいハエを追い払うように吐き捨てられればムカツクというものだ。
予想されたこととはいえ、気分を害したぼくは、もう若いひとり暮らしには手を出すまいと心に決めてむなしく仕事を終えた。
というような文章を読むと、まさに「警戒しまくっていて」「アポイントメントがない訪問者には反応しないことに決めている」僕としては、「ちょっと悪かったかなあ」という「罪の意識」も感じてしまうのです。相手も同じ人間なんだからねえ。
しかしながら、ここで「人間らしい対応」をしようとすると、かえって僕にとって煩わしいことが増えるばかりなのも明らかなので、結局は「居留守」を続けることになるでしょう。
「相手の立場になってみる」っていうのは、人間として素晴らしいことなのかもしれないけれど、現実的には「考えすぎるとキリが無い」面が確実にあるのです。多くの人は、「動物さんがかわいそう」だからといって肉を食べないわけにはいかないし、「アフリカの子供たちがかわいそう」だからといって、全財産を投げ出すわけにもいかないのだから。