- 作者: 安藤健二
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2008/11/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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内容紹介
ドラえもんが、ウルトラマンが、涼宮ハルヒが、封印だって!?
1970年代のアニメ裏事情、タイとの合作と著者権トラブル、そしてメディアミックスの鬼っ子・・・・・封印作品、現在進行形
『映画秘宝』『hon-nin』掲載原稿に大幅加筆、『封印作品の謎』『封印作品の闇』に続く、著者渾身の〈封印三部作〉
安藤健二さんの「封印作品」シリーズ、僕はこれまでの『封印作品の謎』『封印作品の闇』の2作とも新刊で買い、十二分に満足させてもらったので(番外編的な『封印されたミッキーマウス』は、正直ちょっと物足りなかったのだけど)、今回も楽しみにしていました。
読んでみての感想は、「やっぱり面白い!だけど、『謎』『闇』に比べるとちょっと盛り上がらないな……」
その理由について考えてみたのですが、結局のところは、僕がこの『封印作品の憂鬱』で取り上げられている作品『日本テレビ版ドラえもん』『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』『涼宮ハルヒの憂鬱(みずのまこと版)に対する、思い入れが乏しいというか、全く無いからなのでしょうね。
前2作では『ブラックジャック』とか『ウルトラセブン・第12話』、『オバケのQ太郎』『キャンディ・キャンディ』と、僕自身の記憶にも残っている「名作」たちが、「差別表現」というレッテル貼りや著作者たちのトラブルによって、見たがっている人がたくさんいるにもかかわらず「封印」されているという憤りを共有することができました。
でも、この『封印作品の憂鬱』で採り上げられている作品たちについては、正直、「まあ、『封印』されても別にいいや」って感じなんですよね。藤子・F・不二雄先生が不満足だったという『日本テレビ版ドラえもん』をわざわざ見たいとは思わないし、『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』も「ネタとしては面白いかも」という程度、『涼宮ハルヒ』については、小説もマンガもアニメも一度も観たことがないのでなんとも……
安藤さんは、「はじめに」で、こんなふうに書かれています。
ただし、あらかじめ言っておきたいことがある。私は何かを主張するために、この本を書いたわけではない。ここで取り上げた作品のファンではないし、封印の是非を問うつもりもない。では、なぜ2年間も苦しい思いをして本を書いたのかというと、「封印作品の謎を追うこと」が、タブー視されていたからだ。オタク系コンテンツに関わるマスメディアには、言論の自由は存在しない。広告主の映像会社や出版社の意向を気にするあまり、封印作品について議論することがタブーになっている。
特撮専門誌であれば、特撮に関する封印作品に触れることすらできない、アニメ専門誌であれば、アニメに関する封印作品は扱えない……。ある封印作品の記事を編集部に持ち込んでも、「その作品を出した会社を怒らせて、関連するアニメの写真を使えなくなると、雑誌が成り立たないので掲載できない」と拒絶された。実際に、業界内で禁止命令が出ているわけではない。でも、「そんなことに触れて誰かが怒ったら困る」というのだ。目に見えない自主規制の網が業界内に張り巡らされていた。
安藤さんがこのシリーズを書き続けられるのは、「個々のコンテンツに深い愛着を持っているわけではない」からなのだと思います。
そして、このシリーズによって、「みんなが『封印されている』『タブー』だと思っている作品の多くは、確たる根拠があるわけではなく、『なんとなくこれに触れたら面倒なことになりそうだ』という意識の積み重ねで、そうなってしまっているのだ」ということを僕は知りました。
でも、やっぱり僕は、「自分にとってどうでもいい作品」が「封印」されていても、「まあ、過剰な『差別狩り』や『表現規制』が原因じゃなければ、しょうがないんじゃない?」と思ってしまうんですよね。この本を読みながら、『日本テレビ版ドラえもん』や『みずのまこと版ハルヒ』は、「封印」されたというよりは「淘汰」されたんじゃないか、とも感じましたし。
この本を読み終えて、僕がいちばん疑問なのは、「一度世に出した作品に対して、『自分が気に入らないから』『満足なデキではなかったから』という理由で、著者・権利者がそれを『封印』あるいは『消去』してしまうのは許されるのか?」ということでした。
誹謗中傷や誤解を広める可能性がある「嘘」なら消すべきなのでしょうが、「クオリティの低さ」「自分が気に入らないこと(あるいは、気に入らなくなったこと)」を理由に、小説やアニメ、あるいはブログのエントリを「封印」することは「妥当」なのかなあ。
一度世に出してしまった以上、もう、その作品は、「みんなのもの」なのではないだろうか?
「社会的な理由(差別表現とか)で封印される作品」は減ってきていると思うのですが、ブログのエントリなど「すぐに消せる作品」においては、また、新しいタイプの「封印」がみられているのかもしれません(ネットの場合「魚拓」が残っていて完全に消すのは難しいのだとしても)。
いままでの『封印作品』シリーズの愛読者には、わざわざ薦めるまでもないはず。
シリーズ未読の方は、まず文庫化されている前2作から読んでみてはいかがでしょうか。
封印作品の謎―ウルトラセブンからブラック・ジャックまで (だいわ文庫)
- 作者: 安藤健二
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2007/05
- メディア: 文庫
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封印作品の闇―キャンディ・キャンディからオバQまで (だいわ文庫)
- 作者: 安藤健二
- 出版社/メーカー: 大和書房
- 発売日: 2007/09/10
- メディア: 文庫
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