琥珀色の戯言

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ガール ☆☆☆

ガール (講談社文庫)

ガール (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
わたし、まだオッケーかな。ガールでいることを、そろそろやめたほうがいいのかな。滝川由紀子、32歳。仕事も順調、おしゃれも楽しい。でも、ふとした時に、ブルーになっちゃう(表題作)。ほか、働く女子の気持ちをありえないほど描き込み、話題騒然となった短編集。あなたと彼女のことが、よくわかります。

僕がこの作品を読み終えて感じたのは、「さすがは奥田さん。読みやすいし、読後感も爽やか。でも、これって、『男からみた予定調和の範囲内の女性像』なんじゃないかな?」ということでした。
なんのかんの言っても、この物語の登場人物の女性たちは、みんな大企業に就職してプライドを持てる仕事と収入をキープしているわけだし。

でも、Amazonでの評価などを読んでみると、女性たちからの「なんで私たちのことがこんなにわかるの?」という声が多くて驚きました。
こんなに「働きマン」な女性がいるんだなあ。
男性である奥田さんがこの作品を書いたことに僕は圧倒されてしまうのですが、逆に「異性だからこそ、こんなふうに爽やかに描ける」ところもあるのかもしれません。
「女性が書く少年マンガ」に対して、僕たちが、「あの年頃の男なんて、もっとエロ妄想ばっかりだろ」と突っ込みを入れにくいようなもので。
女性が同じテーマで書いたら、もっと「救いようのない話」になりそうな気がします。

あと、解説で吉田伸子さんがこんなふうに書かれています。

 うわっ、完璧!
 本書を読み終えて、真っ先に思ったことがそれだった。内容は勿論だが、本書に登場する女子たちのファッションが、完璧なのである。男性作家が描いた小説で、ここまで女子ファッションがを的確に描いた作品、というのは本書が初めてではないだろうか。

僕はファッションには疎いので、これが「完璧」なのかどうかはサッパリわからないのですが、登場人物の服装の緻密な描写で、「ものすごくリサーチして描かれている」ことは伝わってきました。
さりげなく作品中に埋め込まれている、奥田さんの「情報力」にはいつも圧倒されてしまいます。
それをこれみよがしにアピールしないで、面白い小説を書いてしまうところが奥田英郎さんのすごさなんだよなあ。
WJ先生は、ぜひ参考にされると良いのではないかと。

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