琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

Another ☆☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
その「呪い」は26年前、ある「善意」から生まれた―。1998年、春。夜見山北中学に転校してきた榊原恒一(15歳)は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎は深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい、何が起こっているのか?秘密を探るべく動きはじめた恒一を、さらなる謎と恐怖が待ち受ける…。

文庫(上)(下)で読みました。
2010 年に「このミステリーがすごい」で第3位になったときに、読んでみようかと思ったけど、あまりの分厚さに挫折した記憶があったんですよね。
でも、読んでみたら、ものすごく読みやすくて、上下巻、文庫で800ページ近くを一気読み。
ライトノベルっぽいというか、会話が多くてキャラクターもわかりやすく(いや、翻訳ものとかだと、どうしても、途中で、「あれ、この人、どんなキャラクターだったかな……」って混乱したりするじゃないですか)、コンスタントに「事件」も起こるので飽きません。


それにしても、主人公の転校生が教室に入っていくと、窓際にみんなに無視されている影のうすい女の子(左目に眼帯あり)が、ぽつんと座っているなんて、何この綾辻エヴァンゲリオン!と思わずにはいられませんでした。
もちろん、綾辻さんは、そんなこと百も承知の上でやっているにちがいないのですけど。


この作品、『このミス』で3位にもなっていることですし、僕は「ミステリ」だと思って読んでいたのですが、どちらかというと、サスペンスホラーだと考えたほうがよさそうです。
ネタバレが許される状況なら、あれこれ詳細に語りたいところではあるのですが、今月からアニメ化もされていることですし、「面白い、すごく面白いんだけど、読者が知りたいことが10とするならば、1か2くらいしかわかっていないのに『解決扱い』にしてしまっているのがなんか物足りない!」とボヤくくらいにとどめておこうと思います。


逆にいえば、「ああ、こんなふうに大きな設定をつくるだけつくっても、全部『謎解き』する必要はないんだな、それでも、面白い小説というのは書けるのだな」と、ちょっと感心もしてしまったんですよね。
ディテールの積み重ねやリアリティ、凝った描写比べが多い最近の「ミステリ」のなかで、こういう「次にいったい何が起こるんだろう?」という「物語としての魅力」で読者を引っ張っていく作品は、けっこう貴重な気がします。


エヴァンゲリオンっぽい」「ライトノベルっぽい」描写に抵抗がない若い読者にとっては、かなり楽しめる作品のはず。
僕は、この文庫の「解説」で、初野晴さんは、こんなことを書いておられます。

 あと、綾辻先生は登場人物の書き分けが巧いのでチェックしましょう。リアリティではなく、ミステリを構成する「駒」としての判別がつきやすい。創作において何を最優先にしているのかがよくわかります。

 こういうのはまさに「創作する側の視点」だなあ、と思うのです。
 キャラクターで魅せる小説ではなく、物語を読ませるミステリとして、すごく完成度の高い作品なんですよね、この『Another』って。
 でもなあ、これって、本当の「完結編」みたいなのが無いのかなあ、なんでそんなことが起こるのか、綾辻さんは、最初から「答え」を提示しないつもりだったのだろうか……

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