琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】ワンクリック ☆☆☆☆


ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛

ワンクリック ジェフ・ベゾス率いるAMAZONの隆盛

内容紹介
売上4兆円の世界最大のショッピングサイト、アマゾン・ドット・コム。本はもちろん、DVD、音楽、ゲーム、食料品などあらゆるものを販売し、さらには電子書籍事業「キンドル」やクラウド事業でも先駆ける世界的な企業だ。


そのアマゾンはなぜ本の販売を手掛けることになったのか、インターネットの波をいち早くとらえられたのか、ドット・コム・バブルを経ても生き残り、さらに発展を続けられるのか――。


本書では、CEO(最高経営責任者)のジェフ・ベゾスの生い立ちから、ウォールストリートでインターネットの重要性に気づき、シアトルのガレージで創業、株価暴落の危機をも乗り越え成功してきたアマゾンの戦略と実像について、元ビジネスウィーク誌記者のベテランジャーナリストが解き明かす!


本書に登場するアマゾン戦略の例
・都合が悪いカスタマーレビューも、競合製品も、ユーザーが便利になるなら掲載する「顧客第一主義」
・1回のクリックで注文できる「ワンクリック」特許のために、10年間も闘い続ける「執念」
・メールでの回答が1分6通以下のカスタマーサポート社員はクビにする、
事業選びも結婚相手も、フローチャートで選び出そうとしたジェフ・ベゾスの徹底した「合理主義」
・年率2300%で成長していたインターネットに賭けた「眼力」
・株価が90%下落しても復活させたジェフ・ベゾスの「マネジメント力」


この本を読みながら、2012年の6月『カンブリア宮殿』にAmazonのCEO、ジェフ・ベゾスさんが出演されていたときのことを思い出していました。
Amazonの倉庫では、商品を整理して置いておくのではなく、とにかく空いているところに放り込んでおいて、バーコードで管理している」なんていうのをみて、「ああ、ここまで『ネット時代の合理性』を追求している企業なんだなあ」と驚いた記憶があります。
そのとき、「もうすぐ出ます!」と言っていたKindleの日本版も登場し、今年は「日本の電子書籍飛躍の年」になりそう。


この『ワンクリック』は、ベゾスさんを中心に、Amazonという会社が生まれて、ここまで大きくなるまでの経緯が描かれています。
僕もAmazonをよく利用しているのですが、使い始めたのは、そんなに昔ことではないんですよね。
なんだか、あまりに身近になりすぎて、今ではもう、Amazon無しでは生活していけそうもありません。
地方都市に住んでいると、ちょっと専門的な本とかマイナーな出版社の本を手に入れるのは、「Amazon以前」には、けっこう大変なことでしたし。


アメリカでは、スティーブ・ジョブズビル・ゲイツの次世代のカリスマとして期待されている(らしい)ジェフ・ベゾス
この人のすごさを、周囲はこんなふうに語っています。

 元上司、シシルニスキーはベゾスをこう評している。
「ベゾスには限界というものがありません。これが一番の驚きです。心理的な障壁といったものがないのです」
 ハルシー・マイナーも同意見である。ふたりがベンチャー立ち上げのチャンスをつかみそこなった8年後、シリコンバレーの有名雑誌、レッドへリング誌が1997年のアントレプレナー、トップ20人を取り上げる特集記事を組んだ(マイナーもベゾスもトップ20に入っていた)。この記事でマイナーは、ベゾスについて多才だと語っている。
「ジェフほど技術を深く理解し、戦略や戦術についてもすばらしく勘が働く人物は、ビル・ゲイツ以外、ほとんどいないと思います」
 英国のインディペンデント紙にも、次のようにコメントしている。
「ジェフは、筋金入りの開発者なのにほかのこともできるという数少ないタイプの人物なのです。彼は、自分の会社を立ち上げたいという夢を常に持ってもいました」
 ベゾスは、人によって好感を覚えたり覚えなかったりする。シシルニスキーは少し冷たい人物だと感じていた。
「彼を『いい人だ』と思ったことはありません。心は惹かれますが、温かい人だとは思わないのです。非難するつもりは毛頭ありません。私にとって彼は火星人のような存在なのです。善意の火星人、いい火星人です」

 「優秀な技術者であること」と「優秀な経営者であること」を両立できる、稀有な「火星人」。
 いやほんと、すごい人なんですよ、ベゾスさん。
 いまのところ大きな挫折がないのが「カリスマとしてのドラマ性」に欠けるようにも思われますが、まあ、そんな経験は、無くて済むのなら、そのほうが良いわけで。
 この本のなかには、Amazonの黎明期、他のスタッフが睡眠時間も削って発想する本を梱包しているときに、ほとんど手伝わなかったというベゾスさんのエピソードが出てきます。
 「なんか感じ悪い」とは思ったのですが、そういうところが、「らしさ」でもあるんですよね。
 わざと手伝わないのではなくて、「自分の仕事ではないことを、残業してまで手伝おうという発想がない」。
 本当に「合理的」な人なのです。
 その一方で、「ワンクリックで商品を買えるようにするシステムの構築」など、自分で必要だと判断したことに関しては、徹底的に実行しています。
 素晴らしく有能な人物であるのと同時に、気難しいところもあり、「だからAmazonで長続きした社員はいない」などと批判されることもあるのだとか。


 Amazonの特徴として、「カスタマーレビュー」や「マーケットプレイス」の存在があります。
 前者については、「ネガティブなレビューも書けるようにすれば、その本が売れなくなってしまう」という否定的な意見が多くあり、後者についても「ありえない」と考える人が大勢いました。

 これはばかげていると社外の人間は――アマゾン社内も一部は――考えた。アマゾンと同じ商品を他社がアマゾンを通じて販売できるようにするなどありえないと。しかし、アマゾンよりも手間が多少はかかるかもしれないが、消費者はインターネット経由で欲しいモノを見つけてしまう――そうベゾスは考えた。そういう他社にもアマゾン経由で販売させれば、アマゾンは、製品を見つけるベストな場所であり続けられる。この点も、一般的な感覚がまちがいでベゾスの考え方が正しかった。フォレスター・リサーチの推算によると、2010年最終四半期においてアマゾンの収益は35%がマーケットプレイスによるものだった。

 結果が出てみれば、「グッドアイディア!」で済む話なのかもしれませんが、よくこんなことを思いつき、実行したものです。
 「商品の悪口」とか「自分のところにもある商品を、もっと安く売る人たちの窓口になる」なんて、ありえない話だと考えるほうが普通のはず。
 しかし、これこそがAmazonの「お客様目線」の凄さであり、信頼につながったのです。
 僕は買う気がそれほどなくても、気になった本のレビューを観るためにAmazonの内部をうろつくことがよくあります。
 もちろん、他人のレビューを100%信頼しているわけではないけれども、多くの意見が集まれば、ある程度の「傾向」は見えてきます。
 そして、そうやって他の人の評価を読むことそのものが娯楽にもなり、Amazonへの親近感の源泉になっているのです。
 ネットで買い物をしていて思うのは、「ネットで買い物をするときは、まずAmazon」という人の多さです。
 人気商品が、Amazonでは「売り切れ」になっていても、他の通販サイトで探してみれば在庫がある。
 でも、他の通販サイトが軒並み品切れなのに、Amazonでは在庫があることは少ない。
 通販サイトは、Amazonしか使わない(あるいは知らない)という人も、けっこういるのではないかなあ。
 

 しかし、Amazonのサービスというのは、提供する側にとって、かなりの負担となっているのも確かです。

 膨大なストックオプションを夢見てアマゾンに就職するカスタマーサービス担当になったとしても、長時間労働でわずか100株のオプションという現実に直面する。しかも、成績優秀で3年間、勤め上げなければならないのだ。トップクラスは1分間に1ダースもの電子メールに回答する。1分6通以下はだいたいクビになる。ワシントン・ポスト紙は、次のようにカスタマーサービス担当者の言葉を引用してこの「暗黒面」を報じた。
「お客さまに対してできるかぎりの心配りをすることになっています――信じられないほどのスピードで対応できるなら、ですけどね」

1分間に6通って、1通10秒、ですよね……
タイピング練習ソフトの『激打』とかを延々とやっているような光景を想像してしまいました。
もちろん、メールの大部分は型どおりの対応で十分なものなのでしょうが、それにしても、「本当なのかこれ……」と驚愕してしまいます。
いまはAmazonの成長力に惹かれて、多くの優秀な人が発給でこんなキツイ仕事をやっているけれど、これをずっと続けていくことができるのだろうか?


果たして、Amazonは、いまの勢いで、すべての小売業を飲み込んでしまうでしょうか?
ジェフ・ベゾスは「伝説」になれるのか?
Kindleをはじめとする電子書籍の未来も含めて、目が離せない企業であることは間違いありません。

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