- 作者: 池井戸潤
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/03/14
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- 作者: 池井戸潤
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内容(「BOOK」データベースより)
大手ライバル企業に攻勢をかけられ、業績不振にあえぐ青島製作所。リストラが始まり、歴史ある野球部の存続を疑問視する声が上がる。かつての名門チームも、今やエース不在で崩壊寸前。廃部にすればコストは浮くが―社長が、選手が、監督が、技術者が、それぞれの人生とプライドをかけて挑む奇跡の大逆転とは。
今をときめく人気作家・池井戸潤さんの作品で、TVドラマ化もされた、この『ルーズヴェルト・ゲーム』。
僕も読んでみましたが、なんというか、本当にすごく「上手い」なあ、と。
不況のあおりを受けて業績が急速に悪化してしまった、青島製作所。
前社長の肝いりで発足し、社の看板でもあった野球部は、存続の危機にさらされます。
四面楚歌のなか、彼らは道を切り開くことができるのか……
思わず一気読みしてしまうくらい面白い小説で、読んでいて目頭が熱くなるようなシーンもありますし、読み終えて、元気が出ました。
まあでも、こんなにうまくいくようなものでもないよなあ、とも思うんですけどね。
ライバル企業が「悪党」みたいに描写されていて、勧善懲悪の爽快感がある一方で、「ライバル企業にも、ライバル企業の事情もあれば、そこで働いている人たちもいる」のは事実でしょうし。
とはいえ、野球好き、企業小説は好きでも嫌いでもない、という僕にも非常に楽しく読める、良質のエンターテインメント作品だと思います。
文芸評論家・村上貴史さんの「解説」には、こんな話が出てきます。
ちなみに池井戸潤は、この『ルーズヴェルト・ゲーム』において、リーマン・ショックで企業の体力が弱ってきたことの影響が企業スポーツに及んでいることを書きたかったと語っている。と同時に、なるべく野球のプレイそのものは書かないように心がけたという。「そんなシーンを書いたら小説の負け」であり、「野球のシーンを読むくらいなら、その時間、TVで野球中継を見ていた方がずっといい」という考えだからだ(『週刊文春』で村上さんが行ったインタビューより)。
池井戸さんは、野球の魅力を知っているからこそ、この作品では、野球そのものの描写に「深入り」していません。
「野球小説」を期待すると、肩すかしを食わされてしまうかもしれませんが、青島製作所という企業の経営と、野球部の試合について、バランスをとりながら、あまりベタつかないように描いていることが、この作品の「読みやすさ」と「爽快感」の源なのだと思います。
ある種、現代のおとぎ話、的なところもあるのかもしれませんが。
なあ、細川君。野球で一番おもしろいといわれているスコアがいくつか、知ってるか」
突然、青島にきかれ、細川は首を傾げた。
「さあ、私はあまり野球には詳しくないので。三対二ぐらいの試合でしょうか」
「八対七だ」
青島はこたえた。「ルーズヴェルト大統領が、もっともおもしろいスコアだといったというのがそもそもの起源でね。ルーズヴェルト・ゲームだ」
僕の感覚としては、8対7っていうのは、現代の野球の試合としては間延びしすぎている気がするのです。
細川さんが言っている、3対2、あるいは4対3くらいが僕にとっては、一番おもしろいスコアかな。
でも、小説では、8対7くらいが一番おもしろい。
この『ルーズヴェルト・ゲーム』は、たしかに、「8対7の小説」なのだと思います。