- 作者: 町山智浩
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/03/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Kindle版もあります。
実況中継 トランプのアメリカ征服 言霊USA2017 (文春e-book)
- 作者: 町山智浩
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/03/31
- メディア: Kindle版
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内容紹介
暗黒時代の幕開けとなるか!?
2017年1月20日。
好感度歴代ワースト1、政治家経験ゼロの嵐を呼ぶ男・トランプが
ついに第45代アメリカ合衆国大統領の座に!
全米各地で反トランプデモが沸騰し、前代未聞の様相を呈するアメリカ。
世界中が固唾を呑んで見守るなか、
トランプ新大統領を追ってアメリカ全土を駆け回り、
想像を絶する「リアル」な情報を現地から電撃レポート!
町山智浩さんが『週刊文春』に連載中の「言霊USA」の2016年3月〜2017年3月分をまとめたものです(一部、月刊『文藝春秋』に掲載されたものもあります)。
この時期は、なんといっても、アメリカ大統領選挙で、ドナルド・トランプ候補の「ネタ的な活躍」から、「よもやの大統領当選」の話題が多くなっています。
トランプ勝利を見抜けなかったことで、主流メディアの権威はついに失墜し、今や、ただひとつの真実などなく、誰もが自分の信じたい「真実」だけを信じる時代になった。英オックスフォード辞書が選ぶ2016年「今年の言葉」は「ポスト真実」だった。
トランプは就任前から組閣の段階で自分の言葉を裏切り始めた。ゴールドマン・サックスの社員をはじめ、既得権者たちを各省庁の長官に任命した。
トランプが大統領になって1ヵ月を待たずして、国家安全保障担当の大統領補佐官マイケル・フリンがロシア大使と密かに連絡を取っていた疑惑が発覚した。トランプは「嘘ニュースだ」と否定した。だが、FBIはフリンの電話を盗聴しており、ロシア大使との通話内容がリークされた。
「リークの犯人を捕まえてやる!」記者会見で息巻くトランプに一人の記者が素朴な疑問を投げかけた。
「フリンがロシアと内通していたニュースは嘘なのに、ロシアとの通話記録のリークは本物なんですか?」
するとトランプは言った。
「このリークは本物だが、ニュースは嘘だ!」
まさに二重思考……。
インターネットでさまざまな情報がオープンになったり、情報へのアクセスがしやすくなったのですが、それによって、人間が間違わなくなったかというと、必ずしもそうではないのです。
インターネットには「自分好みの情報が集まってしまう傾向」があって、かえって、偏った考えが強化されてしまうことも多いのですよね。
このトランプさんの発言なんて、コントかと思ってしまうのですが、こういうことを繰り返していても、トランプ支持派は、案外、平然としている。
むしろ、「そんなつまらないことで、トランプの揚げ足をとっている偉そうな連中(マスメディア)」への反感をつのらせています。
このシリーズを読んでいると、日本で生活している僕にとっては「それって、本当にトラブルにならないのだろうか?」と感じるようなアメリカ人の考え方が少なからず紹介されています。
男性から女性に性転換したマリアンという高校生のトイレについて。
「ジョナ、じゃなかったマリアンは、高校では、その……どっちのトイレに入るの?」
「女子用だよ」と娘。「決まってるじゃん」
でも、南部ではそうもいかない。
ノースカロライナ州知事は、「出生証明書に女性と記された者しか女子用トイレに入ってはいけない」とする州法にサインした。共和党とキリスト教保守の強い南部の他の州でも同様の立法をしようとしている。
「女性を変質者から守るためだ」この法律に賛成する人々は言う。
「生物学的に男なら男子トイレで用を足せばいい」
彼らにとってトランスジェンダーは性倒錯であって、男性の体を持つ女性とは考えていない。
これに抗議して、オンライン決済会社ペイパルは、ノースカロライナ州に開設予定だった国際センターを取りやめた。不景気に400人の雇用が消えたのは痛い。ブルース・スプリングスティーンやパール・ジャムはコンサートをボイコット。エルトン・ジョンは公開書簡で抗議した。
この話、性転換手術を行って、外観上も女性になっているのであれば、女子トイレで良いと僕も思うんですよ。
でも、「男性の体に女性の心を持つトランスジェンダー」となると、女装した覗き魔と即座に区別するのは難しいのではなかろうか。
僕は女子トイレには縁がないのですが、トイレだったら、まだいいですよね、基本的には用を足すのは個室内だから。
日本の場合は、「公衆浴場では、どうするのか?」という問題も出てきます。
正直、生物学的な性別に準じたほうが無難なのでは……とも思うんですよ。
町山さんの娘さんは「もちろん女子トイレ」と仰っていますから、アメリカのリベラルが強い地域では、心の性を重視するのがあたりまえ、なのでしょう。
また、最近のCG技術の進歩で、俳優に涙を流させたり、すごい肉体を持たせたりできるようになったことが紹介されています。
『ワイルド・スピード』シリーズの主役ポール・ウォーカーは交通事故死したが、新作『スカイミッション』は彼の弟を使って撮影、その顔に生前のポールの顔をCGアニメにして貼り付けた。オイラがガキの頃、ブルース・リーの死後に追加撮影して完成させた『死亡遊戯』(78年)では鏡にリーの顔写真を切り抜いて貼り、代役の俳優がそこに体を合わせるという苦しいことをしてたけど、今ならブルース・リーの新作も作れるんだな。マリリン・モンローでもジェイムス・ディーンでも。
ボーカロイドの「初音ミク」のように、名優たちのデータがストックされて、彼らが亡くなったあとも主演映画を作り続けることだって、これからは可能になるはずです。
それを制作者や観客が望むかどうかはさておき。
演技の内容も、役者そのものもCGでつくれる時代というのは、果たして、映画にとって幸福なのかどうか。
アメリカのいまが知りたければ、町山さんに聞け!という感じではあるのですが、あれだけ日本やアメリカの知識層にキワモノ扱いされていたトランプさんの大統領選勝利を目の当たりにすると、結局のところ、「こちら側」と「あちら側」の間には、巨大な壁がもう完成しているのではないか、とも考えずにはいられないのです。
最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)
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