Kindle版があります。
「とんでもなくクリスタル」「わたしを探さないで」
「下町のロボット」「蚊にピアス」
「おい桐島、お前部活やめるのか?」
「人生が片付くときめきの魔法」「からすのどろぼうやさん」
「ねじ曲がったクロマニョンみたいな名前の村上春樹の本」
「八月の蝉」「大木を抱きしめて」
「昔からあるハムスターみたいな本」
だいぶつじろう 池波遼太郎
……
利用者さんの覚え違いに爆笑し、司書さんの検索能力にリスペクト。
SNSでもバズりがとまらない!
クイズ感覚でも楽しめる、公共図書館が贈る空前絶後のエンターテイメント。
あなたはいくつ答えられる?
福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」は、ネットでも話題になりました。
これは、図書館で実際に利用者から問い合わせがあった「覚え違い、あるいはうろ覚えの本のタイトルや著者」の実例を公開したものなのです。
僕はこんなブログをやっていることもあり、けっこうたくさんの本を読んできたので、半ばクイズ感覚で、「まあ、全問正解とまでは言わなくても、8割くらいはこの『覚え違いタイトル』から、正解がわかるのではないか」と思っていたのです。
実際は、半分くらいしかわからなかったんですけどね。
というか、「あっ、あの本のことだ!でも……あれ、今度は僕が正しいタイトルや作者名が思い浮かばない……年のせいか、最近すっかり固有名詞が思い出せなくなっているのだよなあ……」と思い知らされることになったのです。
「『背中を蹴飛ばしたい』って本なんですけど……」
とかは僕でもすぐに綿矢りささんの『蹴りたい背中』!と思い出せますし、
「『人生が片付くときめきの魔法』を探しています」
というのは、「あれ、このタイトルどこが間違っているの?と少し悩んだあとで、「人生片付けちゃうのか!」と笑ってしまいました。まあ、なんか気持ちはわかる。
間違いやすい言葉っていうのも個性とか傾向みたいなものがあって、僕は恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』って、ずっと『蜂蜜と遠雷』って書き続けていたことがあります。
Q『情弱探偵』が読みたいのですが。
A『病弱探偵』ですね。
それはそれで面白そうです。探偵といえば情報収集に長けていないとできない職業のイメージですが、どうやって推理するのか興味を引かれます。実際の作品は、体が弱くて寝込みがちな女子高生がベッドで”安楽椅子探偵”をする青春ミステリーです。この覚え違いをしていた方は、正しいタイトルにたどり着いて小説を読んだ後も、さらに『虚弱探偵』だと覚え違いをしていたとのことです。
これを読んで思ったのは、今の世の中では「病弱」よりも「情弱」のほうが覚えやすい、よく耳にする言葉である、という人がけっこう多いのだろうな、ということでした。
「情弱探偵」を「病弱探偵」と間違える、という逆パターンなら、僕にも理解しやすいのですが、言葉の使用頻度というのは、世代やその人が置かれている状況によって、けっこう違うんですよね。本当にありそうなタイトルですけどね、『情弱探偵』って。
この本を読んでいると、あまりにも一般的な言葉の組み合わせのタイトルだと、他の本と間違えられやすいし、個性的なタイトルだと、タイトルそのものが覚えてもらえない、ということになりがちのようです。
「ねじ曲がったクロマニョンみたいな名前の村上春樹の本ありますか?」
日本を代表する大ベストセラー作家の作品であっても、『ねじまき鳥クロニクル』というタイトルは、やっぱり覚えにくいみたいです。
『1Q84』も、図書館員さんたちの間では「要注意タイトル」だったみたいですし。
『IQ(アイキュー)84』『1984』『1Q89』……
元ネタはジョージ・オーウェルの『1984』ですし……さすがに「村上春樹の」と言われれば、図書館員さんが間違えることはないとは思いますが。
この本のなかでは、「図書館の検索機を使うコツ」が紹介されていて、「図書館(あるいは書店)の検索機は、助詞が違うだけでも除外してしまうので、助詞は入れずに名詞の組み合わせで検索したほうが探しやすい」なんて話も出てきます。
あの機械ももう少し融通がきいてくれればいいのになあ、といつも思ってはいるのですが。
Qフォカッチャの『バカロマン』ありますか?
これを見たときには、失礼ながら、よゐこの濱口優さんの顔を思い浮かべてしまいました。
もし、自分が図書館や書店のカウンターで、こう尋ねられたら、どう答えるだろう?
Aボッカッチョの『デカメロン』でしょうか。
入浴剤の『バスロマン』のほうが、よっぽど近くないか……?
言われてみれば、たしかにこういう覚え違いもありそうですよね。
こういうのって、他人に尋ねる前に検索しないものなのだろうか……それとも、検索してもダメだったのか……こういう事例が紹介され、話題になることによって、Googleで「フォカッチャ バカロマン」で検索しても、『デカメロン』が表示されるようになっていくのかもしれません。
こういう「書名の問い合わせ」って、図書館のスタッフにとっては迷惑なのではないか、と僕は思っていたのですが、この本を読むと、スタッフにとっては「大事な業務」だと認識されており、けっこう面白がって(かつ真剣に)探してくれる、ということもわかります。
逆に、こういう利用者への対応のために、図書館には「本に詳しい人間」が必要なんですよね。