- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/07/31
- メディア: 単行本
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http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20050307#p4
↑なんて感想にもなってない感想を前に書いたのですが、僕が悪かったです。あまり遠出もできない連休を過ごしつつ、半分不貞腐れながらこの本を読んだのだけど、あらためて全部読んでみると、読み終わるのが勿体無いと思うほど面白かった!
もちろん僕の高校時代には、こんな甘酸っぱい「青春めいたもの」はなかったにもかかわらず、この本の中には、僕の「青春」のかけらみたいなものがたくさん散らばっていたのです。「本屋大賞」の書店員さんたちの推薦文にもあったように、「とにかくグロテスクなものを描写して『病める現代』を提示して話題になる」という小説ではなくて、本当にまっすぐな作品です。そして、そのまっすぐさが素直に受け入れられるのは、恩田さんの風景描写の巧さとテンポのよさのおかげなのです。読んでいるうちに、一緒に「歩行祭」に参加しているような気分になっていくのですよね。
貴子と融の間にある「垣根」みたいなものって、たぶん、僕のような人間には、一生乗り越えることができない類のものだと思うのです。いや、大部分の人たちにとってそうなんじゃないかな。もし日常のなかでの「融和」が描かれたとしたら、僕はその「きれいごと」を素直には受け入れられないのではないかな、と思うのですが、この「歩行祭」という情景には、なんとなく「そういう奇蹟が、起こってもおかしくないな」と思わせる力があるんですよね。
この本を高校時代に読んでいれば、もう少し素直に僕も「青春」する気になったのかもしれないなあ、と思います。逆に「ふん、青春しやがって!」と拗ねただけかもしれないんだけど。でもやっぱり、登場人物と同世代のときに読んでみたかった!
気になったところといえば、杏奈の「おまじない」の内容くらいかな。それはさすがに、うまくいきすぎというものでは。それと、ああいうイベントに知り合いの身内でも突然入り込んできたら、みんな引きまくるのではないかな、とか。
まあ、そんなのは些細なことで、本当にすばらしい作品だし、最近の「インパクト重視で記憶に残らない流行小説」に飽き飽きしている本好きに、ぜひおすすめしたいです。