- 作者: 斎藤美奈子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/02/08
- メディア: 文庫
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■内容紹介■ (文藝春秋のサイトより)
青春小説から貧乏小説まで9ジャンルに分け、それぞれの小説に登場する「商品」の描かれ方に着目。延べ70人82作品を読み解く
小説の面白さっていったいなに? 筋書きでしょうか、登場人物の描き方でしょうか。もちろんそれだって重要な要素ですが、それだけではないマルチなメディアなのが小説の魅力。そこで斎藤さんは、小説がモノをどう描いているかに着目しました。オートバイやホテル、料理など9分野を選び、川端康成から村上春樹までのべ70人、82作品を、商品情報を読み解くように小説を読んでみたのが今回の本のテーマ。「小説ってこんな面白い読み方もできるんだ」と目からウロコ間違いなしです。(KK)
僕にとっては、なかなか興味深い本だったのですが、この本は斎藤美奈子さんの「文学モノ」のなかでは、ちょっととっつきにくい印象がありました。ある程度の数の小説を読んでいる人、あるいは、自分で何か書いてみたことがある人にとっては、非常に「参考になる」本だと思うのですが。
僕が文章を書くときに、もっとも悩んでしまうのが、「ファッションに関する描写」なんですよね。僕はあまりファッションに興味が無いので、架空の登場人物の服装に全然イメージがわかないのです。女性の場合などはとくに。
でも、これを読んで最も痛切に感じたのは、プロの作家も、ファッション、食べ物から車、貧乏(!)まで、すべてを網羅している人はほとんどいないのだな、ということでした。渡辺淳一さんの大ベストセラー『失楽園』の
久木はセーターにジャケットを着て、上に黒のオーバーと臙脂のマフラーを巻いていた。凛子は黒のハイネックのセーターに同色のカルソンをはき、その上にワインレッドのハーフコートを着て、グレーの帽子をかぶっている。二人一緒に並んでいると、やはり夫婦というより愛人のように見られそうだが、それは凛子がどこか粋で、華やいでいるせいかもしれない。
久木は凛子とともに渋谷の部屋から出かけたが、ベージュのオープンシャツに、同色の濃いジャケットという軽装である。凛子は淡いピンクのスーツの襟元に花柄のスカーフをそえ、グレーの帽子をかぶって、手にやや大きめのバッグを持っている。
という「ファッション描写」を、斎藤さんは(1)服がダサい、(2)文章に愛想がない、と一刀両断されています。
でも、僕は「(1)に関しては、正直、これが「ダサい服装」なのかどうか、よくわからないんですよね。そもそも、カルソンって何?、クレソンなら知ってるけど……まあ、(2)はわかりますが、これも僕がファッションに興味がないため、素っ気無いことに違和感がないんですよ。たぶん、『失楽園』の読者には僕のような人間が多かったのではないかなあ。
やっぱり、このファッションって、「ダサい」の?ファッションに詳しい方、よかったら教えてください。
(ちなみに『失楽園』の単行本は、1997年発行)
勉強になりますし、川上弘美さんがおでん屋にこだわる理由もなんとなくわかるような気がしてくる本です。そして、多くの場合、読者はディテールではなくて、イメージを読んでいるだ、ということも実感できました。ただ、この本、自分にあまり興味がない物がテーマになっている章は、ちょっと読むのが辛いかもしれませんね。