琥珀色の戯言

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サウスバウンド(ひとり本屋大賞・9冊目)

サウス・バウンド

サウス・バウンド

【おもしろい小説、あります!】という自信たっぷりのオビの宣伝文句にいささかの不信感を覚えつつ、読んでみました「サウスバウンド」。しかし、「話題性」という意味では、「本屋大賞」の11作品のなかでも言っちゃ悪いけどかなり下のほうで、「ノミネート11冊を全部挙げてみて」と言われたときに、いちばん最後まで思い出せそうにない作品かもしれません。ちなみに、うちの近くの本屋で「本屋大賞ノミネート作品」がディスプレイされていたのですが、そこには10冊しか並べられてなくて、「あと一冊は何?」とさんざん悩んだあげく結局家に帰って調べたら「ベルカ、吠えないのか?」でした。
 で、脱線しまくりつつ、この「サウスバウンド」なのですが、けっこう厚い本ではありますし、いわゆる「子供が主人公の冒険小説」ということで、今回11冊全部読むと決めていなければ、僕が手に取る可能性は非常に低い本だったと思うのです。正直、最初のほうは、憂鬱な気持ちで読んでました。

 でも、「看板に偽りなし」ですよこの本。確かに面白かった。500ページオーバーという長さなんですけど、途中からは読み終えるのが惜しいくらいの気持ちになってしまうのです。
 この本、主人公の小学生・次郎と妹の桃子と島の善良の人々以外、登場する人物が、みんな僕にとっては「生理的に受けつけない人たち」なんですよ本当に。なんだか、読んでいて胃がムカムカするくらい、「こんなヤツが現実にいたらイヤだなあ」と思うような人たちばっかり。まあ、現実には「こんなヤツ」ばっかりいるのですけど。とくに、お父さんの「伝説の闘士」こと上原一郎氏なんて、読んでいて頭蓋骨の裏が痒くなってくるような「感じ悪い人」なのです。どちらかというと「体制側にしがみついて生きている人間」である僕にとっては、むしろ、彼に困惑させられる人々のほうに、はるかに共感してしまうんですよね。そりゃあ、あなたは強い人なのかもしれないけど、僕はつきあいきれねーよ、と。
 しかしながら、読み進めていくうちに、この「イヤなヤツばかりの世界」が、なんだか急に爽やかに感じられてきたのです。僕はもちろんこんな生き方はできませんが、そういう自分の中の「閉じ込めていた部分」を開放してくれるような気持ちよさが、この本にはあるのです。100%のハッピーエンドとはいえないところも、この作家らしくてかえっていい感じだし。
 それにしても「ああ、なんだかムカつくなあ!」と思いながら読んでいたにもかかわらず、こんなに楽しめる本というのは、なかなか無いような気がします。
 確かに「おもしろい小説」ですねこれは。

 ところで、「ひとり本屋大賞」なのですが、あと残りは「魔王」(これは今読んでいる途中)と、あの、そうあの「告白」を残すのみとなりました。しかし、3冊分くらいのパワーがありそうだものなあ、あの「告白」って。で、明日の夜が「本屋大賞」の発表らしいので、どうも僕の「ひとり本屋大賞」は間に合いそうにありません。でもまあ、とりあえず全部読んで、遅ればせながら順位をつけてみたいとは思っています。ああ、試験のサマリー作成さえなければ…って、それこそまさに「本末転倒」だろうという話なのですが……

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