※これは僕が個人的に行っている企画で、「本屋大賞」を運営されている方々とは、何の関係もありません。念のため。
参考リンク:「本屋大賞」公式サイト
「2014年本屋大賞」は、本日、4月8日に発表されます。
というわけで、今年も人の迷惑かえりみず、やってきました電線軍団!
もとい、「ひとり本屋大賞」!
僕が候補作全10作を読んで、「自分基準」でランキングするという企画です。
あくまでも「それぞれの作品に対する、僕の評価順」であって、「本屋大賞」での予想順位ではありません。
(「本屋大賞」の授賞予想は、このエントリの最後に書きました)
例年「苦労してやっているわりには、全く反響がない企画だったのですが、某所でそのことを愚痴ったところ、「読んでますよ」と声をかけてくださった方が何人かいらっしゃったので、懲りずに今年もやってみました。
では、まず10位から4位までを。
第10位 去年の冬、きみと別れ
- 作者: 中村文則
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/09/26
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
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↑の感想はこちら。
この作品って、ひとつひとつの「小道具」は、すごく魅力的なのです。
ところが、「この思わせぶりな小道具は、きっとこのミステリの根幹にかかわる、伏線なのだろうな」と思いながら読んでいると……あれ、もう終わり?
この魅力的な小道具たち、本当にただの「置物」だったとは……
第9位 昨夜のカレー、明日のパン
- 作者: 木皿泉
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/04/19
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
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ああ、西加奈子系だ……
すみません、僕はこのカタカナの「ギフ」のところで、「これは苦手な小説だ……」と感じてしまい、結局最後まで、あんまりこの物語の世界に入りこめないまま、読み終えてしまいました。
こういう、「定型的な不思議な人たち」による「善い話」の連鎖の箱庭世界みたいな小説って、どうも苦手で……
「義父」じゃダメなのかよ、「義父」じゃ。
第8位 ランチのアッコちゃん
- 作者: 柚木麻子
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2013/04/17
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
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まあ、それこそ『食堂かたつむり』とか『かもめ食堂』が好きな人は、たぶん好きになれるのではないでしょうか。
ああいう系統の「食べもの+ちょっと良い話小説」が苦手な人には、向いてないと思います。
第7位 聖なる怠け者の冒険
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2013/05/21
- メディア: 単行本
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↑の感想はこちら。
森見作品未読の方は、これから読むのはオススメできません。
『夜は短し歩けよ乙女』の文庫から入ってみたらいかがでしょうか、としか言いようがありませんし、そんなに面白くも目新しくもないので、「こういうのが『本屋大賞』に平然とノミネートされるから、海堂尊さんに『本屋大賞・神7』なんて揶揄されるのだろうな」という気はします。
どうしようもない駄作ではないけれども、少なくとも「今年の10冊」に入るような作品でもありません。
というか、「森見人気」でノミネートされたのでは……今年はこの作品の下位に3冊もあるのか……
第6位 島はぼくらと
- 作者: 辻村深月,五十嵐大介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/06/05
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
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↑の感想はこちら。
課題図書っぽいなあ、と思いながら読んでいたら、最後まで課題図書でした。
辻村深月さんだし、いつスケキヨが出てきて惨劇が起こるのかなあ……と期待していたんだけど。
第5位 とっぴんぱらりの風太郎
- 作者: 万城目学
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/09/28
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。かなり分厚い本だったので、僕はこちらで読みました。
- 作者: 万城目 学
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/12/20
- メディア: Kindle版
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時代劇らしい時代劇、というわけではないのだけれども、時代劇という形式を借りて、万城目さんが「いま、書きたいこと」をすべて書いた作品なのでしょう。
それだけに、このボリュームになってしまい、散漫になってしまっているところもあるのですが、「生きていることの手ごたえのなさ」を感じている人に、じっくり読んでいただきたい、そう思います。
ただもうやっぱりこれだけはあらためて言っておきたい。面白さのわりに、長いよ!!
第4位 さようなら、オレンジ
- 作者: 岩城けい
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/08/30
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: 岩城けい
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/12/19
- メディア: Kindle版
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サユリが「母語(=日本語)にもどっていくこと」も、サリマの「ちょっと恋愛っぽいエピソード」も、「取ってつけたような感じ」がするんですよ。
もっとも、これがあるから、「読後感がスッキリ!」みたいな面はあるのでしょうけど。
僕はこの小説の最後のほうを読みながら、「みんなが『いいひと』になるような感染症が、この世界では急激に蔓延したのか?」と思わずにはいられませんでした。
でも、今回の候補作のなかで、この作品には大きなアドバンテージがありました。
それは「短い」こと。
さあ、いよいよベスト3。
第3位 教場
- 作者: 長岡弘樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/06/19
- メディア: 単行本
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↑の感想はこちら。
この本の最大の魅力は「警察学校の日常」ではないかと思うのです。
「警察学校って、何を教えているんだ?」って、言われてみれば、ちょっと気になりますよね。
もちろん、射撃とか格闘技とかは教えていそうだけど……あとは一般教養?
この本には、そんな「警察学校のカリキュラム」の一部が描かれているのです。
ミステリとしては、そんなにたいしたトリックもないというか、どんでん返しもなく、連作短篇なので、最後に何か大きな背景みたいなものが浮かび上がってくると思っていたら……なんとなく終わってしまった感じですし。
ひとことで言うと、東野圭吾さんの『ガリレオ』シリーズの警察学校版。
第2位 村上海賊の娘
- 作者: 和田竜
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/10/22
- メディア: 単行本
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- 作者: 和田竜
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/10/22
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「史実に忠実で、地味な小説」だけが「歴史小説」じゃない。
歴史上の事件や戦いを舞台に、作家が想像を羽ばたかせて、読者を楽しませてもいいじゃないか、と思える読者にとっては、極上のエンターテインメントだと思うんですよ、この作品。
ありえない話、マンガのような登場人物を描きながら、これだけ読ませるものにしているのは、作者の「背景を描くことへの執念」の賜物です。
面白さでは、今回の『本屋大賞』の候補作のなかでも、ナンバーワンだと思います(もちろん、「面白さ」を指向している作品ばかりではないんですけど)。
第1位 想像ラジオ
- 作者: いとうせいこう
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/03/02
- メディア: ハードカバー
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Kindle版もあります。
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↑の感想はこちら。
「生きていること」に喜びとともに、ほんの少し後ろめたさを感じてしまうから(災害でもそう感じるのはおかしいのだけれど、おかしいからといって、打ち消せるようなものでもなくて)、かえって、「死者の声」「現場の声」に耳を傾けることに臆病になってしまう。でも、そうやって知ろうとせずに「わからなくなってしまう」からこそ、さらに「怖さ」や「不安」は増していく。
その断絶が、死者や現地の人々との「壁」をつくり、反発さえしてしまう。
これは、いま日本で起こっていること。
いやたぶん、人間が「死」を理解するようになってから、ずっとずっと続いてきたこと。
ただ、この小説に描かれているのは「絶望」だけではないのです。
DJアークの、リスナーや、家族とのやりとりを読んでいると、「それでも、人は生きている価値があるのかもしれない」という希望も感じるのです。
以上、2014年「ひとり本屋大賞」の発表でした。
実際の「本屋大賞」の順位とのギャップを、どうぞお楽しみに!
今年の「本屋大賞」、それぞれのコメントを読んでいただければわかると思うのですが、はっきり言って「なぜこれがノミネートされたんだ?」という作品ばかりでした。
単行本を定価で買うに値すると僕が感じたのは、『想像ラジオ』と『村上海賊の娘』だけです。
森見さんや万城目さんの作品は、「この作家としては、デキが良いとは思えないもの」が、作家への愛着からノミネートされたのではないかと疑ってしまいます。
あと、8位、9位とかもねえ。
書店員さん、こういう「食べものの良い話+日常感動系の連作短編小説」みたいなスイーツ本ばっかり読んでいて、飽きませんか?
もしや、『王様のブランチ』を視て、自分で読んでもない本に投票したり、してませんよね?
……というようなことを書きたくなるくらい、今年の『本屋大賞』は、不作でした。凶作、と言ってもいい。
去年は大豊作だったんだけどなあ。
あと、Kindleについて、去年の本屋大賞で、こんなことを書きました。
あと、今回はKindle版が出ているものは、それも紹介してみました(2013年4月8日の時点。見落としがあったらすみません)。
というか、Kindle版が出ていないのは、『きみはいい子』『ふくわらい』『ソロモンの偽証』『海賊とよばれた男』の4作。
「本屋大賞」にノミネートされるような作品は、けっこう電子書籍化されているのだなあ、と考えるべきか、「4作も『未電子書籍化』なのか……」と嘆息すべきなのか。
『ソロモンの偽証』とか、分厚い本が3冊にもなるので、「これこそ、電子書籍化すべきじゃないのか……」とボヤかずにはいられませんでした。
結局、今回のノミネート作は、すべて紙の本で読んだのですが、来年もしこの企画を継続するならば、半分くらいは電子書籍で読むことになると思います。便利なんですよ、というか、部屋にこれ以上、本が増えるとつらくなってきた。「物語の力」は、紙でもKindleでも、変わりないですし。
今年は、『教場』『聖なる怠け者の冒険』と『村上海賊の娘』の3作が、Kindle化されていませんでした(2014年4月8日現在)。
『とっぴんぱらりの風太郎』は、Kindleのおかげで全部読み切れた感じです。
『教場』『村上海賊の娘』は、なぜKindle化されていないのだろう?(そのうち出るとは思いますが)
著者の希望なんでしょうかね。
もしかしたら、「本屋大賞」で書店員さんに支持してもらうために、あえてKindle版は出さない(あるいは、『本屋大賞』発表後に出す)戦略なのだろうか。
『村上海賊の娘』とか、かなり分厚い本の上下刊なので、Kindle版があれば、かなり読むのラクだったんだけど。
そうそう、最後に僕の「順位予想」を書いておきます。
第3位:想像ラジオ
第2位:さようなら、オレンジ
第1位:教場
各所で『教場』の1位予想がなされており、僕も「映像化しやすそうだし、今年はこれを売ろうとするのだろうなあ」という気がしています。
作品としては「警察学校『ガリレオ』」なんですけどね、個人的には、ノーマークで読むと「意外と面白い」けど、期待しすぎると「なんでこんなに売れてるの?」って感じじゃないかな。