琥珀色の戯言

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【読書感想】世界を変えた10冊の本 ☆☆☆



Kindle版もあります。

世界を変えた10冊の本

世界を変えた10冊の本

内容紹介
「私たちは不安と混乱の中にいます。
こんなときだからこそ、活字の力を見直したい。
書物の力を再認識したいと思っています」(池上彰


アンネの日記』が中東問題に影響力を持つ理由とは?
日本人だけが知らない『聖書』の内容とその歴史
コーラン』から見えてくる穏やかなイスラム
禁欲主義が成功を導く?
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
資本論』は資本主義の欠陥を暴き、革命を招いた
アルカイダの教書『イスラーム原理主義の「道しるべ」』の中身
放射能、農薬……科学の落とし穴を告発していた『沈黙の春
種の起源』が招いた宗教VS科学の対立に悩まされるアメリカ
経済不況の処方箋となった『雇用・利子および貨幣の一般理論
『資本主義と自由』の価値観がリーマン・ショックを導いた


 「世界を変えた10冊の本」を、池上彰さんがチョイスすると、こんなラインナップになるのだなあ、と思いながら読みました。
 『聖書』や『コーラン』『資本論』『種の起源』あたりは、「誰が選んでも入りそうな本」なのですが、『神曲』や『ドン・キホーテ』などの小説や物語、中国の『孫子』や『論語』などではなく、現在の経済学に大きな影響を与えている、ケインズフリードマン、M.ウェーバーの著書が入っているのが特徴、といえそうです。
 そういえば、歴史に影響を与えた、という意味では『アンクル・トムの小屋』というのも、ひとつの選択肢だったのではないかなあ。

『聖書』には、『旧約聖書』と『新約聖書』の二種類があることは、ご存じでしょう。でも、『旧約聖書』の「旧約」を「旧訳」と勘違いしている人が意外に多いのですが、あなたは大丈夫でしょうか。
「旧訳」では古い翻訳という意味になってしまいますが、「旧訳」とは、「古い契約」という意味なのです。これは、キリスト教徒の側から見た言葉です。
 もともと『旧約聖書』とは、ユダヤ教徒聖典です。その後、イエス・キリストが誕生し、人間と神との間で新しい契約が結ばれたと考えるキリスト教徒が、イエス・キリストの言行などをまとめた福音書を編集して『新約聖書』(新しい契約の聖書)をつくります。それに対比して、それまでのユダヤ教徒聖典と『旧約聖書』(古い契約の聖書)と呼んだのです。ですから、ユダヤ教徒に対して『旧約聖書』という言い方をすると、嫌な顔をされることがあります。
旧約聖書』は、ユダヤ教徒キリスト教徒双方にとっての聖典ですが、『新約聖書』は、キリスト教徒独自の聖典です。どちらも、唯一の神によってこの世界が創造されたという「一神教」です。

 
 ただ、この本を実際に読んでみると、『聖書』や『コーラン』の回は、あまりにもこれらの本のボリュームや内容、影響を与えている範囲が大きすぎて、「表層をちょっと撫でたくらいの感じになってしまうんですよね。
 それはもう、しょうがないことではあるのですが。
 ですから、内容の概略をつかめたというか、「読んだような気分になれた」のは『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『雇用・利子および貨幣の一般理論』『資本主義と自由』といった、僕にとってはとっつきにくい経済学に関する本たちだったのです。
 正直、これらの本を実際に自分で読んでみるのは、時間的にも、能力的にも難しかったので、こうしておおまかなところだけでも教えてもらえると助かるな、と。
 目次でみたときには『聖書』や『コーラン』に比べると、なんか枝葉末節的な感じがするな、と思っていたのですが、いまの世の中を動かしている大きな要素が「経済」であることに、異論をはさむ人はいないはずです。
 にもかかわらず、それを専門に学んでいる人以外は「経済学の基本」をあまりに知らない。
 もちろん、僕もそうなんですけどね。
共産主義とは何か」「新自由主義とは、どんな考え方なのか?」
 そんな質問には答えられないのに「共産主義は人類に向いてないね」なんて、断言しながら生きているのです。

 景気が悪くなったら、政府が公共事業などで支出を増やして経済を活性化させる。金利を下げて、企業の投資を活発化させる。
 これらは、景気対策としての常識になっています。中学校の社会科で習う話です。しかし、かつては常識どころか「とんでもない話」と考えられていたこともあります。それを世の中の常識にしてしまった本。それが、今回取り上げるジョン・メイナード・ケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』という書物です。

 フリードマンの思想は「リバタリアニズム(自由至上主義)」と呼ばれます。この思想を持った人がリバタリアンです。
 その理念を一言で言えば、「人に迷惑をかけない限り、大人が好きなことができる社会」を目指すというものです。他人に危害を及ぼさない限り、何をやっても自由な社会こそが望ましい。麻薬だって合法化すれば、闇社会の儲け口がなくなり、犯罪は減少する。年金制度などの社会保障政策は、政府がやるべきものではなく、民間企業に任せた方が効率的である。
 政府を信じず、民間企業の活力に絶大な信頼を置く経済学者。それがフリードマンです。

20世紀の前半から、経済学というのは、このケインズの流れをくむ人たちと、フリードマンを支持する人たちがせめぎあってきたんですね。
結局のところは、どちらかが正しいというより、その時代の状況によって、かわりばんこに、どちらかが重視されてきたのです。


 この10冊のなかには『アンネの日記』も含まれています。
 最近、日本でこの本が相次いで破られるという事件が起こりました。
 この本の「影響力」について、池上さんはこう述べています。

 イスラエル建国に反対する周辺のアラブ諸国との度々の戦争を経て、イスラエルは、国連が採択した「ユダヤ人の国」の範囲を超え、パレスチナ全域を占領しました。
 これにアラブ諸国が反発し、中東問題は、こじれにこじれています。しかし、アラブ諸国以外の国際社会は、あまりイスラエルに対して強い態度をとろうとしません。ユダヤ人が、第二次世界大戦中、ナチスドイツによって600万人もの犠牲者を出したことを知っているからです。
 その象徴が、アンネ・フランクであり、彼女が残した『アンネの日記』です。『アンネの日記』を読んだ人たちは。ユダヤ人であることが理由で未来を絶たれた少女アンネの運命に涙します。『アンネの日記』を読んでしまうと、イスラエルという国家が、いかに国連決議に反した行動をとっても、強い態度に出にくくなってしまうのです。
 イスラエルが、いまも存続し、中東に確固たる地歩を築いているのは、『アンネの日記』という存在があるからだ、というのが私の見方です。

とはいえ、ひとりの少女の「日記」ですよ……と言いたいところなのですが、破損事件に対する欧米の反応や、イスラエル大使館が『アンネ・フランク関連書籍』の寄贈をすぐに申し出てくれたことを考えると、イスラエルにとって『アンネの日記』は、「単なる日記にとどまるものではない」のですよね、やっぱり。


ちょっと「お堅い感じの紹介本」ではあるのですが、「あらすじだけでも、知っておいて損はしない10冊」であることは間違いありませんよ。

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