琥珀色の戯言

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【読書感想】1日ひとつだけ、強くなる。 ☆☆☆☆



Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
「目標は低いほどいい」「勝負に感情はいらない」「技術より“視点”が大事」17歳で世界一、34歳の今も勝ち続ける著者が語る勝敗を分けるポイント。


サブタイトルは「世界一プロ・ゲーマーの勝ち続ける64の流儀」。
プロゲーマー・梅原大吾さんが「勝負に勝ち続けるために、何をやってきたか」を書いている本なのですが、今回は梅原さんの「仕事」である、ゲームの世界で経験したことが時系列で語られるいるため、抽象化された理論よりも「伝わってくる」ものになっています。


この本のなかで梅原さんが書いているのは、「勝つこと」ではなく、「勝ち続けること」なのです。
このふたつは、似て非なるもの。
それどころか、「目先の勝ちにこだわること」と「勝ち続けること」が相反する場合も少なくありません。

 一度きりの「勝ち」が欲しいのなら運や要領で実現できますが、何度でも勝ち続ける「強さ」を手に入れるには、やはりそれなりのやり方が必要になります。
 昨日よりも今日、今日より明日、ひとつずつでいいので変わり続けること。大きな成果や成長であっても、煎じつめればそれは小さな小さな成長の集合といえます。だからひとつずつで構わない。それが自分の考える「強さ」への近道でもあり、ゲームや勝負に対する取り組み方、信条でもあるのです。


 梅原さんは、「対戦格闘ゲーム」をやりながら、「ただ、相手に勝てばいい」のではなく、「自分自身の成長」を、常に意識しているのです。
 そして、常に「自分自身をコントロールすること」に集中している。

 僕は腹が立ったり納得がいかなかったりするときは「自然現象だ」と思うようにしている。あいつが言っていることはおかしい。あいつがラクをしている。あいつがズルをしている。「あいつ」が向こうにいると腹が立ってくる。
 相手が人間だからそういう気持ちになる。自然現象に対しては腹が立たない。というよりも腹が立てられない。
 たとえば雨が降って外出できなくなったとき、残念だとは思うかもしれない。しかし、腹を立てて「チキショウ、どうなっているんだ」とはならない。自然のことだから仕方がないのだ。
 結局、自分が思うように他人が動いてくれないから腹を立てるようなところがある。どこかに他人をコントロールしたいという気持ちがあるのだろう。


 『宇宙飛行士に学ぶ心の鍛え方』という著書のなかで、宇宙飛行士の古川聡さんが、「ストレスに対応するための考え方のひとつ」として、こう書いておられました。

 しかし、成果が見えない中で続けるというストレスに耐えるのは、簡単なことではありません。宇宙飛行士の訓練ではストレスに耐えられるかどうかというよりも、仕事でそれを使うわけですから、そこは割り切ってやるしかありません。そうではない方は、どうすればよいか。


 単純に言えば、「割り切る」そして「できることをやる」の2点です。元プロ野球選手の松井秀喜さんは、「自分にコントロールできること、できないことに分けて考え、できないことに関心を持たない」そうです。私も「自分がコントロールできないことを心配しても仕方ない。自分にコントロールできること、自分にできることをやればいいんだ」と思います。


 梅原さんも、同じことを考えているのだなあ、と。
 「自分にできることをやる」のと、「自分にできないことは諦める」。
 というか、あらためて考えてみると、僕の人生において、「自分の力ではどうしようもないことを、あれこれ悩んでしまっている」のが、なんと多いことか!


 梅原さんは、プロとして、「偶然や好調の産物として、ひとつ勝つ」というのではなくて、コンスタントに結果を残し続けることを自分に課しています。
 そのために必要なのは、「感情のコントロール」であり、「劣勢に陥ったときに、どうふるまうか」なのです。

 勝負で一番強いのは「相撃ちでもいい」という状況だ。人数で勝っていれば、相撃ちを繰り返すことでそのまま勝つことができる。僕も、自分がリードしているときは固く、相撃ちで進めることを考える。
 リードされて自分の兵士が30人しかいないというのは、それが絶対に許されない状況だ。一方、相手にはそれができる。これは大きく不利で、負けて当然だと言ってもいい。相手にはまだ100人の兵士がいるのに、こちらは30人になっている。この不利は、客観的に考えてどうにかなるような差ではない。
 それほどの不利を背負うと、人はどうなるか。多くのプレイヤーが自分の兵士が30人になると、感情的に全軍突撃を仕掛けてしまう。バクチでも、負けが込んでくるとヤケになって大枚を賭けてしまう人がいる。あれと同じだ。
「どうせこのまま普通に戦っても、滅亡は必至。ならば城を枕に討ち死にしよう」といった感じなのだろう。気持ちはわかる。しかし、本気で勝つ気持ちが遺っているならやめたほうがいい。言葉は悪いが、ほぼ犬死にになる。
 そうは言っても、それで勝つことがないわけではないのが曲者だ。成功する確率は非常に低いけど、ごくまれに勝ってしまう。だからだろう「ゼロでないなら、やらないよりマシ」という感覚になってしまう。
「でも態勢を整えたって結局は負けてしまうことが多いんでしょ? だったらやっぱり突撃のほうがいい」と思う人もいるだろう。そういう人はどちらのやり方が逆転の可能性が高いかを、実際に経験することで実感してほしい。態勢を整えてから戦うほうが、はるかに逆転する率は高いはずだ。


 こういうのって、頭ではわかっているし、実際にそういう窮地に陥るまでは、「そのつもり」でいる人も多いはず。
 でも、本当に負けそうな状況になってしまったとき、この「一発逆転狙いの突撃」の誘惑に抗うのは、けっこう難しいのです。
 頭に血がのぼっている状態だと、ね。
「負けている状況での撤退」や「追撃を受けても、一呼吸入れて態勢を立て直してから反撃する」ことができる人は、本当に少ない。
 で、勝負が終わったあと、「なんで自分はあそこであんなに突っ張って被害を大きくしてしまったのだろう……」と後悔してしまう。
 この梅原さんの話、熱くなりやすい人は、常日頃から肝に銘じておくべきでしょう。
 もちろん、僕自身にも言い聞かせるようにします。


 梅原さんは、この本のなかで、「自分を成長させ続けるためのコツ」について、こんな話をされています。

 小さな気づきを見逃さずに意識できるようにする。それは成長に対する感受性を上げるということでもあるけれど、これにはコツがある。
 大切なのはハードルを下げること。僕がやっているメモを例にとると「1日1個」という成果を自分の中でルールを決める。1日1個であれば続けやすい。ところが、やがて物足りなくなり、ついついハードルを上げてしまう。だから、思っているより簡単なことではない。
 成長することが難しい時期でもなければ、よく目を凝らすと小さな発見が2つ3つとあることも多い。しかし、欲張って2つ3つと増やしてしまうと、発見がひとつしかなかったときに、小さいとはいえ挫折感を味わうことになる。
 

 ハードルを下げろと言うと「こんな低いハードルを越えても結局自己満足だし、誰も評価してくれないから自信なんか持てないよ」という人もいるだろう。
 そのような感じ方は環境によって作られた、一種の癖のようなものではないだろうか。周囲の環境がどうであれ、たとえわずかでも昨日の自分より前進があるのなら、その事実を肯定することをためらう理由はないように思う。
 小さな成果は、誰も評価してくれない。だから、自分のやっていることは誰よりも自分が評価しなくてはならない。
 これは他者の評価を聞かなくてもいい、ということではない。あくまで軸は自分の内に置くということにポイントがある。


 ハードルを上げすぎたり、評価を外部に委ねたりすると、長い間続けていくのは難しい、ということなんですね。
 そして、どんなに低いハードルでも、着実に越えていけば、その積み重ねは、大きな差になっていく。


 梅原さんは、最後に、こう仰っています。

 勝ち続けるためのひとつの鍵があるとしたら、それは自立心のようなことかもしれない。自分の内側にある基準で物事を判断し、その判断の責任を負う。いずれの考えも、そんな共通点を持っている。


 答えは、つねに自分の側にある。
 これを読んだときには「その気」になれても、それを自分のものにするのは難しいのだけれども。
 とりあえず、宇宙飛行士とプロ野球の名選手と世界一のプロゲーマーが同じようなことを言っているのだから、聞いてみて、損はしないと思います。


ウメハラ FIGHTING GAMERS! (1) (角川コミックス・エース 488-1)

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