琥珀色の戯言

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【読書感想】岡村靖幸 結婚への道 ☆☆☆☆


岡村靖幸 結婚への道

岡村靖幸 結婚への道

内容紹介
いつもファッション誌を逸脱しそうなファッション誌「GINZA」で連載中の大人気対談「岡村靖幸 結婚への道」が、ついに書籍になります。「結婚したい、けどどうしたら理想の相手に巡り会えるのか? 結婚したら愛は冷める? 育児ってやっぱり大変?」。「結婚」という大きなステージの前で逡巡しながら、21世紀の青春を悩み謳歌するミュージシャン・岡村靖幸。作家、ミュージ シャン、女優…尊敬する先輩、同輩たちに「実際のところ、結婚ってどんなものなんでしょう? 」と率直な疑問をぶつけます。坂本龍一横尾忠則糸井重里藤井フミヤ内田也哉子吉本ばなな…まっすぐでピュアな岡村ちゃんにだけ語っ てくれた、驚くべき「結婚の真実」。豪華ゲスト30人まとめて収録!
緻密なリサーチ(! )をベースに阿川佐和子さんもびっくりの、粘り強く、率直&素っ頓狂な質問の連続 に、「そこまで言って大丈夫ですか?」とこちらが聞きたくなる、本音と秘蔵エピソードが満載の約300ページ。 「結婚」への見方が大きく変わる、揺さぶられること間違いなし。結婚してる人も、してない人も、してた人、しようとしてる人も全国民必読(!?)の結婚バイブルが誕生しました!


 11月22日、『いい夫婦の日』ということで。
 書店で、この岡村さんの「結婚」に関する本を偶然見かけたのですが、「えっ、結婚ネタに岡村靖幸岡村隆史じゃなくて?」と、思わず手に取ってしまいました。
 ああ、確かに靖幸さんのほうだ。こちらの岡村さんって、なんか「結婚」というイメージとは、程遠い感じなのに。

 「結婚への道」の連載が始まった当初、まずは、世の中の結婚事情を調査することから始めてみた。僕の結婚運を占ってもらったり、結婚相談所へ足を運んでみたり、男性が通う料理教室へ行ってみたり、男性のためのエステを体験してみたり、婚活に励む20代30代の女性たちの話を聞いたりもした。
 結果、多くの人にとって、「結婚」と「安定」は同義である、ということがなんとなくわかってきた。しかし、「恋愛感情」と「安定」は、アンビバレントなものではないだろうか。ゆえに、人は、「恋愛と結婚は違う」とも言う。あなたを愛し抜きたい、その結果として結婚がある、そう考えていた僕は、だんだん混乱してきてしまった。わからない。やっぱり僕には、結婚が何かがわからない。


 岡村靖幸さんは、「けっこう普通の結婚願望」を持っているみたいです。
 インタビュアーとしても、ちゃんと相手のこれまでの結婚に対する発言をリサーチし、著書を事前に読んでおくなど、「吉田豪みたいだ……」と感心してしまうくらいの仕事っぷりです。
 「岡村ちゃん」も、1965年生まれの50歳か……
 一般人だったら、婚活市場でもう「年齢による足切り」されてしまうでしょうけど、やっぱりモテるのか、このくらいの年齢でも「どんな相手でもいいから、とにかく結婚したい!」というような切迫感はなさそうです。
 でも、「年齢の壁」みたいなものも無視できなくなっている。
 だからこそ、この対談も面白いのです。
 どうみてもムリ、みたいな人だと、対談というより悩み相談になってしまうし。
 そういう意味では「別世界の結婚願望」でもあるのだけど。


 この対談、32人の対談相手が、ものすごく豪華なんです。
 坂本龍一横尾忠則糸井重里藤井フミヤ内田也哉子松尾スズキ、田村淳、堀江貴文……(敬称略)
 「大物」たちが、岡村さん自身との思い出も交じながら、「結婚経験」や「結婚に対する現在の考え」を語っていくのです。
 みんなすごく良いことを言っているのだけれど、答えは、千差万別で。
 出てくる人のなかには、離婚経験者も多いのです。
 「お互いに高めあえる、理想の関係」を目指す夫婦は多いけれど、現実には、なかなかうまくいかない。


 この本、装丁はすごくポップなのですが、なんというか「結婚」に限らず、「人間関係」についての大切な言葉が、たくさん詰まっています。


 内田也哉子さんの回より。

岡村靖幸でも、お母さん(樹木希林さん)は離婚しませんよね。法律上の夫婦をずっと続けていらっしゃる。


内田也哉子父(内田裕也)に裁判まで起こされたのにハンコを押さなかったんです。そこは私も最大のミステリー(笑)。しかも、それが世間で言われるような妻としての意地とか、夫への仕返しや意地悪であるとか、そういうことではまったくないんです。これは私の想像でしかないけれど、母は究極のロマンチストなんじゃないかと思うんです。そして、性がない。ある意味、中性的な人で、男女のことを俯瞰して見ているというか。すごく若い頃から哲学書や宗教書などを読みあさり、いわゆる「欲」を超えたところへ行くことは、彼女自身が望んでいたことだったと思うんです。


岡村:それは裕也さんとの結婚生活がそうさせたんでしょうか?


内田:いえ、そういう境地に至ったのは父に出会う前だったのかもしれません。実は母は2回結婚しているんです。最初の結婚相手はとてもいい人だったんです。すごくやさしくて、何の不自由もない人。でも、「これ以上の閉塞感はない」と母は思ったと言うんです。穏やかで平和でこれ以上にない幸せな結婚生活が「絶望に思えてしまった」と。


岡村:平和でいることが絶望だと。


内田:そうなんです。で、その人とは別れ、結婚に興味を持つこともなくなっていたところへ、父というめちゃくちゃな男性が現れた。「この人と一緒になれば、絶望を忘れるぐらい紛らわしてくれるだろう」と思ったそうなんです。いまだに紛らわされていると思いますけど(笑)。


「なぜ?」というのと、「人間って、厄介な生き物だよな」というのと。
この樹木希林さんの気持ち、なんとなくわかるような気がするのです。
そういう「閉塞感」みたいな理由で、浮気をしてしまうケースも、あるのではなかろうか。
ただ、内田裕也樹木希林夫妻ほど波瀾万丈であるにもかかわらず、結婚生活を続けている事例は、珍しそうです。
それにしても、なぜ自分の人生をめんどくさくするほうに、人間は向かってしまうのか。
傍からみれば、「いい人との結婚生活のほうが良さそう」なのに。


 そして、藤井フミヤさんのこんな言葉も。

岡村:結婚したら、他の女性と仲良くしたらダメなものですか?


藤井:それは結婚した相手の女性によるよね。すっごくヤキモチを妬く子はダメだろうけど。


岡村:フミヤさんの奥さんは?


藤井:ヤキモチは妬くけど、放し飼い。でも、浮気なんてしようもんならってところはキッチリ押さえられてる(笑)。要はさじ加減ですよ。僕、女の子にいつも言うんだけど、「男にずっと鎖をつけたら、鎖の届く範囲のモンしか獲ってこないよ。放し飼いにしてないといいモン獲ってこないから。でも、放し飼いにしていても、必ず戻ってくるように仕込むのは女だからね」って。


岡村:さすが、名言!


 僕も、もし生まれ変わって、藤井フミヤになれたら、こんなこと言ってみたい!
 放し飼いにされても、たいしたもの獲ってこないけど。


 漫画家・東村アキコさんの回では、こんなやりとりがありました。

岡村:でも、ご主人は、「子どもの面倒は全部僕が見るから」ってプロポーズなさったんでしょ。


東村:よくご存じで!


岡村:僕、インタビュー前にものすごく下調べをするんですよ。


東村:調査された通り(笑)、「育児と家事を全部やるから結婚して」って言われて、「よし登用!」って。


岡村:大恋愛の末に結婚した、ということではないんですね。


東村:結婚って、「条件が合うか合わないか」だと思うんです。結婚後もいまと同じペースで仕事ができるんか、食事はどっちが作るのか、掃除は? 洗濯は? 子どもの面倒は? 結局、そこが合わないと一緒に暮らしてもうまくいかなんです。1回目は、恋に落ちてそのまま盛り上がって結婚してしまったんです。自分たちが映画の主人公みたいになっちゃって。完全に『トゥルー・ロマンス』(93年)症候群。ふたりでいれば無敵っていう錯覚に陥って結婚したから。2回目は、冷静に結婚後の生活スタイルを合わせられるかどうかを事前に聞いて、それが噛み合うのならと決断したんですけど。


岡村:恋だの愛だのではなくて。


東村:でもね、やっぱり恋だの愛だのも必要だなって。そこが若干欠けてたかなって。反省してます。


 同性婚も含めた「制度としての結婚」に異議を唱える人がいれば、「それでも、結婚は良いものだ、チャンスがあるのなら、やってみるべきだ」とアドバイスする人もいる。
 けっこうベッタリしている夫婦がいれば、「程よい距離感」をキープすることによって、関係を維持している夫婦もいる。
 本当に「夫婦の関係」というのはそれぞれで、どんなに凄い人でも、うまくいかないときは、うまくいかなんですよね。
 先ほどの樹木希林さんの例なんて、「いい人」だった最初の夫としては、「じゃあオレは、どうすればよかったんだ……」って言いたかったはず。
 相性、とは言うけれど、長年の関係のなかで、お互いに変わっていくこともある。
 

「いろいろ波風が立つほうが、むしろ普通」なんですよね。
 3組に1組が、離婚する世の中だし。
 でも、僕の周りには「離婚経験がある」っていう人はそんなにいないので、まだ、そういうのをオープンにしにくい社会、でもあるのだよなあ。


 今年は日曜日と11月22日が重なったので、本日結婚式をあげたり、入籍されるカップルも多いのではないかと思います。
 皆様が、自分たちなりの「いい夫婦」のありかたを見つけ、幸せな時間のほうを長く過ごされますよう、僕も願っております。

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