琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

ALWAYS 続・三丁目の夕日 ☆☆☆☆


『ALWAYS 続・三丁目の夕日』公式サイト

解説: 日本アカデミー賞ほか数多くの映画賞を総ナメにした感動の大ヒット作『ALWAYS 三丁目の夕日』の続編。前作終了から4か月後、昭和34年に春の夕日町三丁目に住む人々の姿を描く。パワーアップしたVFX技術により東京駅、羽田空港日本橋、また当時開通した、こだまもリアルに再現。情緒あふれる風情で物語を引き立てる。キャストは前作に引き続き吉岡秀隆堤真一小雪堀北真希ら豪華な面々が勢ぞろいする。VFX技術と俳優の熱演が融合し、あらゆる世代が共感できる感動のドラマに仕上がっている。(シネマトゥデイ

あらすじ: 昭和34年、東京オリンピックの開催が決定し、日本では高度経済成長期が始まろうとしていた。黙って去ったヒロミ(小雪)を思い続けながら淳之介(須賀健太)と暮らす茶川(吉岡秀隆)のもとに、実父が再び淳之介を連れ戻しに来た。(シネマトゥデイ

いやほんと、いい映画でしたよこれ。僕は前作より面白いんじゃないかと思いました。冒頭のシーンだけでも「遊び」のためにあれだけのことをやってしまうのだから凄い。今年僕が観た日本映画のなかでは、映画としてのスケールといい、「巧さ」といい、頭一つ抜けていたような気がします。またいろんな賞を獲りまくりそう。内容的には、いくら昭和30年代の人だって、そんな稚拙な手にそう簡単には騙されないだろうよ、とか、芥川賞ってここまで当時は盛り上がってたの?とか、淳之介はいじらしいを通りこしてちょっと気持ち悪くないか?とか、いろいろ細かいところはあるのですけど、「観ておいてよかった映画」であることは間違いありません。昭和40年代生まれの僕は、VFXで再現された東京の街並みに懐かしさを感じることはなかったのですが、そういえば僕の父親は高いところが大の苦手だったんだよなあ、とか思いながらちょっとしんみりしてしまいました。考えてみれば、当時の人は高いところに上るという経験そのものがそんなになかったわけで、苦手なのも道理だよねえ。
内田樹先生が「自分たちは『ビートルズ世代』と呼ばれているけれども、リアルタイムでビートルズに興味を持っていたのは、高校の同じ学年で10人くらいしかいなかった」と書かれていたのですが、確かに、「こんな昭和30年代」を実際に過ごしていた人はあまりいなかったのだろうとは思います。しかしながら、多くの観客は、この映画に「こうであってほしかった昭和30年代」を投影し、「あの頃は良かった」と懐かしむ。揚げ足とってしまえば、僕はあんな「子供らしい子供」じゃなかったし、鈴木オートは当時としてはかなり「上流階級」だったと思われますし、風俗で働いている人たちへの「偏見」に関しては、現在のほうがはるかに「改善」されているんですけどね。しかし、劇中とはいえ、あの茶川の小説はなんとかならなかったのか?

でも、このくらいしか悪口を思いつかないほど「すごくいい映画」ですよこれは。あまりに良くできすぎていて嫌になっちゃうくらいです。ちゃんと笑えるところと泣かせるところは押さえてあるし(まあ、本当に「ポイントを押さえている」というのが観客にも伝わってくるのはどうかとは思うんだけど)、僕自身はリアルタイムで観たことがないような「昭和30年代の東京」が、こんなに懐かしく感じられるのはなぜなんだろう? 今回は、薬師丸ひろ子さんと堀北真希さんがかなり良かったのですが、あの『セーラー服と機関銃』の薬師丸さんに憧れていた僕としては、こんなにお母さん役がハマるようになってしまったというのは、少しせつなかったです。

ところで、淳之介、あれで本当に「幸せ」なのかなあ……

アクセスカウンター