琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

テンペスト ☆☆☆☆


テンペスト  上 若夏の巻

テンペスト 上 若夏の巻

テンペスト 下 花風の巻

テンペスト 下 花風の巻

あらすじ
誰よりも聡明な少女・真鶴は、女であるというだけで学問を修められないことを不公平に思っていた。跡継ぎと目されていた兄の失踪を機に、宦官・孫寧温と名乗り、性を偽って生きていくことを誓う。
科試に合格した寧温は、王府の役人として、降りかかる難題を次々と解決し、最速の出世を遂げていくが……

「ひとり本屋大賞」8冊目。
ようやく読み終わりました『テンペスト』。今回の本屋大賞最大の問題作(笑)!
「読み終えた」というより「ついにクリアした……」という気分です。
今年の「本屋大賞」は、ただでさえ厚い本が多いんだけど、『テンペスト』は「厚い、二段組、さらに上下巻!」という「超大作」。
僕は『のぼうの城』を読みながら、「これは『戦国ライトノベル』だ……」と思ったのですが、これは『琉球ライトノベル』です。
実はこの本、「本屋大賞」の候補になる前に、書店で購入して積んでたんですよね。
話題になっていたのと、オビの推薦文が御大・筒井康隆先生(僕にとっては「小説の面白さを教えてくれた人」なので)と北方謙三さんという組み合わせだったので、「これはハズレってことはないだろう」と。
でも、7冊目の『出星前夜』の感想を書いたのが2月17日で、今日が3月10日。
内容はライトなんだけど、長い、とにかく長い。ツッコミどころ満載。
作者が思いつく限りの「人が陥れられる理由」をてんこもりにしたという、「歴史ジョッキーズロード(そういう「競馬関係のエピソードをやたら詰め込みまくった騎手ゲームがX-BOXにあったんです)」みたいな小説です。
読んでいくうちに慣れてきて、これは「真鶴(=宦官・孫寧温)がいくらうまく男装しても、そんなの誰かすぐ見破るだろ!」と突っ込みを入れて憤るのではなくて、作者と一緒に「そんなことあるわけないけど面白いや」と登場人物のあわてっぷりを眺めてニヤニヤする小説なのではないかということがわかってきます。
時計塔の上から飛び降りても死なないのは、「彼がルパン3世だから」。
途中の真鶴と孫寧温がくるくると入れ替わるシーンとか真美那関連などは、明らかに「遊んで」ますしね。
これを「不真面目だ!」と怒るような読者は、たぶん、この小説には向かないのでしょう。
舞台設定や背景が「それらしい」だけに、こういう「キャラクターへの違和感」をある程度許容できるかどうかが、この作品を最後まで読めるかどうかの分岐点になるのではないかと。

正直、最初は何度も読むのをやめようかと思いました。
これを読むくらいなら、『蒼穹の昴』をもう一度読み返したほうが、はるかに有意義なのではないか、と(いや、いまでもそう思うけど)。
でもね、なんかこう、「こういう夢物語」だと思って読めば、けっこう面白いんだよなあ。
作者はキャラクターでは遊んでいるけれど、物語の根底にある「歴史観」とか「知識を求め、世界を変えようとする人々の心意気」みたいなのはけっこう「熱い」。
どんな人間でも、歴史という大きな波の前では無力なのか、というようなことも考えずにはいられませんでした。
最後のほうは、「ええっ、このキャラクター、なんでこんなふうに急に変わっちゃうの?」という場面がいくつかあって、それはかなり引っかかったのですが、それでも、大部分の伏線をそれなりに回収しながら、おさまりのいいところにスッと落とすというのは、なかなか難しいはず。

いや、なんというか、「せっかくこの長いのを最後まで読んだのだから、それなりに良い作品だったということにしたい」という、ロシア文学を読んだあとのような気持ちになる小説ではありますが、「歴史小説が好き」で、「歴史小説に嘘が書いてあってもいちいち気にしない」人であれば(狭いストライクゾーンだな……でもこの本15万部売れてるらしい……)、「読んでみてもいい」かもしれません。
でも、購入する前に、上巻の真ん中くらいを何ページかパラパラめくってみたほうがいいですよ。
これ、「万人向け」みたいな売りかたをされているけど、「生理的に受けつけない」人もけっこう多い小説だと思うから。

参考リンク:『テンペスト』
↑小説なのにこんなに立派な「公式サイト」があるんですよこの『テンペスト』。ちょっと驚いた。

アクセスカウンター