モンキービジネス 2009 Spring vol.5 対話号
- 作者: 柴田元幸
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2009/04/20
- メディア: 単行本
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内容紹介
「対話号」巻頭3大企画1村上春樹インタビュー75ページ一挙掲載!
聞き手―古川日出男
とにかく巻頭の「村上春樹インタビュー」が圧巻でした。
聞き手が古川日出男さんというのも豪華だし、村上さんもかなりリラックスしながら「先輩作家」として率直な気持ちを語っておられるように感じました。
ずっと続けてきた「僕」という一人称から、三人称を意識し、移行していくプロセスの話とか、日頃の執筆スタイルとか、「文壇嫌い」とされてきた理由とか……
文学的な面、技術的な面から、作家としての日常まで、かなり突っ込んだ話をされた、貴重なインタビューだと思います。
『アンダーグラウンド』を書いた理由、そして、『アンダーグラウンド』から、作家・村上春樹が得たものについて語られている部分も非常に興味深かったし。僕もずっと、「なぜ、村上春樹はあの時期に、突然ああいうノンフィクションを書いたのだろう?」と不思議に感じていたので。
そして、このインタビューで最も印象的だったのは、村上さんの「熱さ」でした。
作品やエッセイ、ネットでの読者からの質問に答える村上さんというのは、いつも冷静で、どこか自分自身をも突き放しているように見えるのですが、このインタビューのなかで、古川日出男さんの「表現者というのは、書いていくうちに満足してきて、小説というものや作家に対するリスペクトを失ってしまうことが多いのではないか?」という問いに、こんなふうに答えておられます。
村上春樹:欲はあるべきなんです。恥ずかしいことじゃない。せっかくここまで来たんだから、もっと突っ込んでやりたいという気持ちは持って当然です。だって、普通の人がなりたいと思っても、そうそう簡単に小説家になれるわけじゃないんだもの。せっかくプロとしてものを書ける状況にあるんだから、あらゆる力を振り絞って書かないと、それは人生に対する冒涜だろうと僕は思う。
村上さんの「小説」に対する情熱は、年を重ねるにつれて、むしろ高まってきているようにすら思えます。
これは小説を書くことに限らない話ですし、これを読んで、僕はあれこれ言い訳をして、自分の人生を冒涜しているのではないか、と考えさせられました。
『1Q84』を読む前に、ぜひ読んでみていただきたいインタビューです(収録は2008年12月で、『1Q84』の内容のネタバレは一切ありません)。
楽しみにしていた小川洋子さんと川上弘美さんのインタビューは、僕にとってはどうもしっくりこなくてちょっと残念だったのですが、ファンにとっては、村上さんのインタビューだけでもお値段分の価値はあるかと。
あと、柴田元幸さんが翻訳されていたジョージ・オーウェルの『象を撃つ』も興味深い作品でした。