琥珀色の戯言

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【読書感想】私のいない高校 ☆☆☆


私のいない高校

私のいない高校

内容(「BOOK」データベースより)
カナダからの留学生(でも英語が苦手)を受け入れた、とある高校での数ヵ月―。描かれるのは至ってフツウの学園生活のはずなのに、何かが、ヘン…。“物語”の概念を覆す、本邦初「主人公のいない」青春小説。


この本、飛行機のなかでずっと読んでいたのですが、読みながら、なんだかとても不思議な感じがしていました。
「小説」というより、何かの報告書を読んでいるような、そんな気分。
よくここまで高校生活、とくに高校の先生の行動を調べたなあ、と感心しながらも、正直、「ワクワクするような読書体験」とは言い難かったのです。
「で、この小説、どのへんから物語が動きはじめるのかな……」とか、「もしかしたら、最後の数行で大どんでん返しが起こる、『壮大な叙述トリックのミステリ小説』なのか?」とか。


まあ、ネタバレしちゃうと面白くないと思うので、結果的にどうだったかは書きませんが、「起伏のあるストーリーの小説が好きな人」「エンターテインメント性を重視する人」には向かないと思いす。
僕も、最初は「まだ物語がはじまらないのか?」とジリジリして、最後は「えっ、もうページほとんど残ってないんだけど、何なんだこれ?」と驚いてしまいました。

 萩市内午前、手分けして見回りに出ていた教員は、昼に土産物屋の二階に戻ってそこで軽食となった。休憩所での折り詰め弁当は前日に続いてやや味気ないものだったが、せめて教員分だけでもこの場で注文することで店への義理を果たそうという面もなくはなかった。
 ここでそれぞれ外での様子を報告し合ううち、担任は他二人に比べてずっと狭いエリアを移動していたことが分かった。多数の見所が話題に上り、聞くとだいぶ方々を回った様子が窺えるものの、小田先生も戸部先生も出会う生徒の少なさを不思議がっていた。生徒の立ち寄り先はそれほど多くはないはずだった。小田先生はカブで散々走り回った挙げ句、松陰神社松下村塾でようやく数名の生徒を捕まえていた。一方の戸部先生は、桂太郎旧宅旧宅だったか旧湯川家屋敷だったか、藍場川沿いの日本家屋で係員から「つい今し方セーラー服のおにんぎょさんらがおいでなした――」などと教えられたのだったが、周辺では生きも帰りも、ついに一人の生徒の姿も確認することができなかった。


ある意味「前衛的」というか、「業務日誌を盗み読みするような気分」がずっと続いていくんだよなあ。
円城塔さんの『道化師の蝶』が、「何が書いてあるのか理解しがたい」という「前衛的」だとすれば、こちらは、「何が書いてあるかはわかるけれど、なぜ書かれているのかがわからない」という「斬新さ」。
ところどころに、「これがストーリー進展のきっかけか?」と思うようなイベントの芽が出てくるのですが、それがちょっと目を出しては枯れ、の繰り返し。
そういうのが「当たり前」なんだろうけど、読んでいる側の「肩すかし感」は、非常に大きいのです。


でも、たしかに「なんだか新鮮な読書体験」ではありますね。
読んでいると、なんだか自分が「神様」になったような気がしてきます。
タイトルの「『私』のいない高校」の意味は、なんとなくわかったような気がするのですが、もしかしたら、何か「隠し要素」があるのだろうか……

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