極めよ、ソフテツ道!―素顔になれる鉄道旅 (IKKI BOOKS)
- 作者: 村井美樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/07
- メディア: 単行本
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内容説明
美才女優による濃いめな鉄道旅のススメ。
「鉄道で旅すれば、私はいつでも“素顔”になれる――」
人気クイズ番組「Qさま!!」にレギュラー出演、漢検一級合格の知性を誇る美才女優・村井美樹。仕事で疲れた彼女のリラックス法は、“少々ディープな”鉄道旅。
「無人駅、写真、単線、睡魔、猫、花、青空、こけし、列車を待つ時間……」
実録漫画『新・鉄子の旅』の取材で、プライベートで、旅先でのさまざまな思い、出来事を“素顔”のままにつづった、癒やしのヒント満載・自身初の鉄道旅スナップ&エッセイ!
漫画『新・鉄子の旅』と連動した人気旅ブログが、オールカラーでついに単行本化!
■主な旅先/千葉県・久留里線、福島県・野岩鉄道&会津鉄道、宮城県・鳴子温泉駅、北海道・網走本線トロッコ列車、京都府・叡山電鉄、東京都・都電荒川線、埼玉県・秩父鉄道…and more!
率直に言うと、『鉄子の旅』にも村井美樹さんにも興味がない、という人には、全くオススメしようがない一冊ではあります。
僕はどちらもけっこう好きなので、けっこう楽しめたんですけどね。
(と言いつつ、『新・鉄子の旅』になってからは、第1巻しか読んでないんだよなあ。すごくつまらなくなった、というわけじゃないんだけど、なんとなく)
僕は「鉄道好き」というか、「時間に余裕があれば、飛行機より新幹線で移動したい」というくらいの「鉄道好き」なのですが、知的な美女と鉄道、というのは、なんだかとてもそそられる題材ではあります。
酒井純子さんが、以前『女子と鉄道』という本を書いておられたのですが、「ちょっと自分の世界に興味を示してくれる女性」には、けっこう弱いんだよなあ。
ただし、こういう「ソフテツ女子」は、必ずしも「鉄道マニア男子」が好きとは限らないと思われますが。
村井さんは「ソフテツ」の定義を
マニアの方のような専門の鉄道知識はないけれど、ゆるい鉄道旅が好き。鉄道にロマンを感じる。鉄道を取り巻くノスタルジックな雰囲気や旅情にたまらなくキュンとする。そんなアナタは立派な「ソフテツ」です!
と語っておられます。
こういうレベルでの「鉄道好き」は、男女関係なく、けっこう多いのではないでしょうか。
ハイブリッド車両に揺られながら、もう1つのスポット、清里駅へ。
1980年代には「ミニ原宿」と言われるほど、若者たちの間で大変なブームになった清里の今は…。
シャッターが降りた、パステルカラーのメルヘンチックな建物や、おとぎ話に出てきそうな大きなキノコと切り株おじさん。おじさんの不気味な笑顔がちょっと(いやかなり)怖い……。
そして、夏休みの時期だというのに、人っ子ひとりいない「清里ひろば」。時計台の針は、時を刻むのを忘れたかのように止まったままです。
かつてこの辺りは、聖子ちゃんカットの女の子で溢れかえっていて、最盛期には何十軒ものクレープ屋やタレントショップが並んでいたそう。メルヘンチックな建物はそのままなのに、すっかり廃墟に…。
…私は、夢を見ているのかしら。
霧がかかった天気とも相まって、なんだか幻の世界に迷い込んだよう。
あの「清里」って、今はこんな状況になっているんですね……
「ブームのあと」っていうのは、せつないなあ……
この本、「女性タレントのエッセイ本」ではあるのですが、村井さんの文章を読んでいると、「いまの日本の地方と、そこを走る鉄道の現状」みたいなものが、けっこう伝わってきます。
先日、家族で「SL人吉」という、蒸気機関車に乗ったのですが、このSL人吉をはじめとして、九州のローカル線には、「昔からある鉄道を利用して地域を活性化しよう」という動きが出てきています。
「SL人吉」はイベント列車ですので当然な面はあるのですが、それ以外のローカル線の特急電車でも、女性の車掌さんが、特急のマークを持って車内を回って子どもと記念撮影をしてくれたり、凝った「乗車記念切符」をくれたりしたのには、ちょっと驚きました。
地元の人の「生活の足」であることは当然として、それだけではなく、都会から来た人間にとっては、「鉄道から田舎の風景を眺めることそのものが、ひとつのイベント」になっているんですよね。
それは、裏を返せば、「観光列車」として生き延びようとする、ローカル線の苦しい立場のあらわれでもあるのでしょうけど。
村井さんが撮った写真も、村井さんを撮った写真も素敵で、「鉄道と女子の写真集」みたいな感じでも読めると思います。
ただし、「読む人を選ぶ」のは間違いないので、お求めの際には、書店などでパラパラとめくってみてからが良いのではないかと。