琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】教養としてのプログラミング講座 ☆☆☆☆



Kindle版もあります。

内容紹介
もの言わぬ機械とコミュニケーションする手段「プログラミング」。
コンピュータが隆盛を極めた今、もはやそれは身につけるべき教養だ。
この本は、一冊で優れたプログラマーの思考を習得することを目指す。
ジョブズゲイツ、現代の成功者はどんな世界を見ているのか?

僕はこの新書を読みながら、二冊の本を思い出していました。
一冊目は、すがやみつる先生の『こんにちはマイコン』。
1982年刊行。
当時小学生だった僕は、「マイコン」という未知の世界にすごく憧れていて、この本でBASICを一生懸命勉強したものでした。いや、「勉強」っていうか、当時はもう、キーボードをたたくと、画面にその文字が表示されるだけで、嬉しくてたまらなかったのですけど。
あの頃のマイコンは、ものすごく高価で、遊びか、せいぜいワープロくらいにしか使えなかったんだよなあ。
「これからはコンピュータの時代!」「勉強に使えるから!」と親を説得したにもかかわらず、なんとか手に入れたら、ゲームばっかりやっててすみませんでした……


二冊目は、『統計学が最強の学問である』。
まだ1年ちょっと前に出たばかり。
この本が斬新だったのは、「統計学」の重要性や面白さを伝えることを重視したところで、「読んだ人が、嘘や偏った統計に騙されない程度の基礎知識を持ってくれればいい」と割り切っていたことでした。
それまでの「統計学」の本って、仕事や勉強で「統計」を使わなければならない、実際に計算をしなければならない人向けで、どうしても数式が並んでしまっていたのです。
この『統計学が最強の学問である』は、「『統計学』って、何だかわからないし、何の役に立つのかもわからない」という人と、「仕事で『有意差』とかを出す計算をしなければならない人」のちょうど中間にいる人たち向けに書かれていたんですよね。
この本は、あまりに大きくなりすぎた両者の「隙間」を埋めてくれたのです。


前置きが長くなってしまいましたが、この『教養としてのプログラミング講座』は、「プログラミング」における『統計学が最強の学問である』のような役割の新書です。
こんにちはマイコン』の頃は、何十年かしたら、みんながプログラムを自分で組むような時代が来るのではないか、と想像していたのですが、現実にはそうはなりませんでした。
むしろ、コンピュータの進化にともなって、「コンピュータを使う人」のなかで、「プログラムを組む人」の割合は、減ってきたようにも思われます。
僕が学生だった20年前くらいは、大学の講義で簡単なプログラムを組んだ記憶があるのですが(当時、大学の電算室にMacintosh Classicがあったんですよね、あれはカッコよかった)、最近は、みんなそういう実習とかはやってないのかなあ。


「プログラミング」というのは、けっして、「文系の日常」から縁遠いものではありません。

 プログラミングとは、一言でいえば「自分以外のものを、思い通りに動かす方法」のこと。適切にプログラミングしたものは、たとえば作者が消滅したとしても、作者の意図を反映し、プログラミングした通りに動くことになります。
 これが企画であれば、企画者の意図通りにユーザの気持ちを動かそうとするのも「プログラミング」であり、組織であれば、組織全体をリーダーの意図通りに動かそうとするのも「プログラミング」であるといえます。
 つまり、こうした仕事をしている人たちは、本人が意図していようがいまいが、全て「プログラマー」なのです。ビジネスでなくても、子供を持つ親にとっての「子供の教育」や「子供との接し方」、これらもプログラミングということができるでしょう。あまりに世の中にプログラムが浸透しすぎていて、私たちはその存在を見落としているだけなのです。

 コンピュータは「曖昧さ」に弱いから、綿密な条件設定をしてあげないと、プログラムはうまく機能してくれません。
 でも、それは人間でも同じことではあるのです。
 もちろん、「それぞれの現場での判断で!」と言わざるをえない状況もあるのでしょうけど、「マニュアル化」することによって、熟練度にかかわらず、一定のサービスを安定して提供することが可能になることも多いのです。
 まあ、そういう仕事は、往々にして「マックジョブ」なんて言われて、軽んじられたりもしがちなのですが、マニュアルがなければ、マクドナルドの店員さんが「熟練」するためには、より長い時間が必要になるはず。
 

 子供が自分の安全を自分で守れるようにいい聞かせて教育すること。彼ら彼女らの人生を正しく導いてあげられるような環境を用意すること。
 親が死んでも子供は生き続けます。そして子供はまた、自分の子供に同じように教育を与えることでしょう。
 プログラミングとは、自分のいないところでも、自分以外の存在が自分の期待通りに振る舞うよう、その道筋を教える仕組み。だとすれば、子育ては立派なプログラミングであるといえます。

「子育てはプログラミングである!」なんて言われると、「人間は機械じゃねえ!」と、つい言い返したくなってしまうのですが、人間というのも、何もOSをインストールしないまま生きてはいけないんですよね。
むしろ、プログラムがコンピュータだけのものだという考え方のほうが「古い」のかもしれません。


この新書では、コンピュータの歴史から、簡単なプログラムのつくりかたまで、「コンピュータが苦手な人にこそ、知っておいてもらいたい、最低限の知識」がコンパクトにまとめられています。
これを読んだからといって、縦横無尽にプログラムが組めるようにはなりませんが、「プログラムやコンピュータが、少し身近に感じられるようになる」のではないかと思います。


僕みたいに『こんにちはマイコン』時代からコンピュータと接してきた人間とか、自分ですでにプログラムを組めるような人には「初歩的すぎて、これまでの知識を小一時間でまとめるのに役に立つくらい」なので、あえて読む必要はありません。
でも、「教養として『プログラミング』の最低限のことは知っておきたい人」には、まさにうってつけの一冊ですよ。



統計学が最強の学問である

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