琥珀色の戯言

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【読書感想】情報の「捨て方」 知的生産、私の方法 ☆☆☆



Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
新聞を読むな。BSテレビを観ろ。メモは「太赤マジック」で取れ。SNS上のバカは即刻「ブロックしてよし」―人生もビジネスも、どう“情報を捨てるか”で質が決まる。「良い情報を探す」前に、疑い、見極め、そうして活かせ。人、街、テレビ、ネット、スマホ…本当の知的生産をするための、「情報活用」以前の教科書。


 巷にあふれている、あまりにも多くの情報を、どういう方法・基準で「取捨選択」していくか。
 いやほんと、忙しい忙しいと言いながら、寝る間についTwitterでダラダラと夜更かししてしまう僕にとっては、かなり深刻な問題なんですよね。
 そもそも、インプットしてしまう情報が多すぎる。


 この新書は、そんな僕なんかよりも、はるかに大量の情報を「処理」している成毛眞さんによる「情報の捨て方」指南書なのです。
 いまの世の中、「いかに情報を得るか」よりも、「いかに不要な情報や誤った情報を捨てるか」のほうが、大切なのではないか、と僕も思います。
 1日が24時間であることは、僕がまだ子どもだった30年前と変わらないのに、スマートフォン1台を持ち歩いて、ときどきネットに繋ぐだけでも、得られる情報があまりにも多いし、時間はすぐになくなってしまうから。


 著者は、この新書のなかで、「切り捨てるべき情報」の例をあげていきます。

「いま、明かされる衝撃の真実」「真実は闇に葬られたままだ」などという言葉を聞くと、真実とは常に限られていて、ときおり顔を出すありがたい存在のように感じられるかもしれません。
 しかし私は、こういった言葉を聞くと、とたんに眉に唾を付けたくなります。そして、聞く耳を持たなくなります。
 私はこの手の真実には興味がありません。興味があり、また、情報として価値があるのは事実、つまり、実際に起きていることだけだと思っています。
 いつ、どこで、誰が、何を、どのように、どうした。
 文章を読むとき、話を聞くときは、この5W1Hのエッセンスを抽出して、そこに紛れ込む、書き手や話し手の思い込みや願望は排除しています。巷で言われる真実とは得てして、こういったオピニオンに過ぎないからです。なので、一視聴者によるありふれたテレビの感想や、陰謀史観に凝り固まったおとぎ話のようなブログは読みません。はっきり言ってしまうと、素人のブログは狭い視野の上に成り立つオピニオンの塊ばかりで、読むに値しないのです。


 ああ、言っちゃった……
 そして、僕も言われちゃった……


「読むに値しなくて、悪かったですね!」と拗ねてしまいたくもなるのですが、これはたしかに「理にかなっている」と僕も思います。
 素人のブログは、情報収集効率という面からいけば、あまりにもノイズが多すぎる。
 そして、「いま明かされる真実」的なもので、後から検証して、本当に「真実」だったものは、あまりにも少ない。
 ただ、こういう「徹底的な情報収集の効率化」って、僕にとっては、あまり面白いとは思えないのです。
 もちろん著者は、面白がるために情報を取捨してるわけじゃないのですが。
 

 また、Amazonで買い物をするときの「カスタマーレビュー」との付き合い方についても、こんな話をされています。

 では、本や最新のテクノロジーが搭載されるわけでもない物を買うときにはどうしているかというと、だいたいの当たりを付けてから、アマゾンを見て絞り込んでいます。
 そのときアマゾンでチェックするのは、売上げランキングでも価格でもありません、カスタマーレビューを見ています。
 カスタマーレビューのことはご存じの方も多いでしょう。購入者による商品のレビューのことです。5つ星での評価のほか、コメントが書き込まれています。
 まず、レビューの多い商品はそれだけ売れていて、買った人に何らかの感想を抱かせるものであることがわかります。
 問題は星の数です。平均星3つの商品でも、星5つをつけた人と星1つをつけた人がどちらも5人ずつの商品と、星3つをつけた人が10人の商品とでは、どちらがいい商品でしょうか。
 私の実感では、5対5に割れている商品のほうが、圧倒的にいい商品です。
 その理由はふたつあります。まず、星1つをつける人は、その商品を正しく理解していないことが多々あります。サイズが明記されているにもかかわらず「思っていたより大きかった」とか「配送時の箱が汚れていました」など、商品そのものではないところに不満を覚え、それをそのまま素直に書き込んでしまっているのです。こういったレビューはまったく参考になりません。
 また、星3つというのは、合格ラインではあるものの、もう一度買うかと聞かれたら、別のものを試してみたいと思うようなときにつけがちな星の数です。


 僕もAmazonのカスタマーレビューを読むのはけっこう好きなので、著者のこの説明は腑に落ちます。
 たしかに「売れている商品」は、レビューの数が増えるのと同時に、アンチや面白半分のレビューが増えがちで、表示されている「投稿の平均点」は、低めになりがちなんですよね。
 それに対して、レビュー数そのものが少なくて、点数が高いものばかりだと、「関係者が書いているのでは……」と、やや不安になってしまいます。
 個人的には、「斜め上の評価基準で、星1つとかつけているレビュー」というのは、「しょうもないなあ……」と思いつつも、そういうのがレビューの華というか、彩りのような気もするんですけどね。
 著者としては、「そういうのは勘弁してほしい」ですよね……


 基本的に、そんなにびっくりするような「裏技」が書かれているわけではありませんし、いま20代〜30代くらいの「ネットリテラシー」が高めの人たちは、とくに意識しないまま実践していることが多いのではないか、と思いながら読みました。


 でもこれ、著者のレベルにある程度ついていけるような人じゃないと、参考にするのが難しそうだとも感じます。
 というか、そんな人が、大勢いるとも思えない。

 私は本が好きで、雑誌も好きなのですが、定期的に購読している雑誌は限られています。ニュース誌である『Newsweek』と『The Economist』、これにサイエンス誌の『Natureダイジェスト』が加わります。『Natureダイジェスト』以外は英語誌です。
 英語の情報誌を読む理由は単純で、日本語で得られる国際情報に限りがあるから。英語を読むのが苦でなければ、この2誌は読んだほうがいいと思います。むしろ、読まない理由はないといっていいくらいです。
 もし英語が苦手なら、『Newsweek』の日本版でもいいし、私も連載している『クーリエ・ジャポン』でもいいと思います。とにかく国際ニュースに触れることは習慣にすべきです。


 これを読んで、「じゃあ、読んでみようかな『Natereダイジェスト』」と思うくらいじゃないと、この新書に「ついていく」のは難しい。
 『クーリエ・ジャポン』は、僕でも読めて、けっこう面白いのですが。


 率直なところ、「自分の能力に、少しくらいは自信がある人向けの情報収集法」だと思います。
 著者がハードルとして設定しているところまでたどり着く前に、僕は遭難してしまいそう。
 でも、差をつけるには、このくらいやらないとダメなのかもしれないなあ。

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