
ヒトはこうして増えてきた: 20万年の人口変遷史 (新潮選書)
- 作者: 大塚柳太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/07/24
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。

ヒトはこうして増えてきた―20万年の人口変遷史―(新潮選書)
- 作者: 大塚柳太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/01/15
- メディア: Kindle版
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内容紹介
何が人類をここまで激増させたのか? 20万年前、アフリカで誕生したわれわれは穏やかに増えていくが、つい最近、突然の増加をみた。農耕が始まった約1万年前のわずか500万人が、文明が成立し始めた5500年前には1000万、265年前の産業革命で7億2000万となり、2015年には72億人に。そしてこの先どう推移するのか? 人口という切り口で人類史を眺めた新しいグローバルヒストリー。
人類が誕生してから、その数はどのように推移していったのか、そして、これから、人口はどうなっていくのか?
僕が子どもの頃は、爆発的な人口増加が地球にとっての大きな問題となることが「予言」されていました。
この本でも、人類誕生からの人口の推移のグラフが紹介されているのですが、最近のごく短い期間に、人間の数は劇的に増加していることがわかります。
今から265年ほど前、イギリスで産業革命がはじまった1750年ころ、世界人口は7.2億くらいでした。さらにさかのぼると、西暦元年ころには2〜3億で、農耕が開始された1万年ほど前には1000万にも及ばなかったのです。それより前は数字を用いる推定は難しくなりますが、ヒトが約20万年前にアフリカで誕生し、それ以来、ヒトの遺伝子が連綿と受け継がれてきたのはまちがいありません。この間、人口は今よりはるかに緩やかに増加をつづけ、最後の0.1%ほどのごく短期間に急増したのです。
本書の目的は、ヒトが誕生してからの歴史を、人口に着目して描きだすことです。言い換えると、長期にわたる人口の変化をヒトの生き方と関連づけて解き明かすこと、そして将来の生き方へのヒントを探しだすことです。
著者は、「出生、死亡、移住に着目してヒトの歴史を見直すと、四つのフェーズに大別できる」としています。
第一フェーズは、アフリカで石器を改良して生活していた時期。
第二フェーズは、ヒトの祖先がアフリカ大陸から西アジア、そして地球上の広い地域に移住した時期。
第三フェーズは、ヒトが定住生活をはじめ、農耕と家畜の飼育を発明した時期(旧大陸では1万年以上前、新大陸では6000〜7000年くらい前)。
第四フェーズは、産業革命と人口転換の時期。
この「人口転換」とは、「出生率も死亡率も高い『多産多死』から、死亡率だけが低下する「多産少死」を経て、最終的に出生率も低下する「少産少子」に移行すること」を指すそうです。
日本では、この「人口転換」が1880年頃にはじまり、1950年代に終わっています。
第四フェーズのもう一つの大きな特徴は、人口の認識に変化が生じはじめたことです。「世界人口」という認識が高まるとともに、地球環境や資源の持続性にとって人口が過剰と考えられはじめたのです。そのため、出生率の低下を目指す家族計画が推進されてきました。とはいえ、世界人口は現在でも一年間に7000人のペースで増加を続けているのです。人口増加に起因する環境問題、食糧問題、南北問題などは深刻の度を深めています。一方で、人口転換が終了し「少産少死」に移行した多くの国では、低い出生率がつづき人口減少がはじまっているのです。
「世界人口」というのを人類が意識しはじめたのは、人口が急激に増えたこの数百年くらいのことなんですね。そもそも、人類が「世界」というものをこれだけ認識するようになったのも、つい最近のことですし。
日本では「少子高齢化」がずっと大きな問題となっており、大勢の移民を受け入れる、などの大きな政策転換がなければ、人口はどんどん減少することが確実です。まあ、移民してきてください、と言っても、そう簡単に来てくれるかどうかもわかりませんが。
日本に住んでいると「人口問題」というのは過去のことのように感じられるのですが、この本で紹介されている各種のデータによると、欧米のいわゆる「先進国」の人口は頭打ちになっている一方で、アフリカではまだまだ人口は増加傾向にあり、人口のピークは、120億人くらいになると予測されているようです。
でも、逆にいえば、いまの72億人から、120億人くらいで、世界人口の増加は落ち着く、とも考えられているんですね。
僕が子どもの頃は、「このまま人間が増え続けたらどうするんだろう? 他の星やスペースコロニーに移住するしかないのか……『ガンダム』とか『銀河英雄伝説』の世界だな……」なんて想像していたものです。
ところが、僕が生まれる前に人類は月に行っていたのに、まだ人間は火星にも足跡を残しておらず、人口も、なんとか「地球でやっていける範囲」におさまりそう。
この本を読んでいると、これまでの人類史においても、人口の急増期の前には、一時的に人口増加が停滞したり、減少したりする時期があるので、これはもしかしたら、「第五フェーズ」の準備期間なのかもしれませんが……
でも、いまの「先進国での少子化」の流れって、止められないような気がするんですよね。
そして、世界中が「先進国」になれば、世界中で、いまの日本と同じことが起こる。
もしかしたら、「クローン人間」というような形での「第五フェーズ」がやってくるのだろうか。
この本では、それぞれのフェーズでの「人口の変化と、それをもたらしたもの」が、さまざまな研究結果とともに紹介されています。
やや専門的なところもありますが、「どのようにしてヒトは増えてきたのか?」「これから人口はどうなっていくのか?」というのを、ひとりのヒトである僕がイメージする、というのは、なんだかとても不思議な気分ではあります。
歴史のなかで、こんなことをみんなが考えるようになったのは、ほんとうに、ごくごく短い期間でしかないのだから。
そして、今の時代というのは、後世からみたら、どんなふうに位置づけられるのだろう、とも思うし、どうあがいてもそれを知ることができないのが、ちょっと寂しくもあるのです。
未来がもっと良い時代、とは限らない。
疫病や戦争で、人口が激減した時代もあります。
ただ、大きな流れでいうと、ヒトの数はずっと増加を続けてきています。
それが、この時代になって、「自分たちの意志で、増えない、という選択をしつつある」のですよね。