- 作者: 円城塔,田辺青蛙
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/06/22
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: 円城塔・田辺青蛙
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2017/06/21
- メディア: Kindle版
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内容紹介
夫婦のかたちに正解はない。本の読み方にも正解はない。芥川賞作家の夫とホラー作家の妻の、ハラハラするやりとりを覗き見ながら、読みたい本に出会える類まれなる書!
夫婦でお互いに本を勧め合って、読書感想文を交換しあえば、いまよりもっと相互理解が進み、仲良くなるのでは――? そんな思いで始まった、芥川賞作家・円城塔とホラー作家・田辺青蛙の夫婦読書リレー。『羆嵐』『VOWやもん! 』『クジョー』『台所のおと』『黄昏流星群』などなど、妻から夫へ、夫から妻へと課題図書が指定されるたびに、なぜか雰囲気はどんどん険悪に。相手の意図をはかりかね、慣れない本に右往左往、レビューに四苦八苦。作家夫婦のコミュニケーションはなんだかちょっと変だけど、夫婦の格闘の軌跡を覗き見ながら、読みたい本も見つかる画期的な一冊。
この本の紹介を読んで、どんどん二人の仲が険悪になっていき、離婚危機が迫る!というような、ハラハラするような内容なのかな、と思っていたのですが、実際は「まあ、夫婦って言っても、お互いに本の好みも違うし、過剰な相互理解を求めるのは、かえって危ないよね」という、きわめて常識的なところに着地していったように思われます。
僕自身は、あまり夫婦で本を薦めあうような習慣はなくて、お互いに読みたいものをそれぞれ読む、という感じなのです(円城さん、田辺さん夫妻に近いかも)。
思いつくなかで、お互いに「これは面白い!」と共感できたのは、マンガ『キングダム』。
それも、『アメトーク』を観て読むようになったので、どちらかの紹介、というわけでもなく。
というのも、この連載の話は夫から聞いただけで、現物を見ていない。
そもそも夫の書いた文章を私は読まないからだ。
世の中には夫婦で原稿を読んだり、アドバイスをしあったりする作家夫婦や作家仲間もいるらしいけれど、うちで実践したらどうなるかは、想像するだに恐ろしい。
読んだところで「あ、こないだ誤字見つけたけど」とか「あそこはこうした方が良かったんじゃない?」みたいな会話になるに決まっているし、それで笑って「あら、そうだったっけ」とか「素敵なアドバイスありがとう。今度からあなたのアドバイスに従って書くわね。おほほほほ」なんてなるわけがないのだ。
それにしてもこの連載の目的は相互理解だが、連載4回目にして振り返ってみて、お互い分かりあった部分があるかどうかは不明だ。
この「交換読書感想」というのは、やりにくい仕事ではないか、とも思うんですよね。
妻の料理が個性的とか、初デートでサイゼリアに連れていかれたとか、そういう話をネットを通じて世界中に発信されてしまうというのは、人によっては、かなりストレスがたまりそうですし。
文句があるなら、直接言えよ!みたいな雰囲気になりそうだものなあ。
この連載をはじめてだんだんわかってきたのですが、どうも妻には、強固な自己像があるようです。
どうもその人は、「おしゃれでかわいい、気のつく奥さん」というような姿をしているらしい。
だから僕は、妻は脱いだ服をそのへんに置いておく、というようなことを書くと、ちょっと機嫌が悪くなったりします。「もう、みんなにだらしない奥さんだって勘違いされたらどうするの! ぷんぷん」みたいな生き物です。でもそれは僕には見えない、前回、妻の回に登場した妖精みたいな奴なのです。多分。
今回は、リレー相手の田辺青蛙さんからお手紙を頂いています。
「それにしても、このリレー連載を始めてそんなに経ってないわけですが、夫は早くもやるんじゃなかった……というか、本の好みなんて皆同じじゃないっていい加減分かっただろう的なことを言っています。
私としてはまだまだお勧めしたい本があり、もっと続けていきたい連載なんですが、夫はそうでもないんでしょうか」
とのことなんですが……。
「本の好みなんて皆同じじゃない」のは最初から分かっていることなので、別に思うところはありません。その意見を言ったのは別の人なのではないでしょうか。あるいはあなたの想像上の人物なのではないでしょうか。一年に三百冊くらい本を読む人同士でも読んでる本が全くかぶらない、なんていうのは珍しいことではないですしね。
ただ、僕の中でこの連載が、「続けるごとにどんどん夫婦仲が悪くなっていく連載」と位置づけられつつあることは確かです。僕の分のエッセイが掲載された日は、明らかに妻の機嫌が悪い。
「読んだよ」と一文だけメッセージがきて、そのあと沈黙が続くとかですね。
どうせ自分は○○だから……と言いはじめるとかですね。
あんなことを書かれると、誰々から何かを言われるから困る、とかですね。
書いたもののせいで作家同士の関係がどうなっても別に構わないのですが、夫婦関係がこじれるのは嫌です。
ああ、これは確かに、嫌だろうなあ。
読者は、こういう形式のリレーエッセイだと、お互いのことについて言及することを期待してしまいますよね。
僕は私小説を書く作家って、書くことそのものの技術的なハードルの他に、それを発表することによる周囲からの視線に耐え抜く能力が必要だよなあ、って、いつも感心してしまうのです。
それは、ブログとかにも言えるわけですが。
この読書リレーを読んでいると、世の中には、まだまだ僕が知らない本がたくさんある、とあらためて思います。
『人間にとってスイカとは何か』って、タイトルだけみると、「人類がスイカを見つけて栽培するようになるまでの歴史を紹介した本なのかな」って思いますよね。「スイカとは何か」なんて、あんまり考えたこともないというか、夏になると出てくる、種をとるのがめんどうで、どこまで食べていいのかわからない食物というのが僕の実感です。
この感想の担当の円城塔さんは、感銘を受けたという、この本の冒頭部を引用しておられます。
本書は、地球上で最後になると思われる、一年間のうち八ヵ月は地表水が利用できない村での私の生活体験を綴ったものである。「人間にとってスイカとは何か」という問題意識を持って、私は現地に出かけた。
彼らは「スイカがあれば人は生きていける」という。一時は村が廃村になったものの、現在、人びとはスイカとの新たな絆をつくり、人生を送っている。
この本、「第7回日本タイトルだけ大賞」の大賞に輝いたそうなのですが、たしかにこれは気になるな……
世の中には、おびただしい数の本があって、いろんな趣味の本好きがいる。
この読書リレーに出てくる本のなかで、僕が読んだことのあるものは『ミッケ!』と『黄昏流星群』くらいでした。
自分の守備範囲を広げるのに役立つ一方で、どんなに身近な人でも、本を薦めるというのは難しいということを思い知らされる一冊です。
人間にとってスイカとは何か: カラハリ狩猟民と考える (フィールドワーク選書5)
- 作者: 池谷和信,印東道子,関雄二,白川千尋
- 出版社/メーカー: 臨川書店
- 発売日: 2014/06/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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