- 作者: 山田真哉
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
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- 作者: 山田真哉
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内容(「BOOK」データベースより)
「失われた20年」から脱出するヒントを本に求めた読者。出版不況を克服しようとあがいた出版社。両者の思惑がマッチした2000年代は「ビジネス書黄金期」だった。そんな時代の、今なお読み継がれる名著から、テクニックを凝らした本まで多数紹介。当時、『さおだけ屋』はなぜ売れたのか?現在、『サピエンス全史』等のハードな翻訳書が売れている背景とは?ビジネス書の栄枯盛衰から、出版界の展望を大胆に予測する。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』が大ベストセラーとなり、自身が2000年代の重要なプレイヤーでもあった著者による、「ビジネス書黄金期」を彩った本の書評と「なぜ、ビジネス書は以前のようには売れなくなったのか」の考察です。
出版のデータを見ると、1990年代後半から出版不況と言われる状態になり、書籍・雑誌の売上高が、1996年の2.6兆円というピークから2009年には2兆円を割って、紙の出版物に限ると2016年には1.4兆円まで下がります。驚異の45%減です。
90年代後半から業界全体が右肩下がりとなる中、ビジネス書だけは2000年代に全盛期を迎えます。「経済」「経営」分野の新刊推定発行部数をみると、1997年に1206万冊だったものが2002年に1600万冊を突破すると、2007年に1729万冊、2009年に1752万冊とピークを迎えます。
このように、ビジネス書は2000年代に一世を風靡するわけですが、2011年は1600万台を割ると、2015年以降は1200万台と下降期に突入しています。
著者は、この推移に対する「ビジネス書の売上は景気に左右される、好景気だとみんな勉強しなくなるから、景気がよくなったためではないか」という見方には否定的です。
紙の本全体が売れなくなってきている時代ではありますし。
この本の前半7割くらいは、著者が雑誌やメールマガジンなどで書いてきた、2000年代のビジネス書の書評なんですよ。
ひと言で「営業」といっても20年前と10年前とでは役割が変わってきているし、10年前と今とでもまったく変わっているのかもしれない。現在だと「こんな時代だからこそ、人と人とが顔をつき合わせることが大事」という主張をよく目にする。こんな時代だからこそ使い捨てカメラが新しいというのと同じ--つまりはアナログへの回帰である。
一時代前のビジネス書を振り返ってみると、今の時代に読んでもまったく色あせないものもあるし、その時その環境だからこそジャストフィットしていたものもある。総じて、経営や会計に対する姿勢を論じた本は前者であり、現場により近い内容のものは後者に該当する。
どちらがいい悪いということではなく、それがビジネスでありビジネス書というものなのであろう。
哲学書のようなもので、より抽象的なものほど、とっつきにくさはあっても、時代の変化に左右されにくい、ということなのでしょう。
2000年に刊行されて大ベストセラーとなった『金持ち父さん 貧乏父さん』の書評より。
「だってさー、要は『真面目に働く奴はバカだ。不動産を買って値上がりを待てば、誰でも大金持ちだ!』っていうことが言いたい本なんでしょう」
「……著者もそんなにストレートには書いていませんよ」
2000年には、みんながこれを読んで「その気」になっていたんですよね。
現在(2017年)の時点で、今後も人口が減少していくことが確実な日本では「空き家問題」がクローズアップされ、不動産が今後もどんどん値上がりしていくと信じている人はほとんどいないはずです。
ちなみに、当時もこの『金持ち父さん』への「反論本」として、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』という本が出ていて、けっこう売れたそうなのですが、その著者が橘玲さんなんですね。
そうか、2000年代のはじめって、僕はビジネス書にはほとんど興味なかったものなあ。
手にとりはじめたのは、それこそ『さおだけ屋』が話題になった時期くらいからです。
読んでいて感じたのは、ちょっと古めのビジネス書の書評って、読んでいてもあんまり面白くないな、ということでした。
僕もだいぶビジネス書を読んできたのですが、慣れてくると、短時間でどんどん読みこなせるようになってきて、「読書家気分」に浸れるんですよね。
それは裏を返せば、「ビジネス書って、ほとんど同じようなことしか書かれていない」ということでもあるのです。
ああ、こういうの読んだ、という内容が多いからこそ、読み飛ばせるところが多い。
人間関係や仕事がうまくいくための真理、みたいなものが毎年劇的に更新されるはずはありませんから(さりとて、少し古くなると、なんだかすごく「時代遅れな感じ」になってしまいます。社会構造も変わってしまうし)。
中途半端に古いものを読むくらいなら、ずっと読み継がれている源流の、ドラッカーとかナポレオン・ヒルを読めば事足りる、とも言えます。
ただし、これらの「定番」はけっこうボリューム的にも内容も「敷居が高い」のは事実なんですが。
あらためて考えてみると、『もしドラ』があれだけ大ヒットしても、日本に優秀な経営者の割合が有意に増えた、というわけではなさそうですし。
ちゃんと読むのは難しいし、それを活かすのも難しい。
この本の読みどころは、過去の書評よりも、大ベストセラービジネス書の著者自身が、「なぜビジネス書バブルは到来し、崩壊したのか」を検討した「考察編」だと思います。
著者は、「人口減少」「キャリアアップは時代遅れ」「ノウハウが出尽くした」「ネットに負けた」の4つの「通説」のうち、2つがビジネス書衰退に大きく影響していると考えているそうです。
この4つのどれもあてはまりそうなのですが、著者が考えている「2つ」はこのうちのどれとどれか。
興味がある方は、書店で手にとってみてください。
著者は、ビジネス書のベストセラー作家が、1990年代の大前研一さんや堺屋太一さんのような、近づきがたい「大御所」から、2000年代には勝間和代さんや細野真宏さん、本田健さんのような「比較的読者とフラットな立ち位置に感じられる人へと移行していることを指摘しています。
それでは、なぜこのような変化が生じたのでしょうか。
その理由の一つは、先述したように「誰でも作家になれる時代」だったからですが、ここでもう一つ指摘しなければならない大きな要因があります。
それはネット書評、とりわけ2000年11月にサービスを始めたネット書店Amazonのレビュー機能です。画期的だったのは、一冊一冊に対して読者が自由にレビューを投稿でき、5段階評価をつけられることでした。
それまで書評を書くということは、功成り名遂げた偉い学者や評論家、作家による専売特許でした。書く場所も新聞の日曜日の書評欄など、限定的。ところが、Amazonのシェアが拡大していくにつれ、「誰もが書評家」の時代が到来したのです。すると、作家はみなレビューを気にするようになり、読者のことをいっそう意識し始めました。その結果、本の中で「上から目線」でものを言うことに慎重になる風潮が生まれたような気がします。私のまわりのビジネス書作家でも、Amazonのレビューを気にしない人はほぼ皆無です。
そう言われると、たしかに、2000年代半ば頃から、「無知な読者に教えてやる」みたいなビジネス書ではなく、低姿勢やわかりやすさを前面に出した本が増えたような気がします。
Amazonの読者レビューって、書く側にとっては、そんなに大きな影響力があるのか……
その一方で、ハードな内容の翻訳本、『21世紀の資本』や『サピエンス全史』も売れているんですよね。
あまりに、わかりやすさ重視に振れてしまうと、物足りないと感じる人も増えてくるのかもしれません。
僕としては「考察編」のほうだけで一冊の本にしてほしいくらいだったのですが、長ければいい、というものでもないのでしょう。
ビジネス書の著者になりたい、あるいは、ネットで、ライフハック的なものを書こうと思っている人には、参考になる本だと思います。
さおだけ屋はなぜ潰れないのか??身近な疑問からはじめる会計学? (光文社新書)
- 作者: 山田真哉
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- 作者: ロバートキヨサキ,シャロン・レクター(公認会計士),白根美保子
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