琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
将棋のプロって普段はどんな生活してるの?そんな疑問を解消するために山口恵梨子女流二段に密着。対局、解説、レポーター、イベント、インタビューなどのお仕事から、ゲーム、温泉旅行、お買い物、食事などのプライベートにまで迫る。女流棋士の日常の秘密が明かされるゆるふわエッセイ。


 女流棋士山口恵梨子さんに取材して書かれたコミックエッセイ。
 僕は子どもの頃から将棋が大好きで、日曜日にはNHKの「将棋の時間」を毎週楽しみにしていたのです。ただ、コンピュータとテレビゲームを知ってからは、将棋よりもそちらのほうに夢中になってしまい、結局、今の棋力は「とりあえず駒の動かし方はわかるし、スマホの将棋ゲームでも、相手を最弱に設定すればなんとか勝てる」というくらいです。
 それでも、将棋界の動向は気になりますし、棋士が書いたエッセイや棋士について書かれた文章を読むのは大好きなんですよね。

 この本に登場する女流棋士山口恵梨子さんは、大のテレビゲーム好きとして知られており、この本のなかにも、ゲーム関連のエピソードがたくさん出てきます。余暇に台湾に旅行に出かけても、やったことは『Pokémon GO』でのポケモン集め!女流棋士仲間で旅行に出かけても、夜はやっぱりみんなで将棋!いや、ほんとにゲームが、将棋が好きなんだなあ。
 棋士という職業は、つねに将棋の勉強を続けていなければならず、時間をかけて研究したからといって、それに比例して勝てる、というわけでもない世界でもあります。

 そんなことを考えつつ読んでいたのですが、そういえば、将棋や囲碁の「棋士」というのは、日本で最も昔から存在していた「プロゲーマー」ともいえるな、と思いついたんですよ。
 僕が棋士に憧れたのも、「ゲームをやって生きていけるなんて最高だな!」と子どもの頃に感じていたから、でもあります。
 しかしながら、「楽しいはずのこと」をやって生きていくというのは、逆にハードルが高い面もあるんですよね。
 お金をもらえる仕事になるのは、人ができないことか、人がやりたくないことしかない。
 ゲームみたいな「楽しいこと」を仕事にするには、よほど強いか、他人にその魅力を伝えるのが上手い、という圧倒的な能力が必要なのです。「人がやりたくないこと」であれば、「とりあえず我慢してやる」ことで、なんとか食べていけるくらい稼げることも多いのだけれど。
 「ゆるふわエッセイ」って書いてあるけれど、現実はそんなに「ゆるふわ」でもないですよね……
 昔の声優さんが「声の演技の力」だけで食べていっていたのに比べて、今は「声優」でも、ルックスとかアイドル性みたいなものが必須条件みたいになっているのと同じで、「将棋の普及」を仕事の柱にするのであれば、「タレント性」を求められますし。

 山口さんは、指導対局の際に、相手に「真剣に指した方がいいか、楽しくがいいか聞くことにしている」そうです。
 

 楽しくと言える方は、勝って終わりたい方が多いので、勝って満足いただけるようにアドバイスをするか、相手が勝つ形になるようにします。

 僕は以前、自分の子どもと将棋を指すとき、けっこう悩んでいたんですよね。
 親としては、子どもが「お父さんに勝ってやる!」という、とりあえずの目標になるくらい圧勝して、「負けん気」を刺激するべきではないか、手抜きをしてはいけないんじゃないか、と考えるのですが、実際にそれをやると、子どもは「つまんない、もういい」って放り投げてしまうことばかり。そんなとき、あの羽生善治さんの、こんな話を読んだのです。


blog.tinect.jp

「負けてあげてください」

羽生善治は「子供に将棋を教えるコツ」を尋ねられた際には、そう繰り返し言明している。


 あのときちゃんと「負けてあげて」いたら、僕の子どもも棋士になれていたかも……
 まあ、それはさすがに難しいとは思いますが、「うまく負けてあげるのも、教える側の技術」というのは、知っておいて損はしないはずです。思い返してみれば、僕だって、いくら相手が大人や親でも、負けて悔しいから頑張る、なんて立派な子どもではなかったし。


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女流棋士 (講談社文庫)

女流棋士 (講談社文庫)

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