琥珀色の戯言

3000冊以上の【書評】と500作以上の【映画感想】を、ちゃんと読んで、観て書いてきたブログです。話題になったあの本や映画の感想が、たぶんあります。新書、ノンフィクション、インターネット関連本が多め。

【読書感想】叩かれるから今まで黙っておいた「世の中の真実」 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

“忖度抜き”で「2ちゃんねる」創設者が語りつくす――
“知らないほうが幸せ”かもしれない衝撃の真実

「日本は平等な社会?」→NO! 「〇〇〇〇」だけが得をする
働き方改革はうまくいく?」→NO! 会社も個人も得をしない「〇〇主義」
「努力すれば報われる?」→NO! 大事なのは「〇〇」と「〇〇」
「投票に行けば政治は変わる?」→NO!  「〇〇〇」重視の政策は変わらない
「炎上は多数派の意見?」→NO! 書き込んでいるのはたった「〇%」

本書では「社会・仕事・教育・政治・人間関係」という5つのテーマについて
「正しい情報」にもとづいた真実を明かしていきます。
なかには「そんなこと知りたくなかった」というものもあるでしょう。
でも、そうした「不都合な真実」から目を背けないことではじめて、
「正しい思考」ができるようになるのです。  ――著者


 このタイトルをみて、僕は正直、「ああ、ひろゆきさんの『逆張り』本なのかな……」と思ったんですよね。さすがに「フリーメイソンが世界を支配している!」とか、その手の「都市伝説的な内容」ではないだろうとは予測していたのですが。

 読んでみての率直な感想は、「釣りタイトルだな、これ」でした。
 ただし、それは悪い意味ではなくて、ここに書かれていることは、叩かれるほどの『世の中の隠された真実』というより、ごくごく当たり前のことがほとんどではないか、と感じたのです。
 いやほんと、「当たり前のことが、当たり前に書かれている」し、ここに書かれているようなことは、みんな知っているのではないだろうか。

 ……と言いたいところなのですが、陰謀論とかではなくて、「スポンサーへの配慮」とか「差別だと叩かれるのが怖い」というような理由で、テレビや大手メディアでは、誰も言いたがらない、あるいは、誰かが言ってもスルーされてしまうことって、けっこうありますよね。

 たとえば、コロナ禍におけるエピソードが、それを象徴しています。
 大勢の人が「密」な状態でいると、新型コロナウイルス感染の危険性が上がることは、わりと早くから報道されていました。
 そして、その密になる状況として、盛んに取り上げられたのがなぜか「屋形船」でした。屋形船で初期の感染者が出たことはたしかですが、レアケース以外の何物でもありません。
 そもそも、屋形船を利用する人なんてごく一部でしょう。「屋形船での感染に気をつけましょう」と言われても、多くの人が「そもそも一度も乗ったことがないんだけど……」と思ったはずです。
 僕にはそれがすごく不思議だったので、Twitterでこう発信しました。

 「換気が悪く、密集する空間、不特定多数が接触する場所」の厚生労働省の例:スポーツジムや屋形船、ビュッフェスタイルの会食、雀荘、スキーのゲストハウス、密閉された仮設テント
 「満員電車」って絶対言わないけど、罰ゲームでもあるの?

 そうしたら大きな話題になって、テレビ番組やネットニュースなど、あちこちで取り上げられました。
 やはり、僕と同じように感じていた人が少なからずいたのでしょう。


 たしかにそうだよね……
 僕も「屋形船って……そもそも乗ったことないし、乗る機会がある人もそんなにいないだろうに」と苦笑してしまったんですよね。
 どこからか、「満員電車って言うな」という圧力があったかどうか、国やメディアが「満員電車を例にあげたら、みんながパニックになるし、経済活動に大きな影響が出てしまう」と暗黙の了解として採りあげなかったのかはわかりませんが、どう考えても、屋形船よりも満員電車のほうが、感染拡大に影響しそうですよね。
 結果的には満員電車での通勤のリスクやオフィスでの密な状態を避けるために、テレワークに移行した企業も多かったのですが……
 こういうのを読むと不思議になるのですが、どこかの誰かが「責任者」として、「満員電車は例に挙げるな」と指示しているのでしょうか。それとも、それぞれの人が経済活動への影響とかスポンサーの意向を想像して「自粛」しているのでしょうか。前者であれば、「誰が?」って思いますし、後者であれば、それはそれで薄気味悪いですよね。

 ひろゆきさんは、この本のなかで、さまざまな「知らない人が搾取されている事例」について紹介しているのです。
 あるいは、困っている人の判断力の低下につけ込むようにして、さらにお金や労働力をむしり取るようなシステムについて。

 僕がとくに問題だなと思うのは、クレジットカードや銀行カードのローンです。消費者金融であれば、「利用するのはちょっと危険」と感じる人が多いでしょうが、カードローンはそうではありません。クレジットカード会社や銀行など、立派なところが「貸してあげますよ」と言ってくると安心してしまうでしょう。
 国内銀行のカードローン残高の推移を示しているのが前のグラフです。2006年は「3兆4335億円」だったのに対し、2017年は「5兆8186億円」と約1.7倍まで増加しています。
 しかし、これらの利率たるや約15%と、消費者金融となんら変わりません。軽い気持ちで借りていたら、いつのまにか返済が追いつかなくなる。2000件以上にも上る多重債務者の相談件数は、借金の仕組みを理解していない人がたくさんいることを示しているのでしょう。
 
 さらに多くの人がはまっているのが、クレジットカードのリボ払いです。
 リボ払いは、支払額を毎月額に固定し、利子と共に返済していく方法です。
 たとえば、30万円のブランドバックを購入したときに、一括払いにすれば翌月には銀行口座から30万円引き出されてしまいます。当然のことながら、30万円以上口座に残っていなければ買えません。
 一方、リボ払いで毎月1万円ずつ支払うという設定にすれば口座に1万円以上あるだけでいいので、ずいぶん楽に感じます。
 ところが、ここに大きな落とし穴があります。1万円を30か月支払えば終わりというわけではありません。そこに金利分が乗るので(利率15%で計算した場合5万8000円)、約6か月分、余計に支払わなければなりません。
 要するに、30万円のものを35万8000円で購入しているわけです。支払っている本人は毎月1万円を返済し続けているだけで、合計の返済金額まできちんと把握していないのでしょう。
 一方、クレジット会社は得をします。1回払いよりもリボ払いを選んでくれたほうが利息分が入ってきて儲かるので、クレジット会社は、あらゆる手を使ってすすめてきます。
 そうした誘惑に加え、「毎月1万円で済む」という油断から、多くの人が最初の支払いを終えないうちに他の買い物についてもリボ払いにします。
 そして、どんどん毎月の支払額が膨らんでいき、いつまで経っても支払い終了しないどころか、自己破産に陥るケースも多々あります。


 クレジットカードを作っている人は、毎月、「リボ払いにしませんか?」というメールが来て、うんざりしているのではないでしょうか。僕もそうです。
 「リボ払いは金利が高いし、月に1万円といっても、利息の支払いの割合が高くて、元金がなかなか減らない仕組みになっている」からこそ、カード会社もこれをすすめてくるのです。大手金融機関と提携しているから、ネットで有名な会社だから、と無邪気に「信頼」してしまうのは危険です。あれだけしつこく毎月勧誘してくるのには、あちら側にとって大きなメリットがあるから、なんですよね。
 実際は、「買いたいものがあるけれど、まとまったお金はいつ作れるかわからない」人が多いからこそ、リボ払いを選ぶ人もいるのですが、そういう「お金に困っている人につけこんで、高い金利でローンを組ませ、さらに追い込む仕組み」になっている、とも言えるのです。
 銀行も金利は低いし、ネット銀行の躍進などで厳しい状況にあり、なりふり構ってもいられないのでしょう。
 少なくとも「誰かが熱心に薦めてくるものには、その人にメリットがあるのではないか」と考えてみる姿勢は必要です。

 最近、大学へわざわざ高い学費を払って通う必要はないという風潮があります。
 オンラインサロンを運営するブロガーのイケダハヤトさんは「大学なんて通う必要がない」と主張し、それに感化された大学生が実際に退学する、なんてことも起こっています。
 オンラインサロンは、ウェブ上で展開されるクローズドの会員制コミュニティです。会員は月額料金を払うことで、コミュニティ限定イベントへの参加などができるようになります。
 たしかに、そのコミュニティでしか得られない情報があるのかもしれませんが、オンラインサロンの運営者が、大学なんて入らずに別のところで学んだほうがいいと言うのは、明らかにポジショントークです。
 彼らの話を真に受けて、大学を辞めても、その後の人生の面倒を見てくれるはずはありません。それどころか、自分の影響力のすごさを示す広告塔的な扱いを受けて、とことん利用されるだけでしょう。
「大学不要論」と掲げる人たちはよく「大学に行かなくても大抵のことは学べる」と主張します。たしかにこれは一理あります。ネット全盛期のこの時代、本人に学ぶ意欲さえあれば、大学に行かなくても学ぶことはできます。
 ただ、僕は「大学はとりあえず卒業しておく価値がある」と思っています。
 高卒の男性の生涯賃金(退職金を含まない)は平均で2億1000万円、一方、大卒・大学院卒の男性は2億7000万円。その差6000万円は家1軒分にあたる金額を優に超えています。女性の場合も、高卒と大卒・大学院卒の差は7000万円と大きな開きがあります。
 しかも、高卒は大卒よりも最低4年は早く働き始めているわけですから、時給に直せばかなりの開きがあることになります。


 ひろゆきさんは、「日本企業は、『大学で何を学んだか』ではなく、『大卒である』ことに価値を見出している」と指摘しているのです。
 身も蓋もない話ではあるのですが、たしかに、そうなんですよね。
 僕も個人的には、同じ大学の卒業生というだけで、一緒に大学で何かをやったわけでもないのに「同窓の先輩・後輩」としてかわいがる、なんておかしいんじゃないか、と思うのですが、人というのは、そういう「誰かを優遇してあげる(あるいは、冷遇する)理由」を求めているところがあるような気がします。
 「大学じゃなくても学べる」という主張は正しくても、実際に必要なのは、そこで学んだことではなくて、「〇〇大学を卒業した」という「経歴」なのです。
 もちろん、純粋に能力が問われる、ごく一部の専門職は別なのだとしても、「平均すれば、大卒のほうが稼げる」というのは、まさに数字に現れているのです。
 それは、無視できない現実だと思います。
 「大学なんて行く必要ない」と公言している「インフルエンサー」自身は、名門大学を卒業していることが多いですし。

 正直、これはこれで、ひろゆきさんという「身も蓋もない人」のポジショントークであることも、否定はできないんですよ。こういうことを言ってくれるからこそ、ひろゆきさんにはニーズがあるわけですから。
 でも、たしかに「知っておいて損はない」というか、「ここに書かれていることくらいは知っておかないと、搾取されるよ」とは思うのです。


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