琥珀色の戯言

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【読書感想】新・壇蜜日記 人妻は嗜好品 ☆☆☆☆

新・壇蜜日記 人妻は嗜好品 (文春e-Books)

新・壇蜜日記 人妻は嗜好品 (文春e-Books)

※現時点では、KIndle版(もしくは他の電子書籍版)しかありません。

巻頭に「新妻」がテーマの撮りおろし写真集を収録!
結婚なんてゴールではない。
新婚早々見舞われたコロナ禍の中、マスクを作り、サウナに通い、ペットを愛でる。
祖母、ナマケモノとの別れ、そして新しい出会い――。
未曾有の一年を彼女は夫、たくさんの動物たちとどう過ごしたのか。
ほろ苦くて甘い蜜、のリアルな日々。


 壇蜜さんの日記、シリーズ最新刊。
 僕は有名人の「日記」が大好きで、この『壇蜜日記』もずっと読んでいるのです。


fujipon.hatenadiary.com

 この日記の最初の巻は、Kindle Unlimitedの読み放題に入っているので、会員は無料で読めます。

 けっこう長い間、壇蜜さんの日記を読んでいると、「性的に、あるいは『キワモノ』的に消費されていくこと」に対して、諦めと開き直りが交互に訪れていた最初の『壇蜜日記』の時代から、次第に、壇蜜さんの気持ちと生活が落ち着いてきているのを感じるのです。結婚の影響もあるのではなかろうか。

 まあ、読む側の僕とすれば、最初の頃の「危うさ」とか「芸能界で消費されることへの戸惑い」みたいなものを面白く感じていたところもあって、読者というのは身勝手なものだな、とも思うのですけど。

 そういう意味では、この『新・壇蜜日記』は、すごく穏やかで、飼っている動物とサウナの話のなかに、ときどき、「週末婚」の夫が出てきたり、故郷の秋田や新型コロナ禍のなかでの仕事のことが語られたりしている、という感じなのです。

2020年3月7日
 ウィルスの蔓延が気にはなるが、夜の最寄り駅にて人が飲み歩く姿を見かけた。屋台で軽食を取る、カラオケに入店をする、キャバクラに行きましょうよ、なんて声も聞こえた。自粛と経済活動とどちらが大事かは難しい問題だと思った。私も実際自転車で買い物に来ているし、部屋から一歩もでないことはなかなかできない。引きこもるように暮らす人々もいるが、私はサウナや買い物もしたい。日々価格設定が安い自動販売機のチェックもしなくてはいけないのだ。


 壇蜜さんは、基本的にはインドア派なのだと思うけれど、「サウナや水泳がないと生きていけない」のだとか。
 ただ、「感染症を盾に人を遠ざけた1年」と年末には書いておられ、ステイホーム生活には、けっこう適応できていたのではないかと思います。
 そんな壇蜜さんでさえストレスだったのだから、イベント大好き!みんなでワイワイやるのが生き甲斐!みたいな人は、2020年はつらい年だったのだろうなあ、と考えてしまいました。

 結婚生活についても、週末婚が続いていて、夫よりも飼っている動物たちのほうが日記には頻繁に登場してきます。

 
 2020年1月1日の日記。壇蜜さんは秋田の実家に帰省していたそうです。

 亭主も実家へ帰ったようだ。各々が各々の新年を過ごす。どちらかの実家に無理をして行くこともないという気持ちを持った男が配偶者で助かる。


 7月7日の日記より。

 国同士のいざこざに巻き込まれた男女がまったく違う国で年一だけ会う海外ドラマも最近人気だったようだ。年一しか会えなくてもそれを励みに生きていけるなら、生き甲斐になっていい人生かもしれない。毎日会いたい、というのはきっと人によるよ。


 壇蜜さんは、「他人を自分の物差しで理解することは難しいけれど、それぞれの人の思いをなるべく尊重する」ようにしている人だと思うのです。
 人間、放っておいてほしいときもある。

 その一方で、芸能界というのは、他人、あるいは大衆から(下世話なものを含む)興味を持たれることによって、成り立っている世界であり、壇蜜さんは、そういう興味をかきたてる存在でもあるんですよね。
 そのことを自覚しているのが、壇蜜さんの面白さであり、めんどくささでもあるのです。

2020年10月2日
 出版する本のゲラ直し。日記ではなく、悩み相談の記事をまとめたもの。読者の悩みに私のような者が答えていいのかとやや申し訳ない気持ちになりつつも、3年ほど続けている連載。問題発言になるような回答はしていないが、女性蔑視を厳しくチェックする特定の団体さんには不快だろうなと思われる発言もあったと自覚はしている。女の足を引っ張るのは女だし、女の株を下げるのも女。だから私は女が怖い。当然自分のことも好きじゃない。


 壇蜜さんが書くからこそ、「そういうものなのか……」と考えずにはいられない言葉ではあります。
 それでも、長年壇蜜さんの日記を読んでいると、「心境の変化」も感じます。
 壇蜜さんは自分のことが好きじゃないかもしれないけれど、以前よりずっと、自分に慣れて、受け容れられるようになっている、ような気はするのです。
 それこそ、外野の勝手な思い込みなのかもしれませんが。


fujipon.hatenablog.com

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