琥珀色の戯言

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【読書感想】パチンコ滅亡論 ☆☆☆

パチンコ滅亡論

パチンコ滅亡論


Kindle版もあります。

パチンコ滅亡論 (SPA!BOOKS)

パチンコ滅亡論 (SPA!BOOKS)

内容(「BOOK」データベースより)
パチンコはたいして勝てません。なぜこの一言をパチンコ業界は言えないのか…依存症、釘、換金、広告規制、カジノ、客離れ…業界のご意見番の2人が余すことなく語り、容赦なく斬るパチンコ文化論。パチンコジャーナリスト、カジノ研究家とのスペシャル対談も収録。


 現在のパチンコ業界が抱える問題を、大崎一万発さんとヒロシ・ヤングさんが対談形式で、さまざまな角度から語りつくした本。
 けっこう昔の話になりますが、大崎さんが、まだ『パチンコ必勝ガイド』に所属していた頃、仕事が夜遅くに終わって、寝るまでの短い時間に、『必勝ガイド』を読むのが唯一の楽しみだった時期がありました。末井昭さんや大崎さんなどガイドのライター陣が、高田馬場で365日毎日パチンコを打つ、という連載があったのを思い出します。あの頃は、まだ田山プロ(田山幸憲さん)の『パチプロ日記』も連載されていたのだよなあ。
 昔の18時開店の新台入替日の話とか、読んでいて懐かしくて仕方ありませんでした。
 僕は学生時代はほとんどパチンコ屋には行っておらず、通っていた同級生を「何そんな不毛なことやってんだよ」と眺めていたのですが、仕事をはじめて少しお金に余裕ができ、地方で夜にぽっかり時間が空くような生活になってから、けっこうハマってしまったんですよね。
 当時、いろいろキツイこともあって、人がいるけれど、過剰なコミュニケーションを求められず、時間をやりすごすことができるパチンコ店というのは、僕にとってのオアシスだったのです。
 一時期、仕事をしていなかった(できなかった)時期があって、そのときもパチンコ店だけが僕と社会との接点でした。
 まあ、負けるんですけどね、クソみたいに。1か月に50万とか負けると、本当に死にたくなるんですが、ある意味パチンコでお金を失うというのは、自傷行為みたいなものなのかもしれません。
 以前、あるテレビ番組で、探偵が家から失踪した男性を探す、という企画があったんですよ。
 そこで、探偵がまず探したのが、依頼者の家の周囲のパチンコ店だったのです。
 妻は「いや、あの人はパチンコにはいないと思いますよ、やっているのを見たこともないし……」と疑問を呈していたのですが、あにはからんや、その男性は、家からちょっと離れたパチンコ店にいたのです。
 なんというか、パチンコ店には、そういう「行き場のない人を受け入れる包容力」みたいなものがあるといえばある。
 まったく打たずに椅子に座ってボーっとしていたり、備え付けのマンガを読んでいたりする人もたくさんいるのですが、彼らが店員に追い払われることもない(閉店時間には出されるのでしょうけど)。ある意味、社会の陰のインフラを担っている、とも言えるのです。


 ちなみに、僕のパチンコに関する思い出については、こちらに書きました。
fujipon.hatenadiary.com


 この『パチンコ滅亡論』のオビには、こう書いてあります。

「パチンコはたいして勝てません」なぜこの一言をパチンコ業界は言えないのか……

 これは、パチンコの仕事で生計を立てている大崎さんやヒロシ・ヤングさんが口にするには、勇気が必要な言葉だというのは、百も承知なのだけれど、僕は正直、「ああ、このくらいが業界人の限界なんだな」とがっかりもしたのです。

 いまの現実は、「パチンコは全く勝てません」だから。

 そういう話をお二人はスルーしているわけじゃないんですよ。

ヒロシ・ヤング:勝てる台、オイシイ台も今や店がそろばんずくでやってるからね。昔は店の裏をかく、隙を突いて勝つ、そこが腕の見せどころだったんだけど、今は店が勝たせようとして台を作ってくれない限り、客は運勝ちを狙うしかない。


大崎一万発:だからそういう意味で夢は潰えてしまったわけで、そりゃ打ち手としてはシラける気持ちが出てきてもしょうがない。雑でテキトーだからよかった部分があったんだけど、きっちりしたおかげで遊びの部分がなくなっちゃった。ふんわりした雑な部分にパチンコ客ってのは住み着いて、なんとかやりくりしようみたいなところが文化だったわけだけど、見事になくなっちゃった。
 

ヤング:いわゆるグローバリゼーションの席巻と、徹底して無駄を排除する経営の合理化。産業として成熟した、と好意的に見ることも可能だけどさ。


大崎:ハッキリ、キッチリしていこうという世界的な潮流の中で、パチンコ業界も台も打ち手も居場所が失われてきてるってことだよ。


ヤング:そして遊戯人口の減少。これも企業の宿命なんだけど、客が減ろうが何しようが、とにかく前の年より「成長」してないと企業としてはダメっていうルールでしょ。だから、客一人あたりから巻き上げる金額を増やして、どうにか体裁を保ってきた。で、これを延々繰り返して、タコが自分の足食ってるようなもんだもん。当然客は白けて、さらに遊戯人口が減ることになる。


大崎:年金構造と同じで、少数の人間が支えなあかんとなれば一人頭の負担が増えるのは当たり前だから。


大崎さんとヤングさんは、さまざまな問題について、けっこうざっくばらんに語っておられるのですが、警察による規制の問題とか、依存症問題はあるとしても、一般のプレイヤーが離れていっている最大の理由は「全然勝てなくなったこと」「時間がかかりすぎること」に尽きると僕は考えています。
3万とか5万とか使って、何時間も強い光と爆音を浴びせられ、ワクワクする時間など全くないものが「娯楽」として受け入れられるはずがない。
僕は最近打つときは主に1円パチンコなんですが、ずっと4円で打てる人って、億万長者じゃないかと思いますよ本当に。
パチンコに4万使うのなら、Zホールディングスの株でも買ったほうがはるかに有意義ではなかろうか(いやべつにZホールディングスじゃなくても、3~5万くらいで買える単位株(100株)って、けっこうあります。経済の勉強にもなるし)。正直、無駄遣いとかバカバカしいお金の使い方にも「快感」はあるんですけどね。でも、それを笑ってネタにできる生粋のギャンブラーっていうのは、そんなにいない。


fujipon.hatenablog.com


「接客」とかは、もちろん良いに越したことはないんですが、まったく勝てない、ぼったくり店で笑顔で挨拶とかされても、不快指数が爆上がりするだけです。この本の終わりのほうで、大崎さんとヤングさんは、「では、これからのパチンコ店をどうしたいのか?」という問いに対して、「18禁なんだから、もっとエロを追求したコーナーがあっても良いのでは?」とか「動物園とか作ったら」なんて話しておられるのですが、僕は読みながら失笑してしまいました。パチンコ業界で商売をしているお二人には言えないことなのだろうけど、パチンコ店にとって唯一無二のサービスは「客に勝たせること」であり、それ以外は枝葉末節でしかありません。エロが必要なら最初からそういう店に行くし、動物が見たければ動物園に行きますよ。もちろん、客が常に勝っていたら、ものすごい経費がかかっているであろうパチンコ店の経営が成り立つわけがないので、ある程度負けるのは致し方ないとはわかっています。でも、今はもう、その「致し方ない」のレベルじゃなく負ける。
2万円(5000発)使って、ようやく当たっても、「確率変動」の50%のほうの当たりでなければ、得られるのは600発。そこからまた2万円くらい当たらないと、もうこれで4万円負け。4万とか5万とかいうとんでもない額が、「ものすごく不運」じゃなくても、ごく当たり前のように、3時間くらいであっさりと失われてしまう。しかも、ずっとイライラしているだけで、楽しくもなんともない。それなら、ニンテンドースイッチを買ったほうがいい(ただ、お金のやりとりには、テレビゲームにはないヒリヒリした興奮があるのも事実)。
僕はこの本を読みながら考えていたのですが、いまのパチンコ業界に必要なのは、絶滅(本当はこちらのほうが望ましいと思う)か徹底した規制緩和ではないでしょうか。
「射幸心を煽る」とかいう理由で、規制だらけでみんな横並びにして、きついスペックの台や勝てない店ばかりにするより、イベントでも設定公開でもありにして競争させて、「プレイヤーになるべく還元する店、支持される店だけが生き残れる」ようにしたほうがいい。人の評判というのは正直なものだから、すでに、ダメな店はどんどんつぶれていっているんですけどね。

若い人がいまさらパチンコをやりはじめるとは思えないし、逃げ遅れるほど搾取されるだけなので、まだやっている人は、早く逃げたほうがいい。
……と、他人には言うんですけど、僕自身は、なかなかこのパチンコというものと完全に縁が切れない人生ではあるのです。
もう、さっさと滅亡してほしいよ本当に。存在するとどうしてもふらっと入っちゃうからさ。

大崎さんとヤングさんの話は興味深いし、世代が近いので「そんな時代もあったなあ」って楽しめたのですが、正直、「パチンコで食べている人」と「パチンコに食いモノにされているけれど、やめられない人(僕も含む)」の温度差も感じずにはいられませんでした。


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