琥珀色の戯言

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【読書感想】令和を生きる 平成の失敗を越えて ☆☆☆


Kindle版もあります。

内容紹介
政治の劣化、経済大国からの転落、社会の分断……
問題は何もリセットされていない!

平成元年、ベルリンの壁とともに世界秩序も崩壊したことに気づかず、バブルに浮かれていた日本人。バブル崩壊後も、相次ぐ大災害と長きデフレにより、目先の生活を守ることに追われて、志向はさらに内向きに。そして日本は、「経済二流、官僚三流の国」となり、「デマと差別が溢れる国」となった。その姿は、国際社会から取り残され、無謀な戦争に突き進んだ戦前の日本にそのまま重なる。

私たちはどこで道を誤ったのか?
どうしたらこの国を建て直せるのか?
平成の失敗を徹底検証した白熱対談。


 僕自身は、人生の3分の2くらいを「平成」で過ごしてきたので、「平成」が失敗だった、と言われても、なんとなく実感がわかないところがあるのです。
 経済は停滞して、日本の世界での存在感は低下し、大きな災害もあった時代だけれど、戦争もなく、インターネットで便利になったところもたくさんあるし……
 とはいえ、僕が子どもの頃に想像していたような「希望に満ち溢れた世界」とは、異なるのもまた、事実ではあります。
 
 この本、昭和史の大家である半藤利一さんと、池上彰さんが「昭和」と比較しての「平成」の総括と、「令和」の課題について対談したものです。
 「平成」以外の時代を知る人にとっての「平成」とは、どんな時代だったのか?


 「平成」の幕開けとして、ベルリンの壁の崩壊による東西冷戦の終了と、その時期にはまだバブル経済でこの世の春を謳歌し、世界の変化に適応するのが遅れた日本が語られています。
 ベルリンの壁が崩れるなんて、子どもの頃の僕は想像しておらず、資本主義と社会主義の闘争がずっと続くと思っていたのです。
 今となっては、そんなこと、もう忘れかけていたけれど。


 池上さんは、「平成」の大きな転換点として、選挙制度の改革をあげておられます。

池上彰社会主義陣営崩壊の余波で五五年体制が終わり、「政治改革」の名のもと選挙制度改革が行われた。平成日本の最初の岐路は、それまでの中選挙区制をやめて、小選挙区比例代表並立制を選んだことです。「見た目偏重」や「テレビ映り重視」もそれに付随して生まれたものでした。


(中略)


半藤一利こうして眺めてみると、やっぱり小選挙区比例代表並立制の導入は、平成日本の岐路でしたねえ。
 政治家がすっかり政党のロボットになっちゃった。死に票が山ほど出て選挙が民意を伝えるものではなくなってしまった。よく主権、主権と言いますがね、主権には二種類ある。国内的な政治主権と、外政的な政治主権です。北方領土返還交渉のさなか、プーチン安倍総理にこう言いました。「そこにアメリカの基地など決してつくらせないと言うけれど、沖縄で新基地建設反対があれだけ叫ばれているというのに、政府与党はそれを無視しているじゃないか」と。つまり日本はアメリカの要求に逆らえない国なのだから、なんでもイエスなんだから、北方領土でもまたおなじことになるという疑念を示した。それが意味するのは、安倍首相の国内政治主権というのは、ぜんぜん国民に説得力がないということなんです。
 プーチンが指摘したように、日本の政府与党は、選挙で勝ったら好きなようにやっていいのだとばかりに世論なんか無視している。わたくしに言わせりゃ、もとはと言えば小選挙区比例代表制並立制のせいなんです。
 

池上:たしかにこの国の政治の劣化をまねいた一因だと思います。しかし、とあえて言うならば、それによって民主党政権ができ、政権交代が行われた。そして民主党がコケて、また自民党が政権をとって代わった。政権交代は起きるようになったんです。いまの選挙制度にした結果、二回の政権交代が起きたとも言える。そのいっぽうで野党が総崩れになってしまったわけですが。


半藤:事実上もう政権交代はあり得ないですよ。だって、こんなに投票率が低いのですから。投票率が50パーセントを切っている小選挙区で、勝者が生まれているという状態なんです。選挙に関心のない国民に政権交代なんかできるはずがないんです。


 誰がなっても一緒、あるいは、かえって悪くなるリスクのほうが高いのなら、あえて「代える」必要なんてないよね。いまの政権を否定しても、野党には、非現実的なことばかり言っている政党しかないし……
 選挙に関心を持てない、どうせ「民意」なんて反映されない、という国民が、長期安定政権をつくっているのです。
 ネットによって、「勝ち馬に乗って、リベラルを自称している左翼を叩くことで、快感を得る」人たちも増えているのです。
 心理的に優位に立つために、現実の自分にとってはデメリットのほうが多い政策を打ち出している側を支持している場合も、少なからずあるんですよね。

 個人的には、「もう政権交代はありえない」ところから、細川首相の連立政権が生まれたきたのをみてきているので、長い目でみれば、いつか変化は起こると思うのですが。


 「ネット社会」というのも、少しずつ様変わりしているのです。

池上:半藤さん、いまパソコンが売れなくなったこと、ご存じですか?


半藤:えっ、売れなくなっているんですか。


池上:はい。みんなパソコンのかわりにスマホタブレット端末を使っているからです。いま新入社員でパソコンの使い方がわからないひとが増えているそうです。「ワード」とか「エクセル」が使えない。二年ほど前に、東大生がスマホで卒論を書いたと話題になったことがありましたが、もうそんな状態なのです。いまの40代のひとは、新入社員のときにパソコンが使えない先輩たちに使い方を教え、自分が40代になってみると、今度は20代の連中にまた、パソコンの使い方を教えているという笑い話があります。だから夏や冬のボーナス時期に、パソコンの新型機種が最近出ない。


半藤:そうでしたね、その昔は新聞の一ページを使ってパソコンの広告が出ていましたが、言われてみれば最近は見かけないねえ。


 僕がまさにこの「40代」にあたるのですが、たしかに、パソコンの新機種が話題になるのは、アップルの新型が出たときくらいで、それも、ごく一部の人だけなんですよね。20年前くらいは、電器店のパソコン売り場には人だかりがしてにぎわっていたのに、いまや、通販が多くなったこともあって、パソコンは売り場に静かに並んでいるだけになりました。個人的には、スマートフォンタブレット端末は便利なのだけれど、何か自分で書いて発信する際には、パソコンのキーボードよりも使いにくいし、何か調べながら書くのにも適しておらず、情報を受け取るだけになりやすいと感じています。もちろん、LINEやTwitterで最低限のやりとりをする分には問題ないのですけど。


 半藤さんは、皇室についてのこんな話をされていました。

半藤:いずれにしても令和の日本には、今後、国防をどう考えるのかという課題が残された。「日米安保条約を破棄しますか」という問いがあります。破棄したほうがいい、と主張するひともいます。しかしこの問題を議論するときに、わたくしはいつも言うことがあるんですよ。それは「この国は守れない国なのである」ということ。このことを日本人はもう少し知っておいたほうがいいと思います。
 もうしゃべってもいいでしょう。じつはわたし、昨年平成30年(2018)8月15日の終戦記念日に、秋篠宮様の坊や、悠仁くんに昭和史の講義をいたしました。2時間半やってくれと頼まれて、宮邸に出かけて行った。親王殿下は小学六年生です。その年齢の子にもわかりやすいように戦争へのいきさつを話してやろうと思って準備をしました。で、こういう話を最初にしたんです。
 日本はものすごく海岸線が長い。国土の面積ではアメリカの約4パーセントしかありませんが、海岸線の総延長では、アメリカの2万キロメートルに対して日本はじつに3万5000キロメートル以上です。しかも列島の真ん中に急峻な山脈がまるで背骨のようにとおっていて平野がおおむね狭い。人びとは奥には逃げられないんです。


 悠仁さまには、こんなふうに「帝王学の講義」が、もう行われているのだなあ、と思いながら読みました。
 しかしこれ、「もうしゃべってもいい」のだろうか。いや、秘密にしておく必要もないのか。

 今の世の中には「平成しか知らない人」って、けっこう多いと思うんですよ。
 こういう形で、先人たちの知見に触れてみるのも悪くないかと。
 「昭和世代の昔話なんて」と考えてしまいがちだけれど、歴史は繰り返す、というのもまた事実なのです。
 

平成史 (小学館文庫)

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