琥珀色の戯言

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ニート ☆☆☆


ニート (角川文庫)

ニート (角川文庫)

 キミはあらゆる権利の外にいて、健康だが働いていないし働く気もない。つまりキミはニートだ。キミは自分が社会から援助を受けることができないのをよく知っているし、他人からの援助を受けるには申し訳ないと思っている。とても失礼なことを言うけれど、キミにはニートの方が向いている。似合わないスーツを着るよりも。

 読んでいてワクワクしたり、なにか素晴らしい知識が身についた、と感じるような小説ではないのですが、なんともいえない心のざわめきみたいなものがわいてくる短編集です。
 表題作『ニート』は、題名が印象的だったので、こういう作品があったことは知っていたのですが、ここで描かれているのは、僕が想定しているような「ニート」とはちょっと違うように感じたんですよね。
 これは「ニート」というよりは、「ヒモ」、あるいは「共依存関係にあるカップルの男のほう」なのではないかと。あるいは、「高等遊民」。
 こんなに女の人に構われているようなヤツは、「ニート」じゃないだろ!と。
 でも、ここで描かれているような、「すっきりしない人間関係」みたいなのは、まさしく「現代的」なものではないかと思います。
 あと、『愛なんかいらねー』のスカトロ描写は、(言葉そのものは、そんなに卑猥でもないにもかかわらず)僕には読むのが辛かった。
 僕の中で絲山さんは、「男女の話は書くけれども、セックス描写に関しては淡白というか、『やりそうでやらない男女』ばかりを描いている作家のような印象があったのですが、この短編集では、そういう先入観を見事に裏切られました。
 個人的には、「やりそうでやらない男女の話」のほうが、僕は好きなんですけどね。

 絲山さんファンはオススメしなくても読むでしょうし、そうでない人は、まず『袋小路の男』か『逃亡くそたわけ』あたりから入ったほうが良さそうです。
 僕は『海の仙人』をオススメしておきます(これはあまり「糸山さんらしい作品」ではないかもしれませんが)。


海の仙人 (新潮文庫)

海の仙人 (新潮文庫)

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