琥珀色の戯言

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【読書感想】アカマイ 知られざるインターネットの巨人 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

内容紹介
動画配信、通販などで拡大し続けるネット経由ビジネス。天文学的に増え続ける情報量を陰で支えている会社アカマイ。情報ビッグ3からNHKの災害放送まで、インターネットを陰で支える同社の真実。


『アカマイ』という会社を、ご存知ですか?
 僕はこの本を読むまで、名前すら知りませんでした。

 アカマイ(Akamai)の本社は米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市にあり、世界23ヵ国、49都市に拠点を設けています。全従業員4300人以上、2013年の年間総売上は15億8000万ドル(約1580億円)。押しも押されぬ世界的な大企業です(2014年7月現在)。
 この会社の特徴は、インターネットを利用するほとんどの人が気づかないままに、そのサービスを利用している点です。
 あなたの見ている大手企業のWebサイトはアカマイが配信しているかもしれませんし、あなたがインターネットを利用して観ているビデオも、アカマイが配信した動画である可能性があります。 
 また、あなたの手元のコンピュータがいつの間にかアカマイからデータを受け取っているかもしれません。


 これだけ毎日ネットに触れていれば、少なからずお世話になっているはずなのに、GoogleYahoo!Appleのような知名度を持たない『アカマイ』。
 こういう「知らない間に、アカマイとやりとりをしている」なんていう話を聞くと、ちょっと薄気味悪くなりますよね、アカマイの「顔が見えない」から、なおさら。

 本書執筆時点である2014年において、アカマイは「世界の15〜30%のWebトラフィックを配信している」と公表しています。「最大30%だったらたいしたことがない」と感じる読者もいるかもしれませんが、インターネットは世界全体を覆うネットワークであり、そこに接続された組織数も膨大であることを考えると、3分の1に相当する数値は驚異的です。


 いま、世界のネット上を行き来している情報量を考えると、15〜30%というのは、膨大なものですよね。
 この本を読むと、「インターネットを支えているシステムとは、どういうものなのか?」が、僕のような技術オンチにも、ちょっとわかったような気がしてくるのです。
 この本は、『アカマイ』という企業が、いかにして、ネットワークの品質を上げようとしているのか、というのが、その仕組みも含めて、なるべくわかりやすく説明されています。
 『アカマイ』のような企業が、インターネットのインフラを支えているからこそ、ネットは「繋がるのが当たり前」だと思い込めているのです。
 そして、インターネットは「魔法の箱」ではなくて、海底ケーブルなどで世界中が物理的に「繋がれていて」、情報を処理するためには、多くのサーバーを、効率的に運用することが必要なのです。
無線LAN」が当たり前の世の中になったけれど、インターネットの主要な回線、遠距離の回線を高速化するためには、有線のケーブルが使われています。


 この本のなかで、著者は、「光ケーブルは、なぜ海の浅いところよりも深いところに敷かれるのか?」という問いを、読者に投げかけています。
 浅いところのほうが、敷くのは簡単だと思いませんか?と
 その答えは、「浅いところだと、漁業の影響を受けて、網などでケーブルが切れてしまうことがあるから」だったのです。
 高度に発達したネットは、無から有を生み出しているようにみえるけれど、実際は、アナログな部分によって、支えられているのです。

 誤解を恐れずおおまかにいうと、同社(アカマイ)は「顧客のデータをインターネット上で迅速に配信することに特化した多国籍企業」です。設立当初から、インターネットでの大規模な配信を効率よく行えることが売りだったのです。現在でこそ、インターネットでの大規模なデータ配信以外にも様々な事業を展開しており、事業の主軸も単なる配信より通信の高速化やセキュリティの確保などにシフトしつつありますが、これらすべての事業も、大規模データ配信事業のために構築された仕組みから派生したものといえます。
 いま、アカマイは92ヵ国に15万台のサーバーを配置しています(2014年7月現在)。世界中にサーバーを分散配置し、各ユーザーが最寄りのサーバーからデータを受け取れるように誘導することで、サーバーにかかる負荷を分散すると同時に各ユーザーが迅速にデータを受け取れるようにするのが、アカマイの本来の業務内容だったのです。


 この本では、そんな『アカマイ』の設立の経緯から、企業としての発展までが語られていきます。
 それと同時に、『アカマイ』の業務内容を理解するために必要な、「インターネットは、どんなふうに繋がっていくのか」という基礎知識が解説されていくのです。
 もしかしたら、著者が書きたかったのは、『アカマイ』そのものではなくて、『アカマイ』のような企業が必要とされるのはなぜか、という「ネットワークの基礎知識」だったのではないか、と僕は思ったんですよね。
 「通信の高速化」というのが、いまの膨大な情報を処理しなくてはならないインターネットにとって、いかに重要なのか、そして、それを支えているのは、機器の進化だけではなくて、「効率化するためのアルゴリズム」であるということ。
 インターネットは一般的なものになったけれど、「それがなぜ世界中と繋がるのか?」を理解している人の割合は、どんどん低下してきています。
 いやまあ、「ネットワーク関連の仕事」をしていない人にとっては、仕事の役に立つ話ではないのかもしれませんが、これだけ日常的に触れているものですから、その基本的なシステムくらいは聞きかじっておいて、損はないと思うんですよ。